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迫る食料危機! 消費者をお米づくりの担い手として育てる新たな取り組みへの挑戦【畑は小さな大自然vol.116】

迫る食料危機! 消費者をお米づくりの担い手として育てる新たな取り組みへの挑戦【畑は小さな大自然vol.116】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。ここ数年、異常気象による野菜の高騰や、令和の米騒動、自然災害の頻発によって、食料危機への不安が高まっているように感じます。食料備蓄などをしている人も多いとは思いますが、それは一時的な対策であり根本的な不安の解消にはなりません。一方で食料を生産する側の農業の現場では高齢化による担い手不足が深刻になっており、食料自給率も一向に高まる気配はありません。そこで米農家の2代目的なポジションである僕自身もついに今年からお米づくりを始め、さらに半農半X的な多様な担い手を増やす試みも開始しましたので、ご紹介したいと思います。

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食料不安の根本的な要因とは何か


今、社会が食料危機の不安を抱いている要因は主に二つあるのではないかと思っています。一つは気候変動の問題。温暖化や異常気象と呼ばれるような今までになく不安定な気候に加え、水害や地震などの自然災害も頻発するようになっています。
もう一つはグローバリズム(地球を一つの共同体とし、世界の経済などを一体化する考え)の流れであり、私たちの食卓は世界の食料市場に大きく左右されるようになりました。単純に食料価格が不安定ということだけでなく、自分たちの手の及ばないところで、命に関わる食べ物の流れが全て決まってしまっている、この仕組み自体への不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
この世界的な規模で起こっている二つの大きな流れが今の食料不安の背景にあるのではと僕は考えています。決して一時的なものではなく、今後加速していくことも十分に考えられます。

自分たちの食べ物は自分たちで作りたい!

30年前は多く見られたハザかけの景色が今はかなり希少なものになっている

こういった背景の中で自分たちの暮らしを守っていくためには、やはり小さい規模での食料自給システムを取り戻していくことが大事だと思います。自分たちの食べ物は自分たちの住む土地で育て、それをいただくという当たり前だったはずのことをもう一度再構築していく。気候変動や世界情勢の変化にも柔軟に対応できるような、しなやかで強い地域農業・食料供給システムが必要です。
そして単に食料生産ということだけでなく、自然の中で農的な営みを地域の人たちと助け合いながら行っていくことが、心身ともに健やかに豊かに人間らしく生きていくことにもつながります。これらは今までも思っていたことではありますし、そのために少しずつ活動してきましたが、昨年の米騒動によって、より具体的にスピード感を持って進めていきたいと思うようになりました。

お米の自給が最優先!

中古で田植え機を購入。1人でお米づくりをするのは初挑戦

地域内での自給を考えていく上で、やはり最優先はお米だなと思います。水稲農家は大変厳しい、儲からないとよく言われますが、あくまでもお金に変換するのが難しいのであり、日本において自給食料として栽培するのに最も効率が良い作物であることには変わりありません。日本の気候風土に適していて、連作障害がなく、無肥料・無農薬でも作りやすくて、貯蔵性が高いなど、日本の長い歴史の中でお米が主食として続いてきたのには、やはり理由がありますし、先人達が築いてきた水田インフラを生かさない手はありません。

実は僕の父は40年ほど無農薬でお米を作っているので、非常にありがたいことに我が家のお米の自給は何の問題もありません。しかし父が地域の小規模農家のために苗づくりや田植え・稲刈り・脱穀・乾燥などの受託作業を行っているので、父が引退してしまうと地域のお米づくりは崩壊してしまいます。地元のJAもどんどん撤退している状況で、苗づくりだけでも約50軒分の苗を父が作っています。父のような地域の中心的担い手が引退して、お米づくりを続けられなくなっているという集落の話をこの2〜3年でよく聞くようになりました。そこで今年から僕も畑だけではなく、お米づくりを改めて父から学び始めました。

アマチュア農家を育てる

田車を使用して草取りをしている様子。右側が僕の父

しなやかで強い地域農業を作っていくために、今のような少数の人に地域農業が依存してしまう仕組みは持続可能だとは言えません。少なくともうちの地域のような大規模化が難しい中山間地域では特にそうだと思います。

そこで僕だけでなく、兼業農家や半農半X的なアマチュア農家を含めた多様な担い手を育てていくという試みを今年から開始しました。スポーツでも発展していくためにはその裾野のスポーツ人口をいかに増やすかが大事だと思うのですが、農業においてもいきなりプロを目指すのはハードルが高いので、いかにアマチュア農家を増やすかが大事なのではないかと思ったのです。この分野では僕が今まで畑づくりを一般の人たちに教え続けてきた経験が生かせるので、自分の役割はここだと思ったのです。

その名も「米づくり道場」。“1人分の年間消費量とされる約60キロのお米を自分で栽培する技術を身につける”というコンセプトの講座です。父が講師となり、5〜11月の全8回の講座を通して、小型の田植え機やバインダーを用いてそれぞれの区画のお米を育ててもらうという内容です。
今年はとりあえず試験的に6組だけで開始しましたが、申し込みの数は倍以上もあり、関心の高さがうかがえました。現在3回目の講習まで終了し、苗づくりや田植え、草取りや水管理などを実践していますが、みなさん四苦八苦しながらも意欲的に学んでくれていて、やってよかったなと思っています。うちの父はすでに毎年10団体ほどのお米づくり体験の受け入れを行っていますので、それらと合わせてさまざまな形で農を体験し、学ぶ機会を提供し、そこから少しずつ実際の担い手が育っていく仕組みを築いていきたいなと思っています。

お米づくりは大変! でもだからこそ

親子でのお米づくり体験の様子

僕自身、お米づくりはずっと避けてきました。自分で作る必要がないからというのも大きいですが、機械を買うか、人手を集めないといけないので面倒だなという理由が正直なところです。

しかし、今年からお米づくりに関わってみて感じたのは、むしろ人手が必要だからこそ、お米づくりを中心に地域社会が成り立ってきたのだということです。
昔は農村の助け合いの仕組み「結(ゆい)」の作業として、田植えはみんなで加勢して行うのが当たり前だったと聞きます。それによって協働・共生の精神が養われ、お祭りや神事が行われ、日本の文化はお米づくりを中心に育まれてきたと言っても過言ではないと思います。

ただの産業としてしか見ていない現代では、農はとても軽視されてきましたが、本来は精神的な豊かさ、社会的な豊かさ、生物的な豊かさ、文化的な豊かさなど多様な豊かさを地域にもたらしていたのは田んぼを中心とした農的な営みだったはずです。
地方にはその豊かさがまだギリギリ残っている、取り戻せると思っているので、チャレンジしていきたいなと思っています。そして食料危機への不安を抱きつつも、何をしてよいかわからない都市部の人たちの受け皿を少しずつ作れたらよいなと思います。

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