コメの副産物を役立てる
世間がコメ問題で騒いでいる。スーパーでは販売数が制限されたりして、パニック買いも起きているというが、ダサいなぁ。こういうときに泰然としていられるのは自給の強さだ。コロナ禍のときもそうだったし、野菜が高騰しても気にならない。電気とガソリンだけは手に入らないと困るところもあるが、それだってちょっとあればいい。争ってまで欲しいとは思わない。なるべく他人に依存せず、自分でできることが増えれば、それが暮らしに安心感を与えてくれる。自給自足とはそういうことだ。
5年前にコメ作りを始めたときは、今日のコメ問題なんて想像していなかった。知識も技術もなく、興味だけで始めたコメ作りだが、やってみればそれなりにできるものだ。ただ、最初に借りた3反5畝(35アール)の田んぼには難儀した。ささやかなこだわりで化学肥料や除草剤を一切使わずにやったものだから、広すぎて草を管理できなかった。周りの農家にも迷惑をかけてしまった。それで、今年から約半分の1反8畝の田んぼを借りることにした。除草がぐっと楽になった。アイガモにも助けてもらった。7月中旬、収穫まであと1カ月半ほどあるが、すでにちらほらと穂が出始めている。

山から流れる小川に沿って、何キロにもわたり田んぼが広がっている。8月下旬には稲刈りが始まる
田んぼでコメ作りをすると、目的の白米以外にもわらやもみ殻や米ぬかなどの副産物が手に入る。これらはいずれも私の家庭菜園にはなくてはならない資材だ。自然が作るもので無駄なものは何ひとつない。使い道は山ほどある。
ただ、それをひとつひとつ説明するにはちょっと紙数が足りない。もみ殻については「もみ殻徹底活用術」に書いた。わらはマルチや敷料や防寒、堆肥の材料として使うほか、私は踏み込み温床の枠にも利用している。で、ここでは米ぬかについて語ることにした。
玄米の栄養素の8割を含む
米ぬかは、玄米を白米に精米する過程で取り除かれる外皮や胚芽の部分だ。きなこのような薄い黄土色の粉で、質量は玄米全体の1割程度だが、玄米の栄養素の約8割は米ぬかに存在する。つまり、精米した白米には2割程度しか残らない。その削り取られる8割の栄養素を捨ててしまうのはもったいない。

玄米を白米にする過程で、重量の約1割が米ぬかになる
では、どんな成分があるかというと、植物に必要な栄養素で見ると、窒素(N)2~3%、リン酸(P)4~6%、カリ(K)1~1.5%程度を含み、カルシウムやマグネシウムも有している。また、タンパク質が約13%、脂質が約20%、糖類が約28%、食物繊維が約20%含まれており、そのうちタンパク質や糖類は特に微生物のエサとして好まれる。その点で米ぬかは作物の肥料としても豊富な成分を備えているが、微生物のエサとして堆肥やボカシ肥の発酵を促すのに非常に有用な資材だ。
米ぬかの活用法
そのまま畑に施用する
わが家の畑の土は、落ち葉や野菜の残渣(ざんさ)を積み上げた堆肥と、ヤギやニワトリのふんがわらやもみ殻と混じって発酵した敷料と、まきストーブの灰、それから米ぬかで作られている。ただ、これらを施用することで土壌のN・P・Kがどのようなバランスになっているかはわからない。別に知りたいとも思わない。なぜなら、その堆肥や肥料はすべて土の養分からできたものだからだ。それをまた土に還しているにすぎない。あとは土壌の微生物がうまくやってくれるさ。その働きを促すのが米ぬかだ。

米ぬかを畑に施用。作物の肥料分になるほか、土壌の微生物を増やす働きもある
畑に施用した米ぬかは、それ自体も分解されて作物の養分になるが、むしろ、米ぬかに含まれる糖類やタンパク質が土壌微生物のエサとなり、微生物を増やす効果のほうが大きい。微生物が増えれば、土に含まれる有機物の分解が進み、それが作物の肥料となる。また、微生物の働きは、野菜の生育に適した団粒構造(※)の土を作ることにもつながる。
なお、米ぬかの直接施用は作付けの1カ月以上前に行うこと。なぜなら、土中で分解させる時間が必要だからだ。分解の際には有機酸やアンモニア、メタンガスなどが発生し、作物に悪影響を及ぼす恐れがある。
施肥量は一般に1平方メートルあたり100~200グラムが適量とされている。成分としては窒素2~6グラム、リン酸4~12グラム、カリ1~3グラム程度になり、多くの野菜の元肥としてもちょうどいい。
※ 土の粒子が集まって小さな塊(団粒)となり、その塊がさらに集まった状態。通気性、排水性、保水性、保肥性に優れる。
堆肥のC/N比バランス調整
微生物のエサとして優秀な米ぬかは、堆肥の発酵を促すにも欠かせない。例えば、落ち葉堆肥の場合、堆肥箱に落ち葉を入れてよく踏み込み、10センチ程度の厚さになったら表面が薄く隠れるくらいの量の米ぬかを振りかける。
さらに、落ち葉の重量50%を目安に水をやる。といっても、落ち葉の重さを量るのは難しいので、まぁ、全体が湿るくらいだ。
発酵をスムーズに進めるにはC/N比(炭素と窒素の重量比)20~30が理想とされるが、落ち葉のC/N比は30~50程度で、やや炭素が多い。そこで、C/N比が15~20の米ぬかを適量加えることで、C/N比のバランスを調整し、かつ微生物のエサとして増殖を促すのだ。

分解をスムーズに進めるため、米ぬかを加えながら堆肥の材料を積み上げていく
米ぬかを振ったら、また同じように落ち葉を入れて踏み込み10センチほどの厚さにし、米ぬかを振って水をやる。それを5層くらい積み上げ、2週間~1カ月に1回ほど積み上げた落ち葉を底からひっくり返すように混ぜてやると、微生物に酸素が供給され、ますます分解が進む。
これは生ゴミや野菜の残渣、雑草などを、その都度積み上げて堆肥を作る場合も同じだ。切り返しのタイミングで米ぬかを振りかけてやると微生物がよく働いてくれる。
オンサイト・コンポスト
米ぬかを使えば、作物を栽培しながら、刈った雑草をその場で堆肥化させることもできる。オンサイト・コンポスト(現地堆肥化)といい、手間がかからず速やかに作物に養分を供給できる優れた方法だ。
雑草を刈ったら、それで作物の株元や畝をマルチングし、その上から米ぬかを薄くふりかけてやればいい。すると、その米ぬかをエサにして土壌の微生物が増殖し、素早く雑草を分解してくれる。分解された雑草は、含まれる成分が作物の養分となり、米ぬか自体も肥料になる。この方法は雑草だけでなく、緑肥にも効果的だ。
ポイントは米ぬかや雑草を土にすき込まないことだ。地表で分解を進めることで、作物の根に熱やガスによる悪影響を与えずに済む。

雑草マルチに米ぬかをふりかけて分解を進め、堆肥や肥料として役立てる
ボカシ肥
有機物を肥料としてそのまま畑にすき込むと、土の中で分解されるため、それに伴って発生する熱やガスによって作物に悪影響が出ることがある。当然、分解されるまでは肥料としての効き目はない。そのため、鶏ふんや油かす、米ぬかなどの有機質肥料を施す場合は、作付けの1カ月~20日程度前に土にすき込み、分解を進めておく必要がある。
ボカシ肥とは、その分解と発酵を畑にすき込む前に済ませた肥料のこと。要は、有機物を発酵させて作った肥料だ。発酵済みなので施用後すぐに作付けができ、追肥としても使いやすい。施用後の急速な分解や肥料の効き目を“ぼかす”(ゆるやかにする)ことから、ボカシ肥と呼ばれている。

完成したボカシ肥。発酵済みなので速効性があり、追肥にも向いている
ボカシ肥の材料には鶏ふんや油かす、魚かす、骨粉、もみ殻など、有機質肥料ならほぼ何でも使えるが、ここでも発酵をスムーズに進めるために重要なのが米ぬかだ。
一般にボカシ肥は、肥料効果を高めるため複数の材料を混ぜ合わせて作る。その際、堆肥作りと同じく、全体のC/N比を20~30に調整することが発酵をうまく進めるポイントだ。
作り方

わが家にある材料でボカシ肥を作るとしたら、次のような配合がいいだろう。米ぬか7キロ(12リットル)、鶏ふん1.5キロ(3リットル)、もみ殻5キロ(35リットル)。できあがりは約50リットルになり、家庭菜園で使いやすい量だ。材料を混ぜる容器にはコンクリートなどを練るときのトロブネが丈夫で容量があり使いやすい。

材料を容器に入れたら、全体をよく混ぜ合わせる。

全重量の50%程度の水を加える。ただし、水は粘り気を確認しながら少しずつ入れること。多すぎると腐敗しやすくなり、少ないと発酵しない。水を加えたらさらに全体をよく混ぜる。

手でギュッと握った団子がホロっと簡単に崩れるくらいがちょうどいい水加減だ。
全体がよく混ざったら日陰に置いて発酵を進める。1~2日で発酵が始まり、その熱で50~60℃になる。さらに、香ばしい匂いもしてくる。
1週間ほどたったら切り返し、2~3週間で発酵熱が落ち着き、全体が白っぽくなったら完成だ。
このボカシ肥は、窒素とリン酸が豊富な米ぬかと鶏ふんに、炭素が多いもみ殻を加えることでC/N比が発酵にちょうどよい20~30になる。また、肥料としてだけでなく、もみ殻の土壌改良効果も期待できる。
それぞれの有機物の成分から、完成したボカシ肥の成分をざっくり計算すると、N・P・K=1・1.5・0.6(%)程度と推察される。ややリン酸が多めの、ゆるやかに効く肥料だ。
太陽熱土壌処理
いつから夏がこんなに暑くなってしまったのだろう。もはや人が活動できる気温ではない。10年ほど前は秋まで収穫できていた畑のトマトが、今では7月で終わってしまう。暑すぎて実が付かないのだ。夏の暑さは、私の一番の憂いだ。でも、こればかりはどうしようもない。人の力で自然に逆らうことはできない。でも利用することはできる。それが太陽熱土壌処理だ。夏の高温と米ぬかによる発酵熱で土壌中の病原菌や雑草の種を蒸し焼きにして死滅させるワザだ。
太陽熱土壌処理は雨のあとの土が湿っている状態で行うのがよい。なぜなら、発酵には適度な水分が必要だからだ。土が乾いていれば、最初にたっぷり水をやる。それから1平方メートルあたり500グラム程度の米ぬかを混ぜ込み、耕して畝を立て、透明マルチやビニールで覆う。すると、米ぬかをエサにして発酵菌が増え、太陽の熱と併せて地温を50~60℃にまで上昇させる。

先に畝を立て、全体に米ぬかをすき込む。太陽熱土壌処理をしたあとに耕したり、畝を立てたりすると、土の中の雑草の種が地表に出てきてしまう。

米ぬかをすき込んだら、畝の表面を平らにならし、土が乾いているときはたっぷりと水をやる。

畝全体を透明マルチやビニールで覆う。この状態で2週間以上おいておく。
50℃以上になると病原菌やセンチュウの多くは生息が難しくなり、雑草の種も死滅する。一方で発酵菌など、作物に無害な菌はそれ以上の温度でも耐えられるものが多い。できれば1カ月、最低でも2週間以上、高温を保つことで効果は確実なものになる。
透明マルチやビニールをはがしたら、そのまま耕さずに作付けを行うこと。耕してしまうと、高温になりきれなかった深い土の中にいる病原菌や雑草の種が地表に出てきてしまうからだ。太陽熱土壌処理をした後に秋の作付けをすれば、除草はほぼ不要。センチュウや病害も抑えられる。
ぬか漬けやニワトリのエサにも
乳酸菌や酵母の発酵を利用したぬか漬けにも米ぬかは欠かせない。タケノコや山菜のあく抜きにも使う。それからニワトリのエサにも10~30%混ぜてやるといい。脂肪や炭水化物はエネルギー源になり、体を作るタンパク質も含んでいる。わが家では田んぼの肥料も米ぬかだ。米ぬかは質量換算で玄米の約10%発生するが、これだけいろいろ使うと、じつはわが家で消費するコメからとれる米ぬかだけでは足りない。

クズ米や米ぬかを混ぜたニワトリのエサ
では、どうしているかといえば、コイン精米所でいただいている。場所にもよるが、大抵自由に持って帰れる。まとまった量がタダで手に入るのはありがたい。
野菜作りは土がすべてだ。そして土を作るのは微生物だ。彼らにせっせと働いてもらうために米ぬかをひと振り。あとは、彼らが仕事を終えるのを待って野菜の種をまこう。























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