損害賠償の支払いがなされず、連絡もつながらない
前回、正確には誤りだった「無農薬」の表記に関して相談させていただいた者です。
その後、直売者の信用を棄損したとして、出荷者Aを相手取って訴訟を提起し、裁判にて当方の請求が認められ、相手方に損害賠償の支払いを命ずる判決が下され、判決の内容が確定しました。
しかしながら、相手方からの支払いはなく、連絡もつながりません。
このような場合、相手方に対してどのように支払いを求めるべきでしょうか。具体的な手順等を教えていただけますと幸いです。
弁護士の見解
裁判所に強制執行の申立てを行い、Aの財産を強制的に売買してその代金から支払いを受けたり、Aの口座を差し押さえて、当該口座に預けられている金銭から支払いを受けたりすることが考えられます。
裁判所による強制的な権利の実現
勝訴判決を得ることができたり、相手方との間で裁判上の和解を成立させることができたとしても、必ずしもそれだけで紛争が解決するわけではありません。現実には、ご質問者様のように、相手方が判決又は和解で決定した内容を履行しないということが往々にしてありえます。このような場合、相手方に対する請求権を裁判所が強制的に実現する手続として、強制執行手続が民事執行法によって認められています。
従って、ご質問者の場合でも、裁判所に強制執行手続の申立てを行い、強制的にAの財産から損害賠償の支払いを受けることが考えられます。
強制執行の種類
強制執行には、本事例の場合のように金銭の支払いを求める場合のほかにも、例えば、賃貸借契約の終了に基づいて建物の明渡しを求める場合、建物や物の引渡しを請求する場合など、さまざまな種類が存在します。さらに、金銭の支払いを求める場合についても、どのような財産を強制執行の目的の財産とするかによって、大きく分けて、以下のような種類が存在しており、具体的にどのような形で金銭の支払いを受けるかについても異なっています。
①目的の財産が不動産・自動車の場合
相手の土地、建物などの不動産や自動車を差し押さえて売却し、その代金から支払いを受けることとなる。
②目的の財産が給料・預貯金の債権の場合
相手の給料、賃金、預金などの債権を差し押さえて、それを雇主、賃借人、銀行その他の債務者から直接取り立てることによって支払いを受けることとなる。
③目的の財産が家財道具などの動産である場合
相手の家財道具、商品類、貴金属などの動産を差し押さえて売却し、その代金から支払いを受けることとなる。

上記①~③の具体的な手続については、どの裁判所に申立てを行うのかという点をはじめとして、それぞれ異なっており、申し立てにはある程度専門的な知識が必要となるといえます。従って、実際に強制執行手続を申し立てる場合には、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
強制執行の注意点
強制執行手続を申し立てる前提として、そもそも相手方にどのような財産があるのかについては、請求する側(本事例でいうとご質問者様)の方で調査して把握しておく必要があります。土地建物であれば登記を確認すれば所有者が誰かがすぐに判明しますが、勤務先やどの金融機関に口座があるかなどの情報については、簡単には調査することができません。また、仮に土地などの財産を見つけることができたとしても、当該財産の価値が低い場合(いわゆるオーバーローンであり余分な価値がない場合も含みます)には、申し立てたとしても一銭も回収することができず、費用倒れになるという事もあります。
相手方の財産を調査する方法としては、法務局にて登記を確認するなどのほかには、弁護士が弁護士会を通じて銀行などに口座の有無を確認するという弁護士照会という制度、一定の要件がある場合において、裁判所に申し立てることによって認められる制度である財産開示手続という制度が存在しています。このうち、財産開示手続制度は、権利実現の実効性を確保する見地から、相手方の財産に関する情報を取得するための手続であり、相手方が財産開示期日に裁判所に出頭し、自己の財産状況を陳述する手続となります。もっとも、どちらの方法についても、一定の限界があり、相手方の財産の全てを必ず把握するための制度は現行の日本の制度には存在しないというのが実情です。どの制度を用いてどの程度の調査を行うべきか、調査のうえで実際に強制執行の申立てを行うか否かなどについても、専門的な判断が必要であるといえ、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
事案のポイントを整理
✅相手方が判決又は和解で決定した内容を履行しない場合、強制執行の申立てを行うことが考えられる。
✅強制執行の具体的手続きは、目的とする財産によって異なっており、ある程度専門的な知識が必要となる。
✅相手方がどのような財産を有しているかは強制執行を申し立てる側が調査する必要があり、弁護士会照会や財産開示手続きなどの調査方法が存在するが、調査には限界がある。

















