フルーツの収穫を終え、暑さも収まってくると、果樹の剪定について考え始める人も多くなってきます。プロの園芸家でも頭を悩ませるのが「どの枝を残して、どの枝を切るか」という問題です。
まず、あなたの果樹はどのタイプ?
一口に果樹といっても、種類はいろいろあり、切るタイミングも、切る枝もちょっとずつ違います。今回の記事では全てに当てはまることですが、剪定の実践のときは、何でも同じようには切れません。以下のYes/Noチェックであなたの果樹がどの分類に入るのか確認しましょう。
一般に果樹と言えば基本的には温帯果樹なので、沖縄の熱帯果樹は含まれません。

まずは常緑樹なのか落葉樹なのか。一年中葉っぱがついている木は常緑樹、冬になると葉っぱが落ちるのは落葉樹です。
常緑樹
ミカン・ビワなど。日本の温帯地域で栽培されている常緑樹はあまり多くありません。温暖化でできる果樹も増えてきてはいるのですが。
落葉樹
つる性の木なのか、幹が立っている木なのかでさらに分岐します。
- つる性→ブドウ・キウイ・イチジクなど。ブドウやキウイはわかりやすいつる性の植物ですが、イチジクは立ち木なのに、植物生理としてはブドウと似ているので、栽培のときはつる性グループに属します。
- 立ち木→モモタイプ?リンゴタイプ?カキタイプ? 今回はモモタイプとリンゴタイプは同じものと思っていて大丈夫です。本格的な剪定に入るとちょっと変わるのですが、枝の種類は一緒です。
- モモタイプ→ウメ・モモ・スモモ・アンズ・オウトウ(さくらんぼ)など
- リンゴタイプ→リンゴ・ナシ・カリンなど
- カキタイプ→カキ・クリなど
なぜ剪定しなければならないのか
本当はまずは骨格!と言いたいところなのですが、家庭果樹の場合は、邪魔になってないのであれば骨格は無視してもよいでしょう。重要なのは、葉っぱにしっかり太陽光が当たることです。太陽光が当たらないと、植物は枯れていきます。下の方は枯れていき、どんどん上の方ばかりに花や果実が実ります。
自然界では植物は、より高いところで葉を茂らせて、高いところに果実をつけた方が他の植物よりも有利に太陽光を浴びられますし、鳥に食べてもらって種を運んでもらいやすくなります。
あなたがカラスの餌用に栽培しているなら別ですが、人間のためには低いところまで日が当たってほしい。少なくとも、葉が茂っているけど、木の幹の根元部分でもチラチラと木漏れ日が差す程度までは透かしたいのです。チラチラ木漏れ日があれば、枯れることはありません。
そのために有利な、人類が編み出してきた技がたくさんあるのですが、この剪定シリーズのどこかでお披露目するとして、今回は「とりあえず透かしたいけど、どの枝が大事でどの枝がいらないのか」を把握するための枝の種類について解説します。
剪定前に知っておきたい「枝」の種類
枝にはそれぞれ個性があり、「こいつは残すべき」「これは切るべき」の判断材料になります。厳密に言うとたくさんあるのですが、今回は以下の2種類を把握しておきましょう。
徒長枝(とちょうし)、結果枝(けっかし)。この2つです。植物の枝は主に、枝葉を茂らせるために勢いよく伸びる枝「徒長枝」と、花や果実をたくさんつける枝「結果枝/結果母枝」に分けられます。
徒長枝
他の枝より勢いよく真っすぐ長く伸びた新枝のことです。不調和に急成長するこの枝は、大抵は主に垂直方向にスッと伸び、節間が長く葉や芽が少なめです。他の枝から養分を奪いがちで、放っておくと樹形を乱してしまいます。(下画像の赤線)

徒長枝は垂直に真っすぐ伸びる

まだまだ木が小さいうちは、このような強い枝を育てて幹にしていきます。なにせ伸びる力が強いので、これから骨格を作っていくんだぞ!という人は、欲しい方向に伸びている徒長枝を活用します。
しかし、徒長枝は基本的に果実がつきにくいし、なってもおいしくなりにくいです。また、放置していると木がどんどん大きく高くなってしまうので、ある程度育ったら剪定が必要です。とりあえず簡易的に剪定をする年は、この徒長枝だけ切って終わらせることもあります。
例外として、つる性の木は徒長枝のような強い枝に結実させます。逆に弱い枝にはあまり良い果実が実りません。立ち木の果樹のように上に立ち上がらないのでわかりにくいですが、何メートルも不調和に成長するのが徒長枝と呼ばれます。(下の画像)

つる性のブドウの徒長枝は何メートルも不調和に成長する

つる性のイチジク(秋果品種)は徒長枝のように立ち上がった強い枝に結実させる
ただし、つる性の木の中でもキウイの場合は、毛が生えるほど徒長したものは果実を期待できないので注意しましょう。(下の画像)

毛が生えるほど徒長したキウイの枝は果実を期待できない
結果枝
結果枝とは、読んで字のごとく、果実をたくさんつける枝です。しかもこの枝につく実はおいしい! 当然ですが、徒長枝を根元から全部切って、結果枝ばかりにすれば、次の年の豊作は確定します。ただし、あまりにも果実をならせすぎた場合は摘果をしないと木が疲れすぎて、その次の年は全然ならない隔年結果という状況に陥ります。

ウメの結果枝。モモタイプやリンゴタイプは弱くて短い枝が重要
結果母枝
果実をつける枝(結果枝)を生み出す母体となる枝のことです。花芽を持っているが、自身は花を咲かせず、自身から次に伸びる枝に花を咲かせ実をつけさせる枝です。実はミカンタイプ、ブドウタイプ、カキタイプの果樹は、冬の時点では結果枝というのは存在していません。自分の果樹が結果母枝型の果樹なら、ちょっと注意しておきましょう(どう注意するかは後述します)。
ウメやモモなどの3月や4月に花が咲く品目は結果母枝はありません。冬の時点で存在している枝に直接花が咲きます。なので開花も早いです。
一方、イチジクやミカン、クリなどは剪定時、結果枝の親、つまり結果母枝があって、そこから春に新しい結果枝が発生し、その新しい枝に果実がなります。この結果母枝から春に伸びた新梢(しんしょう)が花をつけるので開花時期は5月頃になりがちです。
なお、ミカンは今年花が咲いて実がなった枝(下画像の青線)には来年花が咲きません。逆に今年花が咲いてない枝(赤線)は来年実がなる結果母枝です。結果母枝を見分けるために覚えておくとよいでしょう。

今年実がなっていない枝(赤線)が結果母枝で来年実がなる
その他の枝
ひこばえ(蘖)
株元や根元から生えてくる細い枝のことです。樹木がストレスを受けたときに生えるほか、接ぎ木の場合は台木からも旺盛に生えてくることがあります。通常は養分を消費するだけで実をつけないため、放置すると他の枝の生育を妨げます。基本的には見つけ次第、付け根から切除します。ただしブルーベリーなどのブッシュ状の果樹では、ひこばえをサッカーとかっこよく呼び、育成して果実を実らせます。
不定芽と胴吹き枝
「不定芽」とは、幹や根など通常は芽が出ない場所から突然現れる芽のことです。一方「胴吹き枝」は不定芽が幹から芽吹いて伸びた枝を指します。いわば植物の隠し持つスペアのようなもので、大きな剪定で枝を失ったときや日光が幹に直接当たるような環境変化で急に枝を生やしてくるのが胴吹き枝です。普段は樹皮の下で眠っている休眠芽ですが、強い剪定などの特定条件によって一斉に目覚めます。必要ない場所に生えた胴吹き枝は早めに取り除きますが、極力近くにある古い枝を切り落として新しい胴吹き枝に切り替えることで木が若返ります。

不定芽と胴吹き枝
残すべき枝・切るべき枝の選定基準
剪定の基本方針は「将来の樹形と収量を考え、必要な枝を残し不要な枝を除く」ことです。具体的には以下のような基準で判断します。
徒長枝・立枝(たちえだ)は間引き剪定: 真上に徒長した枝(立枝)や、木の内側に向かって伸びて日陰を作る枝、勢いの弱い下向き枝は、付け根から間引いて取り除きます。これらは放っておくと他の枝の成長を妨げたり樹形を乱したりするためです。特に徒長枝は養分を横取りしがちなので、基本はバッサリ根元から剪定ばさみで容赦なくチョッキン!が鉄則です(ただし前述のように、将来必要な位置なら途中で切り返して利用する場合もあります)。
ひこばえも早めに除去:根元から出るひこばえは基本的には見つけ次第根元から切除します。特に果樹では、台木から出るひこばえは接ぎ木した品種と異なる枝である可能性が高く、放置すると木の活力を奪うだけでなく不要な枝葉で混み合ってしまいます。
胴吹き枝は大事に:胴吹き枝は、せっかく幹から新しい枝が誕生したのですから、積極的に周りにある古い枝を落として、新人の彼を育てましょう。
結果母枝・結果枝は一番大事:果実を実らせる結果枝や、それを生み出す結果母枝は果樹の収穫に直結する枝です。むやみに切り落とさず、花芽のつき具合や枝の混み具合を観察して適切に管理します。また、カキやミカンなど「結果母枝型」で結果する果樹では、冬剪定で枝先を切り落としてしまうと春に伸びるはずの結果枝が発生しなくなるため、実をつけさせたい枝の先端は切らないよう注意します。というより、どの枝も、基本は途中で切らず、根元から切り取る間引き剪定を中心にやるべきでしょう。
交差枝・平行枝は整理:他の枝に絡みついた絡み枝や、交差した枝、平行に並んで競合する枝は、樹形を乱し将来的に擦れ合って傷む原因になります。このような場合はどちらか一方の枝を元から切るか、将来性を見極めて不要な方を段階的に除去します。ただし、あまり交差を気にしすぎるとすっからかんになりがちですので、「木漏れ日が差す程度」を目安にしましょう。
以上のポイントが、はじめての剪定できっと役にたつ枝の見極め方です。あとは木漏れ日が差す程度に透かすこと! でも果実がなる枝ばかり切ると、当然ですが果実がなりませんのでご注意を!























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