自然界の土が成長する仕組みを生かす

植物の一生のサイクルと共に土が育っていく。筆者作成
自然界には「土が成長するサイクル」というものが存在します。
簡単に説明すると、その土地に生える雑草などの植物が雨水や日光、土壌中のミネラルなどの資源を集めて成長し、そうするとそこに虫や微生物などの生き物が集まり、やがてそれらの排せつ物や死骸が土に返り、ミミズなどの土壌生物によって、豊かな土が作られます。
そしてまたその土地に植物が生えるという循環の中で、少しずつその土地の土壌が育まれていきます。土が成長すればするほど、その土地でさまざまな種類の植物がより大きく、健やかに育つことができるようになります。

植物を返していくことで肥沃(ひよく)になった土
自然循環の働きを利用する農法においては、この「土が成長するサイクル」をうまく生かすことが重要になります。そのため植物選びの時も、私たちの都合から選ぶというよりは、その土地に合った植物選びを優先しながら、少しずつ自分たちが望む植物も植えられるように土を育てていくという発想が大事になるのです。
この考え方を不自由に感じる人もいるかもしれませんが、このサイクルがうまく回りだすと、毎年手間をあまりかけなくても勝手に育っていく植物が年々増えていくので、とても楽だし面白いです。
土の成長に合わせた植物選びのステップ
具体的にどのように植える植物を選び、種類を増やしていくかを説明していきます。

毎年勝手に生えてくるサトイモ。この残渣(ざんさ)も土づくりに生かす
①その土地に合いそうな植物を植え、土を育てるサイクルを暮らしに定着させる
詳しくは次の章で解説しますが、まずはその土地に合いそうな植物を優先的に植えていきます。この場合、野菜ではなくて緑肥でも良いですし、極端な話、雑草でも良いのです。
とにかく春から秋にかけてその土地で植物を大きく育て、それを冬の期間に土に返して土を育てるという1年間の大きなサイクルだけは最低限やり切りましょう。
植物を育て、土に返すという繰り返しによって、その土地が育ちますので、その野良仕事のルーティンを楽しみながら、暮らしの中に少しずつ定着させていくことを最初の2〜3年は目標にするとよいと思います。
②メイン植物を見つけて、育てて土に返す

雑草も野菜の残渣も全て土の上に敷くか、すき込むかして土に返していくことで土がどんどん育っていく
いくつか試してみた中で、よく育ったものを「メイン植物」としてどんどん植えていきましょう。そしてその残渣を土に返しながら土を育てていくと同時に、できれば種取りもしていき、よりその土地に合ったものに育てていきます。
家庭菜園だと多くの種類を植えたくなるところですが、初心者がいろいろ手を出すと、結局どれも手に負えなくなってしまいがちです。それよりは種類を絞って、少しずつ知識や技術を身につけて、得意なものを増やしていくのをオススメします。種類を絞ると家庭では消費しきれないほど収穫できるようになると思いますが、その時は近所の人にお裾分けしたり、お手伝いしてくれる人にお土産として持って帰ってもらったりすると、人とのつながりをつくるきっかけになってくれます。
③土を育てながら、少しずつ種類を増やす

水分量の多い野菜残渣は堆肥(たいひ)化してから畑に返すのもよい
メインとなる植物を中心に、少しずつ土づくりをしながら、合間にいろんな野菜も試していきましょう。土が育ち、野良仕事が暮らしに定着してくると、より多くの野菜を育てることがどんどん楽になっていきます。ある程度はその土地の土質、気候風土などによって、得意不得意な野菜というものはどうしても出てきますが、最初に比べると格段に育てやすくなっているはずです。
育てやすい植物の見つけ方
その土地で育ちやすい植物を見つけていくためには、手当たりしだい植えていきながら見つけていくこともできますが、時間と手間がかかりすぎてしまうので、以下の3つの選択肢を参考に探してみるのをオススメします。
緑肥作物から始める

緑肥として植えられたイネ科のソルゴー
まず定番なのが緑肥作物です。緑肥作物とは収穫のために植える作物ではなく、主に土を肥やすために植える植物のことを指します。
特にイネ科とマメ科の緑肥作物がオススメです。
イネ科の緑肥は深く根を張ることで土を耕すほか、土壌中の過剰な栄養分を吸収してバランスを整え、土壌に返すことで、土づくりに必要な炭素源の供給に役立ちます。
マメ科は空気中の窒素分を固定する根粒菌の働きによって、窒素分を増やして土を肥やす働きをしてくれます。
雑草よりも土を肥やす力は優れた植物なので、特に土が痩せているところでは、緑肥作物から始めるのをオススメしています。
| 分類 | 播種時期 | 代表的な植物 |
| イネ科 | 春・秋まき | エンバク、ライムギ |
| イネ科 | 夏まき | ソルゴー |
| マメ科 | 春~夏まき | クロタラリア、エビスグサ |
| マメ科 | 秋まき | レンゲ、ヘアリーベッチ、クリムソンクローバー |
痩せ地でも育つ野菜を選ぶ

痩せ地でもよく育つササゲ。豆類は痩せ地でも育つものが多いのでオススメ
土が痩せているのに、無理に地力が必要な野菜を育てようと思うと、余計に手間がかかり大変です。無理をせず痩せ地でも育ちやすい野菜から始めましょう。特に豆類や芋類が作りやすいのでオススメです。
豆類:エダマメ、ラッカセイ、ソラマメ、エンドウ、インゲン、ダイズ、アズキ、ササゲ
芋類:サツマイモ、ジャガイモ、ヤマノイモ、サトイモ、ハスイモ
根菜類:ダイコン、カブ
ネギ類:ニラ、ラッキョウ
ウリ科:カボチャ、ゴーヤー、ヘチマ
ナス科:トウガラシ、シシトウ
葉物野菜:ルッコラ、春菊、シソ、モロヘイヤ
その他:オクラ、ソバ、アマランサス、キクイモ
その土地の土質・環境に合わせて選ぶ

水はけの悪い場所や木の下でも育ちやすいハスイモ
その土地の土質や水分量、日当たりなどによっても育ちやすい野菜が変わるので、そちらも合わせて検討しましょう。
水はけの悪い土壌:サトイモ、ハスイモ、ショウガ、ナス、キュウリ、タマネギ、ダイズ
乾燥しやすい土壌:ジャガイモ、ヤマノイモ、トウガラシ、ラッカセイ、ソバ
日当たりの悪い環境:ミョウガ、フキ、ミツバ、セリ
畑の特徴を生かして楽しい畑ライフを
自然農ではどうしてもその土地の土質や環境によって、育てられる野菜が限られがちです。しかし、それをその土地の欠点ではなく、特徴として捉え、得意な植物を見つけていき、少しずつこちらも学びながら土地と共に育っていきましょう。僕らにとってもその畑にとっても無理がなく豊かで健やかな植生を築いていくことが自然農の喜びであり、楽しみ方だと思っています。



















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