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あなたの土は安全!? 土壌の免疫力を可視化する土壌診断方法がすごい!【畑は小さな大自然vol.118】

あなたの土は安全!? 土壌の免疫力を可視化する土壌診断方法がすごい!【畑は小さな大自然vol.118】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。畑づくりにおいて微生物が重要だということはだいぶ認知されるようになりましたが、微生物は目に見えないため、実際に自分の畑にどの程度微生物がいて、どんな働きをしているのかを把握するのはとても難しいですよね。それを検査する手法もありますが、とても時間や費用がかかるので、気軽には利用しにくいのが難点でした。しかし、このたび短期間で安価に土壌微生物の働きを可視化する診断手法が新たに開発されたそうです。早速取材してきましたので、ご紹介したいと思います。

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生物性診断は非常に重要なのに、診断が難しかった

自分の土壌がどのような状態にあるかを把握しようとするとき、一般的に化学性・物理性・生物性という3つの側面から診断していきます。化学性は主に土壌内の栄養素の量や種類、pHなど、物理性は土壌の構造や通気性、保水性など、生物性は土壌微生物の数量や種類、働きなどを測定していきます。これらを総合的に診断することで、より正確に土壌の状態を把握することができるとされています。

この中でも土壌の生物性は、土壌の健康状態を反映するバロメーターであるとも言えます。生物性の高い土壌では、土壌内の有機物が分解され、それが植物に吸収されていくという養分フローがスムーズに行われますし、有害な病原菌が繁殖しにくい環境にもなります。特に有機農業や自然農法など化学的介入を最小限に抑えた栽培においては、この土壌の生物性こそが作物の健康を支える最も重要な基盤となります。

化学性の診断は計測するキットも市販されていますし、より精密な検査は農協やホームセンターなどでも診断を依頼することができます。物理性の診断は比較的簡単に目視や触感などで判断することができます。
しかし生物性の診断に限っては、測定が非常に困難です。専門の診断所に依頼したとしても費用は数万円、結果が出るまで1カ月程度かかることが多く、気軽に依頼できないという課題がありました。

土壌の免疫力を可視化する土壌生物性診断とは

画像提供:合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会

今回は新たに画期的な土壌生物性を診断する手法が開発されたということで、合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会(SDB研)の代表である農学博士、橋本好弘(はしもと・よしひろ)さんにお話を聞くことができました。

既存の土壌生物性診断がなぜ高額な費用と時間がかかっていたのかというと、それは微生物生態系の複雑さにあるということでした。土壌中の微生物は1グラムあたり100億を超え、種類も膨大であり、まだ科学的に働きが解明されていない微生物も存在するため、確かにこれらを正確に分析するのは並大抵のことではなさそうです。

そこで橋本さんは微生物を一つ一つ拾い上げて分析するのではなく、群集全体の働きを「抑止力」という点に絞って計測する手法を開発しました。土壌病害の病原菌が畑に侵入したときに、それを抑止する働きがどの程度あるかを計測するというもので、いわばその土壌の免疫力を可視化する診断方法です。既存の生物性診断とは違い、微生物数や窒素循環活性などの細かい数値は出ませんが、圧倒的に安価でスピーディーな診断ができるのが特徴となります。現在は1検体3300円(税込)で1週間以内に結果が送られてくるということでした。

診断の仕組みについて

画像提供:合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会

まず診断したい畑の土を採取し、研究会に送ります。SDB研では土壌微生物を含む液体を用意し、特殊な電極を使って測定を行います。病原菌などの「外敵」の役割をする微生物を電極の先端に固定化し、それを土壌微生物の液体に「侵入」させます。すると健康な土壌の微生物群集は、この侵入者を認識すると免疫反応のように働き、侵入者の呼吸活性を抑え込もうとするそうです。この「抑え込む力」が強ければ強いほど、その土壌は病原菌に対する抵抗力(抑止力)が高いことを意味します。滅菌処理をした同じ土との比較測定を行うことで、その土壌が持つ微生物群集の抑止力を数値化することができるのだそうです。

画像提供:合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会

診断結果は、土壌の抑止力のレベルに応じてA:安全、B:少し注意、C:注意、D:やや危険、E:危険といった5段階で表示され、非常に分かりやすくなっています。
また、土壌の診断だけではなく、堆肥(たいひ)の抑止力効果についても診断可能ということなので、自分で作っている堆肥の安全性について気になる人はぜひ活用してみてください。

実際に検査をお願いしてみた

SDB研から送られてきた検査結果

実際にうちの畑の中で、青枯れ病が発生していた畝の土を採取し、抑止力検査をしてもらいました。その結果は案の定C判定ということで、土の抑止力が低下している状態だったようです。

橋本さんによる考察コメント

メールにて診断を依頼する際に、その畑でどんな野菜を育てているか、どんな病気が発生しているかなどを記載していると、橋本さんが簡単に考察コメントをしてくれます。僕が思っていたよりも土壌内の有機物は足りていないようです。この冬に対策を施してから、また検査してもらおうと思います。

定期的な生物性検査におすすめ

今まではなんとなくの経験と勘で土の状態を見ていましたが、さすがに土壌の抑止力については見た目や感触だけでは分かりません。事前に圃場(ほじょう)ごとの抑止力の違いなどが分かっていれば対策もしやすいので、今回橋本さんが開発した抑止力検査はとても気軽に検査できて活用しやすいと感じました。ぜひ皆さんも一度お試しください。

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