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「捨てる粗飼料」を減らすには?大型バンカー×高気密性シートで変わるサイレージ品質

「捨てる粗飼料」を減らすには?大型バンカー×高気密性シートで変わるサイレージ品質

牧場の運営に欠かせないサイレージですが、その生産現場では労働力不足や腐敗部分の廃棄コストなど、さまざまな課題が深刻化しています。今回は北海道でも最大級のTMRセンターを訪問し、現場が抱えていた課題とその解決策を伺うとともに、その取り組みを大きく後押しした高気密性サイレージ用シート「パッションAG」についても紹介します。

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1600頭以上の牛たちの粗飼料生産を一手に担う

「牛乳1滴が消費者のもとに届くまでには、実に多くの工程と苦労があるんです。良質な餌づくりもその大切な工程の一つで、サイレージの品質が牛の健康や乳量に直結します」。そう語るのは、TMRセンターの運営に携わる海田佳宏さんです。北海道十勝地方の南部・広尾町にあるこのTMRセンターは、株式会社ピラオロが運営しており、地域の酪農家へサイレージを製造・供給しています。

サイレージの供給が始まったのは2012年。それ以前は主に酪農家自身がサイレージ作りを行っていましたが、牛の管理と並行して作業を進めるのは大きな負担であり、規模拡大が進むにつれて「労働力の確保」や「作業の効率化」が深刻な課題として浮上していました。こうした声を受け、関係者が何度も協議を重ねた結果、サイレージの生産と供給を専門に行う組織としてTMRセンターが設立され、ピラオロがその運営を担う体制が整えられました。

「センターができてから楽になったという酪農家の声はたくさん聞きます。本来、時間をかけたい牛の管理にしっかり注力できるようになりましたからね。地域の労働力不足対策にも貢献できていると感じます」と話すのは、自身でも牧場を経営しながら株式会社ピラオロの取締役副社長を務める広瀬康史さんです。
ピラオロは日常業務を3名体制で管理しており、必要に応じてアウトソーシングも活用しながら、さらなる労働力削減を図っています。

株式会社ピラオロの取締役副社長を務める広瀬康史さん

腐敗の発生による労働力とコストの増大が大きな課題に

現在、ピラオロに加入している酪農家は16軒。2026年4月14日時点で、搾乳牛は1,334頭、育成牛は272頭と、合わせて1,600頭を超える規模にまで成長しています。粗飼料の作付け面積は総計約1,114ha。設立当初は約540haだったため、面積は倍以上に拡大し、供給量も年々増加しています。

大量の粗飼料を効率的に生産するため、バンカーは全部で23基を備えています。ピラオロの基本的なバンカーのサイズは、幅12m×高さ2.7m×奥行き46mと、一般的なサイズより大きく、さらにそのうちの5基は幅20mを超える全国的にも非常に巨大なものです。

ピラオロがこれほど大きなバンカーを造っているのには、ほかにも理由があります。
「バンカーサイロは開封口や奥壁付近のサイレージが特に傷みやすい構造です。そのため、サイロの終わりの部分や、新しいバンカーサイロへ切り替えるタイミングでは、どうしても牛の採食量が下がり、体調を崩しやすくなるという話も聞かれました。
1基あたりの貯蔵量が多ければ、サイロの切り替え回数を減らすことができ、こうしたトラブルを抑えることにつながります。結果として、サイレージ全体の品質を平準化する効果も期待できます」と海田さんは説明します。

TMRセンターの運営に携わる海田佳宏さん

こうした大規模設備には多くのメリットがある一方で、運営面では大きな課題も抱えていました。

最も厄介なのが、サイレージの腐敗・カビです。規模が大きいだけに、その発生量も尋常ではありません。供給開始当初には、4tトラック約200台分もの廃棄物が出たといいます。その後、圃場の土が混入しないよう刈り高を調整したり、鎮圧の強化や添加物の変更など、毎年さまざまな改善を重ねた結果、廃棄量は減少しました。それでもなお、一定量の腐敗や変敗は避けられません。
「腐った部分はその周囲まで含めて除去しないと牛には与えられません。一基ずつ上って、色や臭いで判断しながら人力や機械で取り除く作業は本当に疲れますし、廃棄にかかるコストもバカになりません」と、現場管理を担う赤島武司さんは話します。

株式会社ピラオロで現場管理を担う赤島武司さん

こうした問題は、単に作業負担やコストの問題にとどまりません。供給するサイレージの質にも直結します。「私たちも日々の食事でお米の味が変わると『あれ?』と感じますよね。牛たちも同じなんです。サイレージにも出来の良し悪しがあり、良質で美味しいものを食べた後に少し質の落ちたものを与えても、なかなか食べてくれません。そのためにも、できる限り腐敗や変敗が起こりにくいサイレージづくりに努めないといけないのです」と海田さんは続けます。
実際に過去には、サイレージの質が悪いことが原因で、餌の発注数量が目に見えて減少したこともあったといいます。牛が餌を十分に食べなければ乳量は当然落ち込みます。ピラオロにとっても、構成員である酪農家にとっても、これは経営に直結する大きな問題なのです。

こうした廃棄に関する問題や、サイレージの品質を高いレベルで平準化するという課題に取り組んでいる最中、紹介を受けたのがサナテックシード社の高気密性サイレージ用シートでした。
※現在は「パッションAG」を販売中

空気を遮断し腐敗・変敗を抑えて、より上質なサイレージに

サナテックシード社の高気密性サイレージ用シート「パッションAG」

サイレージが腐敗・変敗する要因は多岐にわたりますが、基本となる対策は、きちんと密閉して空気を遮断することに尽きます。サイレージの腐敗や変敗による廃棄を抑えられるというデータもあったことから、ピラオロでは2020年に高気密性サイレージ用シートを1基のバンカーで試験的に導入しました。

薄くて軽いので、扱いやすさは抜群です

「最初はこんなペラペラのシートで本当に効果があるのか?と正直、疑っていました。当時使っていたものよりずっと軽くて薄くて、風が吹いたら飛んでいきそうなくらいで。でも実際にかけてみると、ラップみたいにサイレージにぴったり張り付いて、“あ、意外といいかも”と思ったのを覚えています」と広瀬さんは振り返ります。

「まず驚いたのは、一番上にかけるビニールシートを押さえるタイヤの跡がほとんど残らなくなったことでした。表面はどうしても傷みやすく、いつもなら色が変わってしまう部分なんです。それが明らかに改善されていて、しっかり密閉されているんだと実感しましたね」と、赤島さんも続けます。

以前はこのようにタイヤの跡がくっきり残っていたそうです

シートの効果が見えてきたことで、他にも傷みが出やすい部分に対しても工夫を加えることに。そこでピラオロでは、サイレージの表面に加え、両側の壁にもシートを這わせてカバーする方法を取り入れてみました。すると、これまで大量廃棄の主な原因になっていた壁際の腐敗がぐっと減りました。さらに「コ」の字型になっているバンカーの奥の壁にもシートを設置し、腐敗のさらなる抑制につなげたといいます。

設立当初、4tトラック200台分にも及んでいた廃棄量は、バンカーの数が増えたにもかかわらず、いまでは20〜30台分にまで減少しました。「良質なサイレージとして使える割合が増えましたし、作業の負担も軽くなりました。廃棄飼料が減ったことで、数百万円規模のコスト削減にもつながっています。廃棄せずに牛に与えられれば収入の増加にもつながりますから、製品への投資は十分に回収できます。資材にかけた以上のメリットが出ています」と海田さんは話します。

豊富なサイズ展開。薄くて軽いので敷設も簡単

2024年からピラオロでは、前身製品から「パッションAG」への切り替えを進め、2026年現在ではすべてのバンカーで同製品を使用しています。
パッションAGは他のサイレージ用シートと比較して酸素透過度が極めて低く、比較対象によっては1000倍以上酸素を通しにくいことが知られています。酸素の侵入を抑えることで、内部の内容物が腐敗・変敗しにくい環境を維持できます。

製品 厚み(µm) 酸素透過度 mL/(㎡・24h・atm)
パッションAG 45 1.5
一般的なサイレージ用シートA 95 2,000
一般的なサイレージ用シートB 200 1,100

あいち産業科学技術センター調べ(2019,2020)

サナテックシード社で実施した試験では、パウチを作成して5日経過した後でも、パッションAG内に入れたバナナは褐変が少ない状態を保っていました。

【パッションAG】の特性

・特殊な樹脂を挟み込んだ多層構造により高気密性を実現する
・サイロ表面からの外気の酸素流入を防ぐことで、表層の腐敗・カビの発生・発酵ロスを軽減
・シートの厚みが45μmと薄いため、サイレージの表面に密着しやすく、シートと原料の間への酸素の流入リスクを軽減
・サイズ展開が豊富で、様々なサイロの大きさで使用可能

製品詳細はこちら

パッションAGの規格はレギュラー品として7種類を展開しており、さらに数量は限られるものの、大型サイズや小型サイズも取り揃えています。ピラオロのように在庫にない特注サイズについても、早めの注文で対応できる場合があり、サイズの自由度が高い点が特徴です。
ピラオロのような大型バンカーでは、従来の規格品を使用すると複数枚を重ねて敷設する必要がありますが、大型サイズのシートを使用することで、その手間を大幅に軽減できたといいます。

「パッションAGはとにかく薄くて軽いので、使い終わったあともサッと丸めて処分できるんです。場所を取らないし、シートの廃棄コストも抑えられて、本当に助かっています」と、赤島さんは話します。

「おかげさまで目指している品質の平準化という点で大分理想に近いものに近づいてきています。いまあるシートの中ではベストだと思いますので、今後も使用を継続していきたい」と海田さんも続けます。

ピラオロが見据えるのは、安定したサイレージ供給を通じて地域の酪農家を支え、消費者により良い牛乳を届けていくこと。その思いを尋ねると、広瀬さんは「飼料の品質は終わりがなくて、常に“もっと良くできるはずだ”という気持ちで取り組んでいきたいです」と力強く語ってくれました。

取材協力

株式会社ピラオロ
北海道広尾郡広尾町字野塚3線10番地

問い合わせ先

サナテックシード株式会社 北海道事業所
北海道河西郡芽室町東芽室北1線4番地13
電話:0155-62-7848

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