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「約束の値段の半額での清算に…」口頭での取引金額は有効か。【農業法律相談所#10】

連載企画:農業法律相談所

「約束の値段の半額での清算に…」口頭での取引金額は有効か。【農業法律相談所#10】

読者から寄せられた農業に関する法律のお悩みや相談ごとに、弁護士が答える連載企画「農業法律相談所」。今回は、個人間での農産物の出荷金額をめぐるトラブルについて見ていこう。

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「当初の金額の半額ほどでの清算」と連絡

北海道で玉ねぎなどを栽培している個人農家です。近年、玉ねぎの値段が上がっていることもあり、ありがたいことに多方面から取引の話をいただいています。そのうち、とある個人事業主 とトラブルになっており、質問させていただきました。

その個人事業主とは地域の出荷場でたまに顔を合わせる程度でしたが、数カ月ほど前に「玉ねぎ1箱を〇〇〇〇円で販売するから、モノをうちに回してくれないか」と持ち掛けられました。現在の販売先に比べて高額な値段であったことから話に乗ることとしましたが、出荷後ほどなくして「見込んでいた価格で販売できなかった」などと、当初提示された値段の半額ほどでの清算となる旨の連絡がありました。

出荷契約書を結ばなかった私にも非はありますが、こうした悪質ともいえるやり口に憤りを覚えます。口約束の出荷金額を反故にされた場合、やはり泣き寝入りするしかないのでしょうか?

弁護士の見解「口約束でも契約は成立するため、当初提示された金額を請求することができます」

契約の成立

契約は、申込みと承諾という2つの意思表示が互いに合致することによって成立するとされています。
ここでいう申込みとは、契約の内容を示したうえで当該内容にて契約の締結を申し入れることを意味し、承諾とは、申込みによって示された内容による契約の締結を承諾するということを意味します。そして、意思表示とは、一定の法律効果の発生を欲する意思を外部に対して表示する行為を意味します。

このように言葉で説明すると難しく聞こえますが、具体例で考えればそれほど難しい話ではありません。今回の事例に即していえば、「玉ねぎ1箱を〇〇〇〇円で売却してください」と述べるのが申込みの意思表示であり、これに対して「わかりました」と述べるのが承諾の意思表示となります。そして、このようなやり取りによって申込みと承諾という2つの意思表示が互いに合致したといえることになります。
一定の契約類型をのぞいて、申込みと承諾の意思表示は、口頭で行うことができるとされており、今回の事例で問題となっている売買契約については申込みと承諾の意思表示を口頭で行うことができるものとされています。

従って、ご質問者様と個人事業主との間にも売買契約が成立しているということになります。

「本当に口約束をしたのか」が争点

なお、法律上の問題だけを考えると口約束でも契約が成立するということに何の争いもありません。しかしながら、現実には、「本当に口約束をしたのか」という点が争いになることが多いものといえます。もし、この点が争いになり、裁判にまで発展した場合、本当に口約束だけで何らの書面も存在していないと、裁判においてそもそも申込みと承諾の意思表示がなかった=契約が成立していないと判断されることが多いものといえます。従って、できる限り口約束だけで終わらず、契約書などの書面を作成することが望ましいといえます。

契約の効力

契約は日常生活において交わされる約束とは効力が異なります。約束は一方的に内容を変更されてしまうことがあったり、場合によっては反故にされてしまったとしても相手方に何らかの制裁を当然に加えることはできません。しかしながら、契約ではそのようなことはありません。いったん成立した契約は、双方当事者の合意や法律上認められた場合でない限り一方的に変更することはできず、仮に契約で定められた債務を履行しない場合、裁判所によって強制的に履行させられたり、損害賠償の支払いをしなければならないこととなります。

ご質問者様の場合においても、ご質問者様が代金の減額に応じない限り、ご質問者様は当初口約束で決めた金額の代金を個人事業主に請求することができ、個人事業主がこれに応じない場合は、足りない部分の代金を回収するために裁判を提起することも可能となります。

また、契約には、明確な意思表示がなくても法律によってさまざまに派生する効力が認められています。今回の事例に即していえば、ご質問者様は代金の全額の支払いがない限り玉ねぎを引き渡さないと述べることが認められています。さらに、個人事業主がどうしても代金の全額の支払いを行わない場合には、売買契約の解除が認められる可能性があります。売買契約が解除された場合、ご質問者様がすでに受け取った代金があればこれを個人事業主に返還する必要がありますが、それと同時に、個人事業主に対しては玉ねぎを引き渡す必要がなくなり、すでに個人事業主に引き渡した玉ねぎがある場合は、当該玉ねぎの返還を請求することができます。

まとめ

口約束によっても契約は成立します。そして、いったん成立した契約は一方的に変更することはできません。従って、ご質問者様は個人事業主に対して代金の全額を請求することができます。加えて、前述のとおり、契約には法律によってさまざまな効力が認められており、場合によっては契約を解除することができる可能性もあります。

このようにさまざまな選択肢があるため、ご質問者様は状況に応じて自己にもっともメリットがあるものを選択することによって、被害を最小限に食い止めることができるものと考えられます。

事案のポイントを整理

✅口約束でも契約は成立する。そして、いったん成立した契約は一方的に変更できない。
✅相手方が契約で定めた内容を履行しようとしない場合、契約を解除するなど法律上認められている手段が複数あるため、自己に最適な選択肢を選ぶ必要がある。
✅後に争いになった時に備えて、できる限り契約書などの書面を作成しておくことが望ましい。

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