マイナビ農業TOP > 農業ニュース > 友人からもらった新米。食べきれなかった分を販売するのは犯罪?【農業法律相談所#9】

友人からもらった新米。食べきれなかった分を販売するのは犯罪?【農業法律相談所#9】

連載企画:農業法律相談所

友人からもらった新米。食べきれなかった分を販売するのは犯罪?【農業法律相談所#9】

今年、高値でコメを転売したとして逮捕、送検されるケースが相次いだ。農業に関する法律のお悩みやご相談に、弁護士がお答えする連載企画「農業法律相談所」第9回となる本記事では、こうしたコメの転売にまつわる質問に回答してもらった。

twitter twitter twitter twitter
URLをコピー

備蓄米を転売したとして逮捕の報道。もらったコメを販売する場合も罪に問われる?

東京でカフェを営んでおります。国民生活安定緊急措置法について質問させてください。
つい最近、田舎でコメ農家をしている知人から、希少な新米をたくさんいただきました。とても家族だけで消費できる量ではなかったのですが、その知人からは「食べきれなかったら小袋にして自分のカフェで売ったら?」と言っていただきました。

しかし最近、備蓄米を転売したとして同法違反の容疑で男女2人が逮捕されたニュースを目にしました。報道によると今年6月23日からコメの転売を禁止しているとのことですが、上記のように知人が販売を了承してくれているケースにおいても、店頭で販売することは法律違反に問われるのでしょうか。

弁護士の見解「コメは一部の転売行為のみ規制されている」

小売店舗やECサイトなど不特定の相手に販売する者からコメを購入したわけではないため、法律違反に問われる可能性はないものと考えられます。

国民生活安定緊急措置法の概要

国民生活安定緊急措置法(以下、緊急措置法)は、物価が高騰する又は高騰するおそれがある場合における生活に関連する物資の価格及び需給の安定を図ることを目的として制定された法律です。緊急措置法は、このような目的を達成するための手段として、物価が高騰する又は高騰するおそれがある場合において、生活に関連する特定の物資の価格が著しく上昇する又は上昇するおそれがあるとき、当該物資の価格を指定したり、譲渡又は譲受を禁止したりするなどの措置を行うことができるものとされています。

そして、本年6月23日から禁止されたコメの転売禁止については、緊急措置法第26条第1項及び緊急措置法から委任を受けて制定されている国民生活安定緊急措置法施行令(以下、施行令)第2条及び第7条によって定められています。このうち、第2条が実際に禁止される転売行為の内容について規定しており、第7条が第2条に違反した場合の刑罰を定めています(第2条に違反する行為をした者は、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処せられることとなります)

従って、ご質問者様の場合、法律違反となるかどうかについては、ご質問者様の行為が施行令第2条に違反するかどうかによって決定されることになります。

施行令第2条の内容

施行令第2条は、コメを転売することの全てを禁止しているわけではありません。コメの転売のうち、以下の行為のみを禁止していることになります。
①小売店舗やECサイトなど不特定の相手に販売する者から購入したコメを
②購入した金額よりも高い金額で
③インターネットや店舗などを通じ、不特定又は多数の者へ転売する行為

従って、施行令第2条に違反するかどうかについては、問題となっている行為が、上記の3つの要件にあてはまるかどうかによって判断されることになります。

このような形で転売行為のうち一部のみが規制された理由は以下の通りです。
まず、そもそも今回の規制は、直近におけるコメの価格の著しい上昇を受けたことをきっかけとしています。一般的に、コメを安価で仕入れて高値で転売することは、さらなる米価の上昇につながるものと言えます。従って、米価のさらなる上昇を防ぐためには高値での転売を規制する必要があることとなります。

一方で、米価のさらなる上昇を防ぐためには、転売のうち、コメの高値での転売を防げば十分であるとも考えられます。施行令第2条の規定は、以上のような考え方に基づいて制定されており、そのため、転売行為の一部のみを規制の対象としたという事になります。

ご質問者様は、知人からコメを無償で譲り受けています。従って、小売店舗やECサイトなど不特定の相手に販売する者からコメを購入したわけではありません。そのため、ご質問者様が、東京で営んでいる自己のカフェにおいて、小袋に小分けして当該コメを販売したとしても、施行令第2条の規定する要件に該当せず、同法に違反していないものと考えられます。

なお、施行令第2条では、購入元が転売を了承しているかどうかは要件になっていないため、本件のようにコメを譲渡した知人が転売を承諾しているという事実は、同法違反となるかどうかについて影響を与えない関係のない事実であるという事になります。

本事案のポイントを整理

✅急措置法は、物価が高騰する又は高騰するおそれがある場合において、生活に関連する特定の物資の価格が著しく上昇する又は上昇するおそれがあるとき、当該物資の価格を指定したり、譲渡又は譲受を禁止したりするなどの措置を行うことができるものとされている。
✅施行令第2条は、コメの転売行為のうちの一部のみを禁止している。具体的には、①小売店舗やECサイトなど不特定の相手に販売する者から購入したコメについて、②購入した金額よりも高い金額で、③インターネットや店舗などを通じ不特定又は多数の者へ転売する行為のみが禁止されている。

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE
  • Hatena
  • URLをコピー

関連記事

あなたへのおすすめ

タイアップ企画