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薪割りをぐっと楽にするコツとオノの使い方【DIY的半農生活Vol.39】

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

薪割りをぐっと楽にするコツとオノの使い方【DIY的半農生活Vol.39】

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約3.5反(35アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。田舎で農的暮らしをしていれば、冬の暖房に薪(まき)ストーブを使っている人は珍しくないだろう。山の間伐材を燃料にできるし、庭木や果樹の剪定(せんてい)枝を有効に処分できる。ただ、伐採した木はそのままでは薪にならない。ストーブにくべやすいようにオノで割って薪にしてやらなくてはいけない。今回はその古典的道具の妙味と、楽に薪を割るコツを紹介する。キツい肉体労働を楽しいアクティビティーに変え、日々のエクササイズにしてしまおう。

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薪割りに適した時期

10月に薪ストーブをたき始めてから2カ月たつが、今年はあまり薪が減らない。消費量は例年の半分ほどだ。秋が暖かかったのだ。薪も貯金と同じで、蓄えはあるに越したことはないのだが、使わなければインフレでお金の価値が下がっていくように、過剰な乾燥や虫食いでエネルギーが失われていく。蓄えるばかりではなく、うまく回していくことが大切だ。

わが家の燃料庫。およそ3年分の薪がストックされている

春に近所で伐採した丸太をもらった。それが庭に山になっている。できるだけ早く薪棚に収めたいのだが、今シーズンの薪を使い切らないと薪棚が空かない。丸太は玉切り(所定の長さに切ること)にして雨に濡れないようにトタン板をかけてある。10月に入ってから少しずつ薪割りもしている。本来は玉切りしたあと、さっさと割ってしまいたいのだが、春から秋にかけては農作業をはじめ、ほかに優先すべきことが多すぎて、必ずしも急いでやる必要のない薪割りはどうしても後回しになる。ただ、伐採後、少し時間をおいたほうが薪割りはしやすいと私は感じている。

近所の屋敷で伐採された立派なモチノキ

なぜなら、水分を多く含む生木は繊維が柔らかく、振り下ろしたオノの力を吸収してしまうからだ。含水率が高いほどねばりも強く、スパンと小気味よく割れない。季節的な作業のしやすさも関係する。暑い夏に薪割りは向かない。気温の低い秋や冬のほうが、気持ちのいい汗をかける。

薪の動線を考える

大量の丸太は一度に割ろうとすると大変だ。薪割り機を使えば容易だが、今の私は好んでオノによる薪割りをしている。いいトレーニングになるからだ。「象をも倒す」といわれたアメリカの元プロボクシングヘビー級チャンピオン、ジョージ・フォアマンは、薪割りでそのたくましい肉体を作ったという逸話もある。

丸太の芯をとらえ、きれいに割れると気持ちいい

そういうわけで毎朝10分の薪割りをルーティンにしている。体力と集中力、忙しい朝に使える時間を考えると、これくらいがちょうどいい。10分の薪割りで、だいたい一輪車(ネコ車)に山盛り1〜2台分の薪ができる。割った薪は薪棚に積み上げ、帰りにその日使う薪を棚から家まで運んでくる。
薪ストーブをたくなら、薪の動線をよく考えて庭を作ることだ。トラックによる薪の搬入→玉切り→薪割り→薪棚→家の薪ストーブ、という移動がスムーズにできないとストレスになる。これ、結構重要です。

一輪車山盛りで、薪ストーブ1日分の燃料になる

丸太を割り広げる洋オノと切り裂く和オノ

オノの存在は誰もが知るが、日常的に使っているのは私のように薪ストーブをたいて暮らしている人くらいだろう。
わが家には4丁のオノがある。ヘッド(刃がついた金属の部分)の重さや形状、柄の長さや材質がそれぞれ異なり、丸太の種類や用途に合わせて使い分けている。メインに使っているのは、ドイツ・ヘルコ社の「ヘリテイジ スプリッティングハンマー HR-4」。ヘッドの重さが3キロあるヘビーウエイトアックスだ。柄は衝撃に強いヒッコリーで、長さは90センチある。私が思うところでは、標準的な日本人男性が扱えるヘッドの重さは、1.8キロ前後だ。各社のラインアップもそのあたりがボリュームゾーンである。

ヘリテイジ スプリッティングハンマー HR-4

だからこのオノを初めて手にしたときはとても扱える代物ではなかった。でも、ワンシーズンも薪割りすれば軽々と振れるようになる。それくらいの筋肉がつくし、体もしぼれる。
2番手のオノは同じヘルコ社の「トマホーク ライトスプリッティングアックス TM-4」。ヘッド重量1.5キロ、柄の長さは80センチ。柄が樹脂(ガラス繊維強化ポリアミド)製で振り下ろしたときに手に伝わる衝撃が少なく、木製に比べて耐久性も高い。扱いやすさは一番である。

トマホーク ライトスプリッティングアックス TM-4

この2丁は、ヘッドを見ると刃の先端が薄く、付け根にいくほど厚みが増す。刃先で木の繊維に割れ目を入れ、ヘッドを食い込ませて押し広げることで丸太を割る。北米やヨーロッパのスプリッティングアックス(薪割りオノ)は主にこの形状だ。総称して洋オノと呼ばれる。

左が和オノ、右が洋オノ

一方、私の所有するあとの2丁は日本で古くから使われている和オノだ。先端から付け根までヘッドがほぼ一定の厚さで、刃先にかけてゆるやかなカーブを描いている。スギやヒノキなどの柔らかい樹木に適しており、丸太を割るというよりは切り裂く感覚に近い。和オノはヘッドの側面にそれぞれ3本と4本の筋が入っており、安全祈願や信仰からつけられたものといわれている。2丁とも骨董市で入手し、1丁は薪割り用、もう1丁は小割用の手オノである。

和オノ。ヘッドの側面に刻みが入っているのも和オノの特徴

ヘッドの重さとスピードで薪を割る

薪割りはアウトドア派の人間にとって興味深いアクティビティーだ。わが家に遊びに来る人にオノを手渡すと夢中になって薪を割る。ただし、初めてで簡単にできるものでもない。力のある男性は腕力で割ろうとするが、それではうまくいかない。
薪割りはヘッドの重さとスピード(運動の速度)を利用してやるものだ。運動エネルギーが破壊力になるのである。それはK=1/2 mv2(K=運動エネルギー、m=質量、v=速度)の式で表せる。これに弧を描くことによる回転の運動エネルギーも加わる。
つまり、重いオノを扱えれば、それだけ高い衝撃力を生み出せるのだが、運動がより高速であれば柄の短い軽いオノが勝る。ヘッド重量2キロのオノを秒速5メートルで振り下ろした場合の衝撃力は25ジュールだが、ヘッド重量1.5キロのオノを秒速6メートルで振り下ろせば27ジュールの力が出る。

ただ、重いオノには計算式には表れない物理的、実務的なメリットがある。重力で加速するため、腕力でスピードを出す必要がない。腕力に頼るとミスしたときに自分に跳ね返ってくる危険があるし、疲労につながる。また、軽いオノは衝撃が加わった瞬間に速度が落ちやすいため、丸太が割り切れないうちにエネルギーが尽きてしまう。一方で重いオノは抵抗に負けず最後まで割り進む力がある。特に繊維の強い硬材では破壊力(重さ)の差が顕著に表れる。 こうしたことを理解すると、薪割りが少し楽にできる。

丸太は元口から割る

丸太は薪割り台の奥に置く。仮に空振りしてもオノが薪割り台に当たって止まるので、地面や足に当たってケガをするリスクを低減できる。

丸太は元口を上にして薪割り台の奥に置く

丸太を置くときは元口(根元側)を上にする。「木元竹末(きもとたけうら)」という言い習わしがあり、木は元口、竹は末口(先端側)から割るのが割りやすいとされている。短く切られた丸太では次のことを目安に元口と末口を見分けられる。
①元口のほうが太い
②元口のほうが年輪の幅が広い
③枝を落としたあとの根元が傾いている方向が末口(枝が上に向かって伸びているのを想像すると分かりやすい)
ただし、繊維の通り方によっては末口からのほうが割りやすい場合もある。元口の手ごたえが悪ければ、丸太をひっくり返して末口から割ってみる。

薪割りに慣れていない人は、両手でオノを持って丸太の正面で構え、ゆっくり振り下ろしてヒットポイントを確認する。振り下ろした刃は丸太の中心よりやや手前の位置に、木口(丸太の断面)と平行に当てる。真ん中に当てるとより大きな力が必要になり、奥に当てると柄が丸太にぶつかる恐れがある。

丸太の中心よりやや手前を狙って、オノの刃を木口と平行に当てる

ヘッドがインパクトした瞬間に軽く腰を落としてオノを沈める。振り子運動になると空振りした際にオノが自分に向かってくる恐れがあるので、足を肩幅に開き、万が一の場合にオノが股の下に逃げるように予防線を張っておく。

オノを振り下ろしたときに、ちょうど丸太に当たる位置に立ち、オノを頭の上に振りかぶる

柄を握った両腕の間から向こう側が見える高さまでオノを上げ、体の中心線を通るようにまっすぐ振り下ろす。力で割ろうとしないこと。ちょっと初速をつけてやれば、あとはヘッドの重さで加速する。力よりも狙った場所に正確に打ち込むコントロールが重要だ。

丸太にヒットした瞬間に腰を沈め、ヘッドの重さで丸太を割る

薪ストーブをたいて暮らしていれば薪割りは避けられない仕事だ。それをキツい肉体労働と考える人もいるかもしれないが、私にとっては楽しいアクティビティーであり、日々の欠かせないトレーニング。自分の手足を動かし汗をかいてこしらえたエネルギーは、原発や化石燃料よりずっとずっと温かいものである。

家の中で火を眺めて過ごす。薪ストーブはいいぜ

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