一年中途切れることなく野菜を作る
11月の終わりに強い霜が降りた。まだ日が昇る前に家を出て愛犬タロの散歩から帰ると、ダイズを収穫したあとの畑が霜で真っ白になっていた。どうりで寒いと思った。夏からずっと収穫が続いていたナスがついに枯れた。ジャガイモもヤマイモもサトイモも、寒さで傷む前に掘り上げなくてはいけない。
一方で、ハクサイやダイコン、ホウレンソウなどは、これから気温が下がってくるとうまみが増す。細胞内の水分が凍らないように糖分を増やすためだ。それによって、まろやかな甘みのある濃厚な味になる。俗に「寒じめ」と言われ、糖度の高い野菜としてブランド化されているものもある。

冬の畑で育つハクサイと長ネギ
冬の畑も豊作だ。夏の終わりに抜かりなく種をまいておいたからね。その作物が10月半ばからとれ始めている。年間を通して途切れなく何かしらの野菜を収穫できるように作付けするのは自給の鉄則。ここ1〜2週間は毎日チンゲンサイが続いているが、まぁ、よくあることだ。ダイコンがとれ始めると、しばらくはダイコンばかり。続いてハクサイ、ハクサイ、ハクサイ……。玉が大きいので消費も大変。今の畑を眺めると、春先までは毎日何かしら収穫できそうだ。そうであれば、その先、春から初夏にかけてとる野菜は、まさに今から仕込んでいかないといけない。とはいえ、真冬に普通に種をまいたのでは気温が低すぎて芽が出ない。被覆資材を使って保温することが必要だ。

不織布と防虫ネットのトンネル。ネットをかけておくだけでも、寒風が和らぐなど、一定の保温効果がある
フィルムトンネルの種類──農ビ、農ポリ、農PO
被覆資材というのは、フィルムトンネルや不織布、マルチフィルムなどだ。自然素材のわらやもみ殻もマルチとして使える。素材の構造的に空気を多く含むため、それが断熱材となって夜間の地表からの放熱を抑え、昼夜の温度変動を和らげる効果が期待できる。こうした資材を組み合わせて畝を覆うことで、寒さや霜の影響を和らげるのだ。
フィルムトンネルに使われる資材は主に3つある。ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリオレフィン(PO)だ。一般的には農ビ、農ポリ、農POと呼ばれ、次のような違いがある。なお、耐用年数は、破れや透明度の低下などによる一般的に推奨される交換の目安。当然、透明度が低下すると日射透過率が落ち、生育に影響が出る。もっとも、私はどうにも“もったいない精神”が強くて、かなり派手に破れるまで使い続けてしまうのだが……。

左から農ビ、農PO、農ポリ
農ビ
赤外線(熱)を通しにくく、一度暖まったトンネル内の温度が下がりにくい。一方、素材の密度が高いので重量があり、やや扱いにくい。また、傷がつくとそこから一気に穴が広がりやすいという欠点もある。耐用年数は1~2年が目安。
農ポリ
赤外線を通すため保温性は低いが、軽くて柔らかいので扱いやすい。ほかの資材に比べて安価なこともあり、家庭菜園では最も広く使われている。耐用年数は1年が目安。
農PO
農ビに近い保温性があり、しかも軽くて扱いやすい。紫外線にも強いため透明度も落ちにくく耐久性も高い。販売されているものはシートが青みがかっているものが多い。耐用年数は4年が目安。価格はやや高めだが使い勝手はよい。
トンネル栽培の場合、厚みは0.05〜0.1ミリくらいが一般的。当然、厚い方が保温力はあるが、重さが増すので扱いにくくなる。価格も上がる。そうした点を総合的に考慮して、私の選択は厚さ0.075ミリの農PO。さらに不織布のベタ掛けを併用する。
不織布とマルチで地温を維持する
不織布はマスクなどにも使われている素材で、繊維を絡み合わせた織り目のない布だ。素材は化学繊維が一般的。通気性があり光や水も通すため、トンネル掛けのほか、作物に直接掛ける「ベタ掛け」にも向く。夜間の地温維持に高い効果を発揮する。

不織布。畝を覆うことで害虫も防げる。軽くて柔らかいのでとても扱いやすい
地温を上げるにはマルチフィルムが有効だ。透明、黒、緑、白、銀など用途に応じて色が異なるが、保温効果が最も高いのは透明マルチ。太陽光を通し地面を温めて熱を閉じこめる性質がある。ただ、光を通して地面が温まるということは草も勢いよく生える。防草効果はない。
地温上昇と併せて草も抑えたいなら黒マルチが有効だ。太陽光を通さず黒色が光を吸収して熱に変える。

15センチ間隔で植え穴が開いている黒マルチ。地温の確保と防草に効果的
とはいえ、私はマルチフィルムをあまり好まない。トンネルフィルムや不織布は繰り返し使えるのに対して、マルチフィルムは基本的に使い捨てになってしまうからだ。その場しのぎでゴミになってしまうものはできるだけ使いたくない。
その代わりに、もみ殻くん炭で畝を覆う。黒マルチと同じように太陽光を吸収して熱に変え、もみ殻くん炭同士の隙間(すきま)に含まれる空気が断熱材として働く。保温効果は限定的だが、畝を覆うことで放射冷却による地温低下も抑えられる。さらに作物を収穫したあとは、そのまま土にすき込んで土壌改良に役立つ。その点がマルチフィルムよりもずっといい。

もみ殻くん炭。土にすき込めば排水性の改善など土壌改良効果も期待できる
保温栽培の方法
こうした保温資材を使うことで、真冬でも次のような野菜が栽培できる。コマツナ、ホウレンソウ、コカブ、ミズナ、チンゲンサイ、ラディッシュ、リーフレタス、ダイコン、ニンジンなど。同じ野菜でも品種によって作型が異なるので、種袋の情報を参考に、真冬に種まきできる品種を選ぶこと。

温暖地や暖地では、真冬でも保温して栽培できることが波線で示されている
畝を立てて種をまく

3条ごとに野菜の種類を変え、1畝で多品目を栽培する
ダイズを収穫したあとを耕して改めて畝を立てる。畝幅は60センチ。畝に対して垂直方向に条間15センチで深さ1センチの溝を切って、2〜3センチ間隔で葉物の種をまく。種の深さを均一にすれば発芽もそろう。種をまいたら覆土して板で押さえて鎮圧。種と土を密着させることで、土壌水分を吸収しやすくなり、発芽が促される。
もみ殻くん炭をまき、不織布をベタ掛けする
畝の表面にもみ殻くん炭をまき、その上から不織布をベタ掛けして覆う。

畝の表面が薄く隠れる程度にもみ殻くん炭をまく。厚くまくと発芽しにくくなる

不織布を張ることで霜害も抑えられる
不織布の裾はピンでとめておき、発芽して茎葉が成長したら緩める。
トンネルを設置する
トンネルの支柱を立て、フィルムを張る。

支柱は地面に20センチほどの深さで差す

しわにならないように農POを張る
トンネルの支柱には「ダンポール」の商品名で知られる弾力のあるFRP(繊維強化プラスチック)製の支柱を使う。曲げて使うタイプで、折れにくく、収納にかさばらないので、私はU字型のトンネル支柱より扱いやすいと感じている。支柱は約1メートル間隔で設置し、トンネルの両端では斜め45度に傾ける。フィルムにテンションがかかり、きれいに収まる。フィルムの端は束ねてU字ピンに挟んで固定する。

トンネル両端の支柱は傾け、フィルムの端はU字ピンを打って固定
ひもで押さえる
フィルムトンネルが風でばたつかないようにひもを張って押さえる。

畝の左右で千鳥(ジグザグ)になるように杭を打ってひもをわたし、トンネルを押さえる

トンネルの裾は市販のフックで固定。フィルムが傷つきにくく、換気のための裾上げも楽にできる
一般に「マイカ線」と呼ばれる、細い金属線をビニールでコーティングした丈夫なひもを使う。フィルムトンネルの裾は下まで下ろして市販のフックで固定。日中トンネル内が25度を超えるような場合は裾を上げて換気する。3月以降、気温20度前後の日が続くようになればトンネルは外す。

トンネル完成
気温の低いこの時期は、野菜の生育はベリースロー。でも、冬の間はじっと我慢。立春を過ぎれば野菜たちはぐんぐん育つ。外はまだ寒くても、しっかりその日から春は来ているんだ。自然はそれを知っている。だから、今、このときに野菜の種をまこう。そうすれば春の食卓は大地からのおいしい贈り物でいっぱいになる。

冬の間に種をまいておくことで、野菜が少なくなる端境期に収穫できる




















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