ひょう害への対応で農家から信頼
六次産業協同組合は深谷市の生産者や農産物の加工会社などがメンバーの組織で、2017年に発足した。深谷ネギやサツマイモを生産し、干し大根などを製造している。神岡さんは2025年1月にその監事になった。
六次産業協同組合の代表理事の持田直光(もちだ・なおみつ)さんは神岡さんについて「ピンチをチャンスに変えるスキルを持っている」と評す。その腕を見込み、業務委託の形で販売を担ってもらうことにした。
もともと地元の道の駅に勤めていた神岡さんが、生産者からの信頼を高めた出来事がある。2022年6月に起きたひょう害への対応だ。深谷市特産のトウモロコシ「味来(みらい)」に広範にひょうが当たり、傷がついた。

持田直光さん
もともと贈答用で販売する予定だった。トウモロコシの味は変わらないが、傷がついた状態のままギフトにするのは難しい。そこで贈答用の販促イベントを中止し、値段を安めに設定して支援販売会を急きょ開催した。
組合のメンバーもこの販売会にトウモロコシを出荷した。その縁もあり、神岡さんが独立を決断したタイミングで業務委託することにした。神岡さんには「野菜の仕事をもっと広くやってみたい」という思いがあった。
農家と店舗、消費者が納得する価格
六次産業協同組合に入った神岡さんの初めての大きな仕事は、埼玉県の2つの道の駅への深谷ネギとトウモロコシの販売だ。1つは新規開店で、もう1つはリニューアルオープン。いずれも深谷市以外の場所にある。
このときの販売手法をネギで振り返ってみよう。「農家は売れるなら高ければ高いほどいいと考えるが、道の駅に利益が出るようにすることも必要。ではどこで線引きするか」。神岡さんはまず両者の立場で考えてみたという。
だが商談を成功させるには、さらに重要な要素がある。「買い物客からこの値段では買わないと言われたら、それでおしまい」。そこで神岡さんは店頭価格を提案することからバイヤーとの話し合いを始めた。
安めに設定すれば、たくさん売れる可能性はある。だがそれでは売り場と農家の利益が圧縮されてしまう。ここでポイントになるのは、深谷ネギのブランド価値。安売りをしなくても、消費者に受け入れられると判断した。

深谷ネギのブランド力が効果を発揮した
では道の駅への販売価格をどう設定するか。神岡さんはまず店頭価格をピン留めし、売れ残りがどれだけ発生する可能性があるかを試算した。ここまで計算したうえで、道の駅に販売価格を提案し、商談を成立させた。
それまで両店の担当者は深谷ネギを扱ったことがなかった。一方、神岡さんは地元の道の駅で深谷ネギを20年以上にわたり売ってきたベテランだ。この経験の差が、商談をスムーズに進めるうえで効果を発揮した。
ただし、より大切なのは、販売価格についての考え方だ。


















