店内には生産者のパネル
いちかわライスビジネスは設立が1994年。創業者で会長の市川稔(いちかわ・みのる)さんは設立の原点について「専業農家からコメを直接買い入れることで、他の業者と差の出る売り方をしようと思った」と語る。
新食糧法が施行され、コメの「作る自由」と「売る自由」が広がったのが翌95年。戦時中から続いた旧食糧管理制度がようやく廃止になり、コメの生産と流通の自由度が大きく増すタイミングを捉えての創業だった。
同社のコメ事業は多岐にわたる。メインの売り先は大手ECサイトで、飲食店などにも販売している。おむすびやコメの販売店を町田市で運営しているほか、コメに関わるビジネスの企画提案なども手がけている。
生産者とのつながりが一目でわかるのが、町田市の米穀店「米家きゅうさん」だ。店に入ると、腕の良さで知られる各地の農家のパネルが目に飛び込んでくる。その下には玄米の入った木箱。いまや珍しい量り売りだ。
価格は税込みで1キロ当たり1000円以上が中心。中には1500円を上回るものもある。最近の米価上昇で若干上げたが、普通のコメと比べると以前から高い。委託ではなく、店が在庫リスクを負う買い取り方式だ。
市川さんが強調するように「他がやらないことをやって差を出す」のが同社のポリシー。設立から30年余りの歴史は創意工夫の歩みでもある。

「米家きゅうさん」の店内の様子
「農家の顔の見えるコメ」を先駆的に販売
もともと市川さんは別のコメの販売会社を経営していた。そのとき疑問に思ったのが、コメの銘柄と産地、産年の3点を前面に出す販売が主流になってきたことだ。この3つが同じなら、違いは値段しかないからだ。
そこでもとの会社を商社に売却し、いちかわライスビジネスを立ち上げるときに目指したのが、「価格競争に巻き込まれない売り方」を確立することだった。そこで考えたのが、誰が作ったのかを前面に出す手法だった。
この点について、社長の市川晴久(いちかわ・はるひさ)さんは「誰がどうやって作ったコメで、そこにどんなストーリーがあるのかがわかる売り方に挑戦した」と解説する。先駆的な取り組みと言えるだろう。

農家の思いや栽培方法を前面に出して販売
仕入れ先の農家は、米袋の販売会社などのつてをたどって探した。その結果、農協などに頼らず「自分でコメを売ってみたい」と思っている農家が各地にいることがわかった。こうして農家とのネットワークを築いていった。
併せて始めたのが店頭精米だ。玄米を消費者の目の前で精米し、品質の高い状態でその場で袋に詰めて販売する。それを可能にするため店内に置ける小型の精米機を開発し、メーカーに委託して特注で製造してもらった。
店頭で精米するというアイデアは、他の米穀店向けに売り方の指導とセットで精米機を販売するビジネスにもつながった。外資系のスーパーが日本に進出したとき、玄米と精米機を合わせて販売したこともある。

小型の精米機
ECサイトの成長可能性に着目
時代の先を読む挑戦はさらに続く。20年余り前に食品のECサイトが本格的に登場したとき、その可能性に着目して取引をスタートさせた。

















