集落営農法人が支える山口県の農地。担い手不足が深刻に
山口県には、地域の農地を守るため農家が集まって農地の利用調整などを行なう「集落営農法人」が数多く存在しており、令和6年までに県内で303の法人が設立されています。もともと水田農家が多い山口県のなかでも、南部には工業地帯が広がっていたことから兼業の小規模農家が多く、全国でも早い段階から集落営農法人の形成が進んでいました。
しかし、平成中期ごろに設立された多くの法人では、高齢化による担い手不足が深刻化。県内の農業従事者の平均年齢は72.5歳と全国で最も高く、後継者の確保は喫緊の課題です。経営耕地別にみても、「田」「畑」は令和2年から令和7年にかけて大きく減少しています。5年後、10年後には減少幅がさらに広がる可能性があります。
(出典:農林業センサス2025)
新たな担い手として新規就農者の育成も進められていますが、経営能力を発揮するまでには時間がかかります。さらに、新規就農者を雇用できるだけの経営体力を待たない法人も少なくなく、担い手不足の解消は容易ではありません。
3か年計画で多様かつ継続的なプログラムを展開

企業参入支援に取り組む山口県庁・久保雄生氏、小橋口慎哉氏
そういった課題に対して山口県では、農地を守るための新たな担い手として「企業」の力に期待を寄せています。また、山口県の方針は「農業参入にはさまざまなスタイルがありますが、既存の組織や土地を生かしながら取り組んでいただく“土地利用型”に軸足を置き、受け入れ態勢を強化していく」ことを予定しています。
そこで参入に向けた支援メニューを策定し、令和7年度から3か年計画で企業の農業参入を後押しするための仕組みづくりを進めています。
①新規就業者等産地拡大促進事業
・農外企業参入等支援
農外参入法人等の機械・施設等の整備や参入に向けた取り組みを支援する
②やまぐち農業担い手の再編・発展支援システム構築事業
・やまぐち農業担い手の経営発展支援事業
再編や統合等を経て、企業的な経営に取り組む際の機械・施設の導入を支援する
ただし、参入を促進するためには受け入れ側の課題解決も必要です。
農業経営は地域資源(農地・水路・農道など)を共同利用する産業のため、受け入れ側の地域との関係構築も重要な課題となります。企業と地域の歩み寄りが上手くいかないと、参入側も受け入れ側も双方が負担を負うことになるため、両者の合意や共通認識が重要です。そのため山口県では企業側・地域側への情報発信も手厚く実施していきます。
▼令和7年度
・県内19の市町の中から、モデルとなる地域を選定。
・主に県内企業へのヒアリングを実施し、農業参入に関する意向を把握。
→農業参入候補企業(農業生産、サービス事業)、作業支援候補企業(兼業副業、ボランティア等)の選定
▼令和8年度
・農業参入に関心のある企業を対象に、セミナーの実施。
・企業とモデル地域とのガイダンス、意見交換を開催。
▼令和9年度
・県外企業を招き、産地見学ツアーを実施。受入れ。
山口県では、こうした取り組みを通じて、単に企業を誘致するだけではなく、継続的に企業を受け入れられる仕組みを構築することを目指しています。

令和8年2月におこなった研修会では参加者からも質問が相次いだ
専門家によるきめ細かい支援で”山口モデル”を構築
また、この取り組みにおいて重要な役割を果たしているのが、モデルコーディネーターとして参画しているFOODBOX株式会社です。全国各地で農業への新規参入や経営計画の策定などを行っている同社が、今回の山口県の農業参入に向けた取り組みを全面的に支えています。

FOODBOX株式会社 CEO・中村圭佑氏
同社CEOの中村圭佑さんは次のように語ります。
「企業受け入れに必要な仕組みづくりについて、計画段階から参加しました。市町へのアンケート作成、農地情報の取りまとめ、他自治体での事例を紹介する研修会の開催など、幅広いサポートを行っています。」(中村氏)
2026年2月に開催した研修会では、中村さん自身が企業の農業参入の全国動向について講演したほか、企業参入に積極的に取り組む大分県の担当者を招き、参入増加の背景や失敗しないためのポイントについて共有しました。

企業参入先進地・大分県の事例紹介
「山口県は、全国でも早い段階から集落営農法人の導入を進めてきた自治体です。次の世代へ法人等担い手の農地と経営を引き継ぐために、企業という外部の力を取り入れた新たな法人モデル=”山口モデル”を全国に先駆けて構築できるのではないかと期待しています。」(中村氏)
現在は、アンケート調査などから得た農地に関する情報を、県・市町・関係者間で共有できる仕組みづくりを進めています。この仕組みが整えば、企業から県に相談があった際に、
・どの市町と結びつけると良いか
・どの産地と結びつけると良いか
・どの農地がマッチするか
・どの法人と連携できるか
といったコーディネートをスムーズに行えるようになります。相談内容についても、県・市町などで共有し、最適な農地や品目、連携先を検討する流れをつくることを目指しています。
自然環境・交通アクセス・人材が揃う山口県へ
山口県の独自性は、他にもあります。集落営農法人が多く、農地や農業機械、付帯設備などが一定の規模でまとまっているため、参入企業にとっては農地調整の負担が軽減され、既存のノウハウを引き継ぎやすいというメリットがあります。
また、新幹線や高速道路が県内を東西に貫き、交通網が整備されている点も見逃せません。県の東西には、九州地方の中心である福岡県と中国地方の中心である広島県が位置しており、大きな消費地へアクセスしやすい環境が整っています。
さらに、北部の日本海側、中央の中山間地域、南部の瀬戸内海側と、3つの異なる気候帯を有しているほか、台風や地震のリスクが小さいことから、地域ごとに特徴のある農産物が生産されています。参入企業の希望に応じて、多様な農業スタイルを選択することができるのもメリットです。
担い手育成の面では、農業大学校において新規就農者向けの社会人研修を実施しています。例えば、農業参入を目指す企業の社員が、企業に籍を置いたまま1年間のフルタイム研修を受けることも可能です。さらに、より受講しやすい環境を整えるため、令和8年度からは、週末を中心にイチゴ・アスパラガス専門コースで年間約50日間、水稲専門コースで23日間の、集中的に学べる新たな研修プログラムも予定されています。
ここまで見てきたように、山口県では、参入にかかるハード面・ソフト面の両面で手厚い体制整備を進めています。また、企業を誘致して終わりではなく、参入側も受け入れ側も両者が持続可能な農業経営の実現に向けて継続的な支援を行っていくとのことです。
これからの山口県の取り組みに目が離せません。
◆ご案内
企業へのヒアリングから見えてきたのは、「農業に関する情報がほとんど届いていない」という現状の課題です。だからこそ、山口県では最初の段階で「入口の見える化」を行なうことが重要であると考えています。農業参入に興味をお持ちの企業の方は、ぜひ山口県農林水産部農業振興課までご相談ください。
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電話:083-933-3375
Email:a17300@pref.yamaguchi.lg.jp
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