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本能の力で害獣を忌避! 日本犬の尿で「自家製ウルフピー」を作ってみた!

本能の力で害獣を忌避! 日本犬の尿で「自家製ウルフピー」を作ってみた!

ハイイロオオカミの尿を使った動物よけとして注目を集めている「ウルフピー®」。防護したいエリアの周囲に吊り下げることで、シカやイノシシ、クマなどの天敵であるオオカミの「ナワバリ」を疑似的に作り出し、野生動物を遠ざけるというものです。
ならば、オオカミと遺伝子が近いという研究結果が出ている「日本犬」の尿はどうなのか? 甲斐犬ブリーダーでもあり、狩猟免許も持つ筆者が、甲斐犬の尿で自家製ウルフピーを作成! イノシシが頻繁に来るという梅畑で効果を検証してみました。

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日本犬はオオカミと遺伝子的に近い!

灰色オオカミ

犬に近い野生動物にはオオカミの他にもドールやリカオン、コヨーテなどがいますが、DNAの塩基配列の解析などから、ハイイロオオカミが最も犬に近いという研究結果が出ています。

さらに、世界中の研究者たちがさまざまな種類の犬とオオカミの遺伝子を比較したところ、他の犬種と大きく分類される集団「アンシェントクラスター」が16犬種発見されました。

その16犬種の中でもっともオオカミに近い4犬種のクラスターには、柴犬と秋田犬が含まれています。

そもそも、日本犬は洋犬に比べてブリーディングの歴史が浅く、だからこそ原始的な遺伝子が残っているとも考えられています。日本犬の尿を使った自家製ウルフピー、効果があってもおかしくないのではないでしょうか。

甲斐犬とはどんな犬?

狩猟に同行する甲斐犬

今季から山に同行している黒虎の若いオス。藪の中や林の中を探索し、何もいなければ一度戻ってきて教えてくれる

さて、そんな日本犬の中でも今回筆者が検証に使ったのが「甲斐犬」です。

甲斐犬とは、山梨県を原産地とする地犬で、日本犬の中では秋田犬に次いで2番目に天然記念物に指定されました。

黒っぽい「黒虎」や赤茶色の「赤虎」など、色味に差こそあるものの、犬種全体に虎毛があるのが特徴です。また、他の日本犬と比べると耳が大きく、飛節(人間でいうかかと)の角度が深いため、獲物の気配を追い、急な斜面や崖も軽々と飛び越えて行く身体能力の高さを持っています。

かつては山岳地帯で主にカモシカやクマ猟に使われており、主の前へ獲物を出したり、撃てる場所へ追い立てて主を待つといった連携プレーが得意。自分より強い相手に自ら飛び掛かるようなことはまずしませんが、これは命を最も大切にする=野生が強い証拠だと筆者は思っています。

甲斐犬にウルフピーを嗅がせるとどうなる?

ちなみに正規品のウルフピー®ですが、犬除けにもなると書かれていたので我が家の甲斐犬たちに嗅がせてみました。

「小型犬なら怖がって近付かないことや、大型犬なら警戒して吠えることがある」と公式サイトに書かれていましたが、灰色オオカミの尿にどんな反応をするのでしょう。

結果は……

ほぼ全員が舐めようとして必死でした。

ウルフピーの匂いを嗅ぐ甲斐犬

隙間から舌を出して何とか舐めようとがぶりより。あまり見たことのない表情になっていますがどういう感情なのか……

吠えるでもなく警戒するでもなく、無言で舌を出して「とにかく嗅ぎたい!」「舐めたい!」という様子。

ウルフピーは季節によって匂いも違うそうですが、もしかして発情期のメスの尿だったのかと思ってしまうほどです。(発情期はオスはもちろん、メス同士でも匂いが気になるのか、お尻を嗅いだり舐めたりします)

怯えるどころか同族の尿と思っている節もあるので、これなら甲斐犬の尿も効くのではないかと期待が高まります。

【検証1】甲斐犬の尿をしみこませた棒で自家製ウルフピーを作る

イチジクの枝で自家製ウルフピーを作る

犬がよくおしっこをかけている板の前に棒を並べることで効率よく尿を浸透させることができた

自家製ウルフピーの作り方ですが、実際のウルフピー®の使い方である「30~60cmの高さに吊り下げる」という状況に似たものを考えてみました。

ちょうど伐採した庭木の枝がたくさんあったので、60~70cmくらいの枝の先端20cmほどの範囲にナイフでたくさん切り込みを入れ、犬たちにおしっこをかけてもらって沁み込ませます。

この棒を、切り込みがある方(尿が沁み込んだ方)を上にして畑に差してみようと思います。地面に15cmほど差し込むことを想定しており、そうすると45~55cmくらいの高さに切り込み部分が来ることになります。

イチジクの枝、アタリかも? ウルフピー®と匂いが近い!

枝に吊り下げたウルフピー

ウルフピー®のハンギングタイプ。中にハイイロオオカミの尿を染み込ませたシートが入っており、畑や庭の周囲にぶら下げて使用する

今回使ったのはイチジクの枝だったのですが、ウルフピー®を甲斐犬たちに嗅がせたときに筆者も匂いを嗅いでみました。

すると、刺激臭の中になんだか果実系のフルーティーな香りが……。そう、まさにイチジクの枝の匂いと同じような香りを感じるのです。

尿が採集された時期や個体によるのかもしれませんが、オオカミもブルーベリーなどの果実を食べることがあるそうなので、犬の尿+イチジクでもしかするとよりウルフピー®に近いものができるかもしれません。

イチジク食べる甲斐犬

余談ですが、我が家の甲斐犬たちの中にもイチジク好きな個体が半数ほどいます。枝を手で引き寄せ、口でもぎ取って食べる姿はクマのようです。

世界的に見ても原種に近いとされている日本犬のこうした姿を見ていると、野生のオオカミも季節の恵みを堪能しているのかなと思わせられます。

犬たちにも3日前からイノシシ肉を与えてみる

イノシシ肉を混ぜたドッグフード

イノシシの羽子板や背骨、大腿骨などを圧力鍋で柔らかくしてからスープごと与える

もう一つ、尿の匂いに影響するかもしれないと思って、甲斐犬たちには尿を採集する3日前からエサにイノシシの肉や骨を追加して与えてみました。

実は、かつて畑に甲斐犬の糞を混ぜたたい肥を入れたことがあり、筆者の畑だけピタッと線を引いたようにイノシシが入らなかったことがあります。

その時もイノシシやシカをよくあげていたので、関係があるかどうかはわからないのですが、どうせなら効果を最大限に狙おうということで今回も準備に組み込みました。

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【検証2】イノシシ被害のある梅畑に自家製ウルフピーを設置

イノシシが来る梅畑

検証に協力してもらえることになった梅畑。来た時の足跡が分かるよう、自家製ウルフピーを立てる前にYさんが畑の周囲と梅の木の周囲に耕運機を掛けてくれた

イチジクの枝に甲斐犬の尿を掛けさせ続けること一週間。先輩猟師のYさんが、わなを頼まれている梅畑の持ち主に許可を取ってくれて、いよいよ検証開始です。

上の写真の通り山に面した梅畑で、初めてお邪魔したときは一面イノシシの堀跡だらけでした。畑へ降りるけもの道が少なくとも8本はあり、わなを掛けても違う場所から下りてきます。

Yさんはここで一度イノシシを捕まえたそうですが、それ以来ピタッと掛からなくなったそう。警戒心が強く、頭もいい個体がいるようです。
自家製ウルフピー

尿が特にしっかりかかった4本を厳選して、1本の梅の木の周囲を囲むように設置してみました。

ウルフピー®は3~6m間隔で吊り下げるのですが、自家製ウルフピーは尿そのものではなく、尿を掛けた期間も一週間とそこまで長いわけではないので、2m間隔くらいにしています。

【検証3】二日目は雪。さっそく足跡が!

ウルフピー検証1

①奥の梅畑から手前に下りてきた小さめの足跡 ②棒の手前を鼻で掘ったような痕跡もある

自家製ウルフピーを設置した翌日は雪で、梅畑にも薄く積もっていました。

もし何かが来ていたら足跡が分かりやすいのではと期待していたら、まさに自家製ウルフピーを立てた梅の木に向かってやってきた小さな足跡が! しかも、棒の手前を少し掘り返し、そのまま立ち去っています。

棒そのものを怪しいと感じているのか、匂いを嫌がっているのか……。もし棒そのものを怪しいと思っているだけなら、3日もすれば慣れてしまうはず。

観察を続けてみることにします。

【検証4】一週間後、イノシシから宣戦布告!? 自家製ウルフピーが倒された!

検証開始から一週間。この間、自家製ウルフピーを立てた梅の木がある畑の一段上には出入りの気配があったものの、検証中の畑には雪の日以降変化はありませんでした。
ところがちょうど一週間後、ついに大きな変化が起こります。

検証している梅の木がある畑の外周に大小の足跡が現われ、なんと自家製ウルフピー2本を倒していたのです。

イノシシに倒された自家製ウルフピー

意を決したように自家製ウルフピーに向かって伸びる足跡。その先で自家製ウルフピーが2本倒されていた

一週間は動きがなかったこと、その後わざわざ棒を倒しに来たところを見ると、やはり匂いを意識していると言えるのではないでしょうか。

棒は倒したが円の中には入っていない。周辺を少し探って去っている

自家製ウルフピーを倒されたとはいえ、まだ効果は続いているようです。

棒を2本倒したにもかかわらず、棒に囲まれた梅の木の周囲には踏み込んでおらず、周辺を少し鼻で掘って去っているのです。

イノシシがミミズなどのエサを探して堀った跡は、まさに「荒らした」という言葉がぴったりのデコボコな地面になるのですが、すーっと鼻先で線を引いただけ。なんとなく落ち着かないのでしょうか。

イノシシの掘った跡

自家製ウルフピーを倒したのとは別の足跡が外周を掘っているものの、以前のようにめちゃくちゃに掘り荒らしているわけではない

【検証5】自家製ウルフピーを立てて2週間後、梅畑はどうなった?

自家製ウルフピー検証二週間目

左側の赤丸が自家製ウルフピーを立てている梅の木で、右側は周囲にたい肥を入れた梅の木。手前の地面に走る線は、新しくできたイノシシの掘り跡

自家製ウルフピーを立ててから2週間以上が経過し、周辺にはちらほらと足跡や掘り跡が付くようになってきました。

しかし、実はいまだに自家製ウルフピーの円の中は荒らされていません。一度、棒の間隔が広い場所に踏み込んだ足跡はあったものの、荒らさずに引き返していました。

糞を使ったたい肥をほかの梅の木にも入れてみたら…

甲斐犬のたい肥を入れた畑の手前で止まるイノシシの足跡

梅の木をぐるりと囲むように耕運機でならした地面の下に甲斐犬のたい肥を入れてある。写真左側から来た足跡がピタリと止まっていた

途中でもう一つ検証をしており、ほかの梅の木に甲斐犬の糞と腐葉土を混ぜたたい肥※をぐるりと囲むように入れてみました。ここもピタリと手前で足跡が止まっています。

以前、筆者が自分の畑で見たのと同じような現象が起きているため、やはり日本犬の糞や尿は野生動物の忌避剤として、一定の効果があると考えられそうです。

※地面に直接糞や尿を撒く場合は、土と混ぜて発酵・分解させるなどしないと作物に悪影響を及ぼす可能性があります

まとめ

検証中に雨や雪が降ったこともあり、もって一週間くらいかもと思っていた自家製ウルフピーですが、意外にも二週間以上効果が続いており、今なお記録を更新中です。

二段の梅畑が、甲斐犬の尿を沁み込ませたたった4本のイチジクの棒と漬物樽一杯分の糞で守られていると考えると、なかなかの効果ではないでしょうか。

害獣に悩まされている農家さん、もしも日本犬を飼っているならコスパ抜群でサステナブルな「愛犬ウルフピー」を試してみてはいかがでしょう。

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