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初めてでもできる! アイガモ農法実践記【DIY的半農生活Vol.45】

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

初めてでもできる! アイガモ農法実践記【DIY的半農生活Vol.45】

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約3.5反(35アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。今年も、間もなく田んぼの季節がやってくる。わが家の無農薬・無化学肥料の田んぼで主役を張るのが、数十羽のアイガモだ。雑草や害虫を食べてくれるだけでなく、水面を動き回ることで水と土がかき混ぜられ、土壌に酸素も供給される。人が手を掛けて除草をしなくても楽に草を抑えられ、イネもよく育つ。小規模稲作にも向くアイガモ農法をご紹介しよう。

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アイガモ農法の効果

3年前にアイガモ農法を始めた。水田にアイガモを放すことで草を抑える農法だ。アイガモ農法に期待できる効果は、主に4つある。

1. 除草
アイガモが雑草やその種を食べてくれるので、草の発生を抑えられる。

2. 害虫防除
ウンカ類やイナゴなど、イネの害虫を食べてくれる。

3. 中耕・濁水効果
アイガモが泳ぎ回ることで土がかき混ぜられ、土壌や水に酸素が供給される。また、土が舞い上がって水が濁ることで地表に届く日光が遮られ、雑草の発芽や成長を抑えられる。

4. 肥料の供給
アイガモのフンが、そのまま天然の有機肥料になる。

田んぼの中をアイガモが動き回ることで草の発生が抑えられる

アイガモ農法について、私がはっきりと言えるのは、今のところ実にうまくいっているということだ。特に、除草については完璧に近い。それまでせっせと田車(手押し式の水田除草器具)を転がしていたのが、ばからしくなるくらい楽に草が抑えられるのだ。
米の無農薬・無化学肥料栽培で草を抑える方法は、ほかにもいろいろあるのだろうが、私は今のところ、このアイガモ農法が気に入っている。

ヒナを放し、イネと一緒に育てていく

田んぼを始めて今年で6年目になるが、アイガモ農法を始めるまでは、とにかく除草に苦労した。最初に借りた田んぼは3.5反あり、1年目、2年目は完全に草に負けた。
3年目からは、毎朝1時間の田車除草を徹底し、ほぼ草を抑えることはできたが、それは結構なトレーニングだ。田車で重い泥をかき混ぜながら、水田の中をウォーキングするのだからね。気持ちのいい自然の中で足腰が鍛えられるぜ。

田車による除草。前後させることで回転する爪が土壌をかき混ぜ、草をこそげとる

そんなアウトドア・アクティビティーも嫌いではないのだが、数日除草をさぼると、すぐに草が生えてきてしまう。気が抜けないのは嫌だし、トレーニングには休息も必要でしょ。もう少しほかにいい方法はないものかと、いろいろ調べて興味を持ったのが、アイガモ農法なんだ。

アイガモ農法は、古くはアヒルを田に放して同じように行われていたようだが、現在のスタイルは、1990年代に福岡県の農家、古野隆雄(ふるの・たかお)さんによって広められたと言われている。具体的には、次の2つの点が画期的だった。

1. カモの選定
アヒルと野生のマガモを交配させたアイガモを採用。アヒルより小型で、身軽で、イネを倒しにくい。

2. 技術のシステム化
単にアイガモを田に放すのではなく、ヒナを放す時期と引き上げる時期、放鳥数、外敵対策、役割・効果、水管理などをマニュアル化し、再現性の高い「農法」としてシステム化した。

当初の苦労は、アイガモ農法について記された古野さんの著書からもうかがえるが、おかげで今日では、私のような稲作の素人でも気軽に取り組めるようになったことに感謝したい。
とはいえ、そのやり方がそのまま誰にでもマッチするわけではない。環境や規模によっても異なるし、その人なりによりよいと思える方法があれば、それを試してみればいい。

アイガモ農法と聞いて、多くの人は単純に、アイガモが水田を動き回っている光景を思い浮かべるが、そのアイガモがじつはヒナであることは、この農法に取り組んだことがない人には、意外と知られていない。少なくとも私は知らなかった。
田植えをしたばかりの田んぼに成鳥を放せば、弱々しい苗は倒され、食べられてしまう。だからヒナを放す。アイガモとイネを一緒に育てていくイメージである。

田植え後1週間〜10日でヒナを放鳥する。イネの成長に合わせてカモも大きくなっていく

田植えの日を目安にヒナを入手する

アイガモのヒナは“ふ化場”で入手できる。スマホやパソコンでAIに聞くか、ネットで検索すれば、全国のふ化場をピックアップできる。
私がヒナを入手しているふ化場では、注文すると指定した日に宅配便の営業所止めでヒナが届く。到着日は、田植えの前後1〜2日が目安だ。それから1週間から10日ほどかけてヒナを水に慣らし、苗が根付いた頃に放鳥する。放鳥は、早いと苗が根付いておらず倒されてしまうし、遅いと草が生え始めてしまうので、時期がとても重要だ。
アイガモのヒナは1羽600〜700円(価格はふ化場に確認)。放鳥数は、1反(10アール)に15羽程度とされている。

そのとき借りていた田んぼの広さは3.5反あったが、初めてですべてをアイガモ農法でやるのはリスクが高い。そこで0.5反ほどをアイガモ区画としてネットで囲い、最初の年は10羽注文した。

専用の箱に入って宅配便でヒナが届く。みんな元気そう

鳥類は、おそらくすべてそうだと思うのだが、ふ化したばかりのヒナは、卵黄から栄養と水分を吸収しているため、2〜3日はエサや水を摂取しなくても生存できる。そのため、通常、ヒナの発送はふ化後24時間以内に行われる。営業所に到着したら、すぐに引き取ってエサや水を与えれば、ヒナの健康を維持できる。

段ボールに入って届いた10羽のヒナは、育雛(いくすう)箱(衣装ケースや木箱など、何でもよい)に移し、保温用の白熱電球を設置しておく。エサは、市販のヒナ用(ニワトリや小鳥用)であれば栄養価が高い。私は米ぬかやくず米、野菜くずでまかなっている。
ヒナは1週間から10日で田んぼに放鳥するが、その間の管理には、じつに気を使う。どんな生き物でもそうだが、生まれたばかりの個体は、何しろ弱々しい。

1羽で震えているのがいたら危険信号

アイガモのヒナの場合、特に温度管理が難しい。まだ体温調整がうまくできないこともあり、体が冷えると、すぐに弱ってしまう。気温が下がる夜間は、電球の下でおしくらまんじゅうをするように押し合いへし合いしているが、体が小さく弱いやつは外にはじき出され、震えている。そういうヒナは保護して別の箱に移し、少し過保護に育ててやるのだが、後述する水慣らしや田んぼへの放鳥から間もなく、環境に適応できず、弱ってしまうことが少なくない。

寒いと電球の下で固まっている

ヒナを水に慣らす

ヒナが届いた翌日から水慣らしをする。田んぼに放鳥する前のウォータートレーニングだ。
アイガモのような水鳥の多くは、尾の付け根あたりに「尾脂腺」という器官があり、そこから分泌される脂質を使って毛繕いすることで、羽毛に撥水性や防水性を持たせることができる。毛繕いがうまくできないと体が濡れ、体温を奪われてしまうため、水鳥として生きていけない。
数羽であれば、水慣らしは、たらいのような容器に水を入れてプールを作り、その中にヒナを放してやればいい。ヒナが水から上がれるように、陸地も作っておくこと。

水慣らしは日中の暖かい時間に行うのがよい。容器に水を入れ、陸地も作っておく

水慣らしは、1日2〜3回、数分程度から始め、徐々に時間を延ばしていく。うまく毛繕いができないやつが必ずいるので、特に最初の数日は目を離さないようにする。水から上がれないやつや、震えているやつがいたら、タオルで拭いてやり、場合によっては、ドライヤーを当てるなどして乾かしてやる。

うまく毛繕いできないやつは、そのままにしておくと濡れた体が冷えてしまうので、ドライヤーを当てて乾かしてやる。そのうち毛繕いできるようになる

最初は、うまく毛繕いができなかったヒナも、1週間ほどトレーニングすれば、羽毛の上を水玉がコロコロと転がるようになる。そうなったら、いよいよ田んぼに放鳥だ。

田んぼをネットや電気柵で囲う

アイガモ農法では、放鳥したアイガモがどこかに行ってしまわないよう、田んぼをネットや電気柵で囲わなくてはいけない。この作業に、少し手間がかかる。田んぼが広いとなお大変だ。
アイガモは高く飛翔できないので、飛んで逃げる心配はないのだが、上空からカラスやトンビに襲われる恐れがあるので、テグスは張ったほうがよい。

1〜2メートル間隔でテグスを張り、上空からの敵を防ぐ

ネットや電気柵は、イタチやハクビシンなどの害獣対策としても必須である。どちらがいいかは、環境ややり方によっても異なるし、併用するのが望ましいのかもしれないが、私の田んぼはネットだけだ。
アイガモ区画を囲むように、約2メートル間隔で杭を打ち、それに高さ1.5メートルのネットを固定している。ネットの裾は、土にしっかり埋めること。隙間(すきま)があると、イタチが侵入する。アオダイショウやヤマカガシなどのヘビも天敵である。鳥よけのテグスは、柵の支柱を利用して張るとよい。

田んぼの周囲をネットで囲み、裾は土の中に埋める。ちなみに、2年目は田んぼを借り替えて、約1反の田んぼ2枚になったので、1枚を田車除草、もう1枚をアイガモ農法で行った

田んぼの中には陸地がないので、アイガモが水から上がって休むための小屋も作った。小屋といっても、畳1枚ほどの床を設け、四隅に柱を立て、トタンの屋根を載せただけだ。
特にヒナのうちは、体が冷えるとすぐに弱ってしまうので、気温が下がる夜や冷たい雨の日に、体を濡らさずに休める場所を作っておいたほうがいい。

床と屋根だけの簡易的な小屋

放鳥後はほぼ放任。出穂前に回収してお役御免

1週間ほどかけて、しっかりウォータートレーニングを積んだアイガモのヒナたちは、田んぼに放すと、いきいきと泳ぎ回り、くちばしを水の中に突っ込んでエサを探し始める。
アイガモは群れで行動するので、意図せずはぐれてしまわない限り、1羽でどこかに行ってしまうようなことはない。
放鳥後もしばらくは、1日1回エサをやっていたが、田んぼで自活できているようだったので、そのうちやらなくなった。本当のことを言えば、エサをやっていたのは、役目が終わったあと、回収しやすいように人慣れさせるためだったのだが、これはうまくいかなかった。

放鳥後は、自然の環境に慣れるまで、数日は、1日に何回かまめに様子を見たほうがいい。体が濡れてしまったヒナや、環境になじめず弱っているヒナを見つけたら、家に持って帰って温めてやり、体力を回復させてやらないと、死んでしまう。
10日もすれば、体もぐっと大きくなり、もう安心して見ていられる。イネが出穂する頃に回収するまで、基本的には放任だ。アイガモが田んぼの中を活発に動き回ることで、草は、ほぼ完璧に抑えられる。

常に固まって行動する。水の中に頭を突っ込んでエサを探す習性がある

通常、稲作で行う中干しは、わが家ではやっていない。水鳥であるアイガモの環境を維持するためでもあるが、アイガモが泳ぎ回ることで土がかき混ぜられ、中干しの目的である土壌への酸素の供給が、それでできてしまうからだ。
イネが大きく育ち、水面に光が届きにくくなると、草も生えにくくなる。その頃には、アイガモもヒナの面影はなく、見た目は立派なカモである。
そのまま田んぼに入れておくと、イネを倒したり、出穂した穂を食べたりするので、その前に回収して、お役御免。締めて、お肉にしちゃいます。

ただ、回収に関しては、まだうまい方法が見つかっていない。エサでおびき寄せたり、田んぼの隅に追い詰めたりして、1羽ずつ捕まえているが、アイガモも仲間が減ってくると警戒心が強くなり、なかなか捕まえられなくなる。
田んぼでカモを追っている光景は、はたから見ると、かなり滑稽(こっけい)だ。足元は、ぬちゃぬちゃのどろどろで、捕まえたと思ったら、手元をすり抜けて逃げられたりして、いいようにもてあそばれている。
「かもとりごんべえ」よろしく、夜中に寝ているカモに1羽1羽縄をかけて、一網打尽にできればいいのだが……。何かいい方法はないだろうか。

回収したいのだが、捕まえようと思うとイネの森に隠れてしまう。田んぼの中では人間よりカモのほうが上手だ

そうそう、今春、自給菜園と稲作をテーマにした講座を企画しています。
わが家の自給的暮らしをちょっとだけ公開しちゃいます。
興味のある方はこちらをご覧ください。

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