・協議会長:(株)リブル 高畑 拓弥さん
・場所:大分県
・輸出先:ベトナム・中東・インドネシア・タイ
日本スマートオイスター輸出連携協議会について
産地連携とデータドリブンで世界市場に挑む

(株)リブルの牡蠣
事業を先導するのは(株)リブル取締役COOであり同協議会の代表を務める高畑拓弥さんです。(株)リブルは、徳島県を拠点に三倍体種苗の生産で年間1,500万貝の生産能力を持つ業界大手。三倍体シングルシードの生産量でも高いシェアを誇ります。
年間100万個の牡蠣を生産する同社では、IoTスマート牡蠣養殖支援システム『Oysmart(オイスマート)』(※1)の開発・運用により、パートナー漁場ともデータ連携しながら、牡蠣養殖の現場で最適な生育管理や作業効率化を支えています。同システムは、2023年度「内閣府ディスカバー農林漁村の宝アワード」で、スマート水産業賞を受賞しました。
※1:株式会社リブルが開発した、IoT技術を活用するシングルシード方式のスマート牡蠣(カキ)養殖システムです。海洋環境データや牡蠣の成長・在庫状況を自動記録し、AI分析で作業計画や歩留まりを改善する等が可能なアプリです。
一方、輸出市場における日本産の活き牡蠣は、拡大の可能性があるにも関わらず、小規模生産者が多いことから、大ロット輸出に適した生産・流通モデルが確立されていません。海外の衛生規制への対応や安定供給のための品質管理体制も十分とはいえず、解決すべき課題が山積していた状態にありました。

100万個規模での生産体制を構築できた背景には、漁場の特性やデータ分析をベースに種苗選定を行うなど、『Oysmart』によるデータに基づいた養殖体制を構築できたから。同システムは約20の自治体や水産漁業団体にも導入されており、システムの活用で生育管理までコントロールできれば、大ロット輸出を実現できるのではと事業が動き出しました。

日本スマートオイスター輸出連携協議会の実施体制
日本スマートオイスター輸出連携協議会の取組内容
ダッシュボードの追加や海外輸出拠点の構築で大ロット輸出に備える

シングルシード養殖の様子
本事業では、
①生産拠点の強化とパートナー漁場の拡大
②品質管理と輸送適性の向上
③輸出促進と販路拡大
の大きく3つを目指しました。
まずは、輸出ニーズにある大ロット供給を実現するため、小規模生産者との連携を強化するとともに、生産者の経験則や感覚による数値や予測ではなく、産地ごとの養殖手法や数量、生育環境などをデータ化することで、歩留りやリスク推定までカバーできるよう『Oysmart2.0』の開発に着手しました。生育状況やリスク推定に応じた出荷予測ができるようデータを可視化することで、最適な管理体制に繋げています。
また、産地連携では養殖地が分散していることで輸送コストがかかるため、本事業では(株)リブル中津支店の第3漁場を輸出拠点とし、大規模出荷に対応できる資材を投入。別事業で導入した浄化ユニットで、輸出基準を満たす生食用牡蠣を安定的に出荷できる体制を整えました。さらに、シングルシード養殖の普及に向けて、4,500個のレンタル用バスケット(約45万貝分)を購入。今年度は、愛媛県愛南町と連携し、来年度以降も新たな産地との協業を計画しています。

各バスケットを回収していく様子
瀬戸内海を中心に牡蠣の大量死が問題視されている今、2025年9月に資材投入を行い、2026年1月の時点で過去最高の生育成績を達成するなど、順調な立上げができているのは、本事業で『Oysmart2.0』を開発できたことも大きく影響しています。新機能追加となるダッシュボードの開発により、いつ、どの種苗を投入し、どれだけの生育ができているかのデータを見える化。どの時期に何パーセント水温が上がるなどの環境モニタリングと並行して分析できることで、生育の最適管理やリスク回避ができていると確かな手応えを感じています。
親和性の高いインフルエンサーマーケティングで商談数を獲得
販路形成でも、海外展示会に出展するほか、バイヤーの招聘や現地訪問を実施。計画段階からターゲット国にしていたドバイやベトナムに加え、タイ、インドネシア、台湾とも商談を重ねているところです。
本事業では、従来のように展示会に出展するだけでは、押しの弱さがあるだろうと、現地のコアなターゲット層を狙い、インフルエンサーマーケティングにチャレンジ。ベトナムで実装した結果、7件の新規商談を獲得し、飲食店やインポーターとの直接、個別のアポイントに繋げることができました。
世界120カ国以上から約5,000社が出展するドバイの『Gulfood(ガルフード)』でも、事前にインフルエンサーや現地語のLPでリリースを発信。事前に8件の商談予約を得るなど、事業費によりチャレンジできたことで、大きな成果が得られました。

依頼した海外インフルエンサー
「国内であれば、インフルエンサーマーケティングのイメージを持ちやすいですが、海外でのブランディングは手探り状態。現地情報が乏しければ、単価も上げられないですし、交渉力も弱くなります。BtoBではなくBtoCを狙う逆ブランディングにより、海外でのマーケット力を高められる実証ができたことも大きいですね」と高畑さん。
展示会出展で成果が得られるか、懐疑的な部分もあったそうですが、新しい取組にチャレンジできたことで、ブランディングを含めたいろいろな営業アプローチをしていくべきだと感じたそうです。協議会の活動を通じて販路を強化できれば、支援先の漁場の販路形成にも繋げられます。
「輸出商社に丸投げするのではなく、生産者自ら持続的な輸出ができるよう取り組む必要があると考えています」と話していただきました。
日本スマートオイスター輸出連携協議会の今後の展望
産地連携強化により牡蠣養殖や輸出事業の持続的な発展・拡大を目指す

(株)リブルの牡蠣
今もなお、最大の課題は「輸出量の安定確保」です。品質への評価や引き合い件数は高まっていますが、大ロットの輸出体制をコントロールできなければ、飲食店サイドも定番メニューに載せられないため、一定量を継続的に供給できる体制が不可欠となります。物量を確保できる生産体系への転換に向け、産地連携の強化を進められている点も本事業の大きな成果だと高畑さんは感じています。

種苗メーカーとしても、苗種や環境による生育速度の違いやリスクを漁場ごとに管理できれば、量産モデルが自ずと見えてくると高畑さん。現時点で、親の系統が違えば、同じ時期に投入しても生育の歩留りが異なるなど、収益の最大化を目指すデータを蓄積することができています。さらに、10年後、20年後の海水温度の上昇は避けられないと考える今、大分のデータが何十年後の東北の漁場で役立つことを考えれば、産地連携の利点も高まると言います。
中津支店の第3漁場では、データを活用することで、昨年や一昨年に比べて生育率を17%上昇することができました。流通の効率化を検証するため、輸出商社の協力で活き牡蠣のサンプルをエアー便で輸出する試験も終えており、最低ロットの口数さえ確保できれば、コストメリットの最大化を図れるところまで実証済です。
本事業を通じて令和9年度までに輸出売上目標5千万円を目指す同協議会では、日本産牡蠣の持続可能な輸出モデルの確立を見据え、現在も国内各地で連携先を増やし、目標に向けて前進し続けています。
漁場の管理は若手が中心。データ分析に基づいたスマート養殖の実践により、新卒採用者も1年目から力を発揮できる環境が整います。ニーズが集中するのは、冷凍ではなく活き牡蠣。物流のマザー拠点となる中津漁場は国際線のある福岡空港まで近い利点もあります。


『Oysmart2.0 』のダッシュボード
シングルシードの牡蠣養殖を支援する『Oysmart』は、スマホでも簡単に記録可能。養殖作業計画の最適化を叶え、生産性の向上に貢献しています。『Oysmart2.0 』では分析速度が向上し、ダッシュボードで見える化を実現。データドリブンな養殖事業が可能に。稚貝の段階からバラバラな状態で過ごし、専用のバスケットを揺りかごに見立て、揺らしながら生産するシングルシード方式を採用しました。シングルシード方式で生育された牡蠣は、潮の満ち引きにより干出する際、貝が強く閉じる動作を行うため、貝柱が鍛えられ、食感が良くなる特徴があり、甘みや旨みが濃厚になります。


左から中津支店の西山さんと(株)リブル取締役COOの高畑さん。
実は小学校時代からの同級生という2人。
慶応義塾大学SFC卒業後、総合商社に入社。コーポレート業務から貿易のバックオフィスを経験後、(株)リブル取締役COOとして全体マネジメントを手がける高畑拓弥さん。













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