農場の展開へ地主や自治体と交渉
ふしちゃんは非農家出身の伏田直弘(ふしだ・なおひろ)さんが2015年に設立した。栽培方法で有機を選んだのは、他の農家と差を出しやすいと考えたからだ。創業時から農場を拡大することを目指していた。
農家の中には売上高1億円でさえ高すぎる目標と思う人がいるかもしれない。だが伏田さんは「2~3億円でも経営とはいえない」と話す。2026年2月期は約3億円で、次期の見通しは4億円。当面は10億円を目指す。
設立からずっとつくば市で農場を運営していたが、2025年に茨城県常陸太田市に進出し、ハウスは計113棟になった。1棟当たりの面積は2.5アールが標準。26年中につくば市でさらに28棟立てる計画だ。

常陸太田市のハウス
どこまで増やすつもりなのか。そう聞くと「360棟」という答えが返ってきた。漠然と答えた数字ではない。具体的な県名は伏せるが、すでに東北と東海地方のある地域で地主や行政と協議に入っている。
この計画が一通り実現した時点で想定する売上高が10億円。ではそれがゴールかというと、そうではない。伏田にとっては「ようやくスタートライン」。その先に本格的に取りに行くのは世界のマーケットだ。
「丸っこいシール」でつかんだ商機
ここで7年前に伏田さんに初めてインタビューしたときの言葉を改めて紹介しておこう。農業取材の中でとりわけ印象に残った言葉だ。
「あの丸っこいマークのシールが貼ってある野菜はそんなに多くない。マークの意味を消費者に知ってもらったうえで、一般的な農法で作った野菜と同じような値段で店頭に出せば、きっとこっちを買う」
ここで「丸っこいシール」は有機JASマークを指す。有機で栽培方法を確立し、認証を取得すれば事業の強みになるという発想だ。
その後の展開はこの言葉通りになった。有機農産物を求めるスーパーや百貨店などのニーズに量と品質の両面で応え、需要に生産量が追いつかないという状況を実現した。有機を推奨する農政も追い風になった。
誤解を避けるために触れておくと、伏田さんは決してビジネス一本やりの人ではない。多くの農家と同様、地域のことを大切に思っている。だからこそ、事業を大きくしてたくさんの雇用を生むべきだと考えているのだ。

有機JASのマーク
IPMを徹底して病害虫を防除
有機栽培の多くは小規模経営にとどまるのに、なぜ拡大路線を実現できたのか。その点について伏田さんは「有機の特徴は化学農薬を使えないこと。その条件のもとで、雑草や病害虫を防ぐ方法を使えばいい」と話す。
そう簡単に言われても、と戸惑う人もいるかもしれない。

















