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前例のない計画を動かした一鉢のブルーベリー。農業未経験から始めた海辺の観光農園が描く次の一手

前例のない計画を動かした一鉢のブルーベリー。農業未経験から始めた海辺の観光農園が描く次の一手

福島県いわき市の沿岸部で、ブルーベリー狩り、カフェ、直売を手掛ける「ブルーベリーファームいわき」。約3,000㎡の園地に16品種1,200株が並び、海風に揺れる貝殻の風鈴の音色が、訪れる人々に心地よく過ごせる空間であることを感じさせます。カフェでは冷たいスイーツのほか軽食なども提供しています。「地元の海に賑わいを取り戻したい」。代表の渡邊充彦さんは震災後に脱サラし、カフェ起業を目指すも方向転換。農業の経験もなければ、地域に前例もないなかで、技術、制度、農地の壁をどう越え、どんな場所をつくってきたのか。開園から4年の農園で話を聞きました。

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海辺の賑わいを取り戻す、カフェの夢から観光農園へ

海岸から近く風通りが気持ちいい場所にあるブルーベリーファームいわき

いわき市の中心部から東へ車を走らせて約15分。目指す農園は、海岸までおよそ500メートル、爽やかな海風を感じる田園風景の一角にあります。入口の木戸を押し開けると、芝生が広がるガーデンカフェ。天井の葦簀(よしず)と手づくりの造作が、海の家を思わせます。その奥にブルーベリー園が控えています。

「震災前は海水浴場があって、夏になると海の家が立ち並びました。子どものころは一日中海で遊んで、夕方には焼きそばを食べに行ったものです。高校を出てからはサーフィンをしに通いましたが、震災のあとはすっかり寂しくなりました。いまでも、波の音が怖くて海に近づけないという人がいます。もう一度、人でにぎわう場所をつくりたいと思いました」

そう振り返るのは、ブルーベリーファームいわき・代表の渡邊充彦さん。

震災から5年後、渡邊さんは勤めていた地元のガス会社を30歳で退職。地元にサーフカフェを開業しようと、修業のため神奈川県茅ヶ崎市へ移住しました。

ブルーベリーファームいわき代表の渡邊充彦さん

渡邊さん

いろんな現場を見たかったので、半年契約で店を替え、3年で6店舗を経験しました。店づくりやメニュー開発、オペレーションのノウハウを学びましたが、同時に飲食店経営の厳しさも見えてきました。それに、サーファーが集まる店では一般の人は入りにくい。地域の人が家族で立ち寄れる場所にしようと決めました

その矢先、台風被害で帰郷を1年延期。翌年にはコロナ禍で飲食業での起業を断念。会社員に戻ることも考え始めたころ、一冊の本に出会います。

そこに紹介されている、ブルーベリーの摘み取り体験にカフェを組み合わせた経営モデルに興味を持った渡邊さん。摘み取りの予約をし、著者が経営する愛知県の農園へ向かいます。

渡邊さん

ブルーベリーが、これほど甘く、大粒だとは思いませんでした。さらに驚いたのは、コロナ禍でも家族連れが摘み取りを楽しんでいたことです。観光農園とカフェを組み合わせれば、飲食店単体より多くの人を呼び込める。屋外なら密にもならないし、地元には活用できそうな農地もあります。これで点と点がつながりました

一度は断念したカフェの夢が、ブルーベリー農園という新たな形でよみがえります。

バッグカルチャーシステムで技術の壁を越える

渡邊さんが、愛知県の農園で経営モデルとあわせて知ったのが、オーシャン貿易の養液栽培「ブルーベリーバッグカルチャーシステム」です。特殊培地を入れたポットに養液を自動供給し、生育に適した根の環境を整える仕組み。水やりや施肥、草刈りなどの作業を省力化できるほか、通常は収穫まで4~5年かかるところを2年に短縮でき、早期の収益化も期待できます。

『オーシャン貿易』の詳細はこちら

『ブルーベリーバッグカルチャーシステム』の詳細はこちら

渡邊さん

栽培方法が確立されていて、土づくりもいらない。省力化できること、失敗が少ないこと、そしてわからないことは専門家にいつでも聞ける安心感。農業経験のない自分でも、これならやれるんじゃないかと思いました。

また、渡邊さんとしては、ブルーベリーバックカルチャーシステムの導入によって、栽培の負担を減らし、販売戦略やカフェ運営に注力したい。このシステムが経営を広げていく伴走者になるはずだという考えを持っていました。

渡邊さん

ただ、まったく学ばずに始めるのはさすがに不安です。愛知県に通うのは無理ですから、同じ養液栽培をやっている農園を近くで探したんです。

検索すると、神奈川県藤沢市に一軒あることがわかりました。その3日後、渡邊さんは摘み取り客として農園を訪れ、農園長に直談判。

「ブルーベリーの養液栽培をやりたいんです、アルバイトさせてください、と。募集はなかったんですが、シーズン後の9月に一人辞めるというので、入れ替わりで働き始めました。お金をもらいながら研修させてもらうかたちです。

前例がないならつくればいい!熱意で制度の壁を越える

藤沢での研修と並行して、渡邊さんはいわき市で「青年等就農計画の認定」を受ける準備を進めます。ところが、計画は遅々として進みません。

渡邊さん

認定新規就農者になれば、設備投資に補助制度が使えます。ただ神奈川で研修していわきで就農するという前例が市になくて、なかなか受理してもらえません。月に一度問い合わせても、返ってくるのは『検討中です』のひとこと。それが1年続きました。

本来は市が認めた場所で研修するのが筋ですが、そもそもいわきにブルーベリーの研修先はありません。市の就農支援は梨やネギ、水稲といった従来の作物が中心で、行政側にも養液栽培の知見がないため判断できない状態でした。

そんな壁を越えたのは渡邊さんの熱意です。

渡邊さん

資料や写真だけでは伝わらないと思ったんです。翌年の夏、研修先で収穫したブルーベリーと、実の付いた鉢を一つ車に積んで市役所の農政課へ持って行きました。県の担当者にも集まってもらって、その場で食べてもらいました。

とはいえ、当時はコロナ禍の真っただ中。直接会って話すこと自体のハードルが非常に高い中での挑戦でした。
プレゼン当日も、全員がマスク姿。表情が見えないため、自分の話が相手に伝わっているのか、手応えを感じることができません。反応がわからないまま話し続けなければならず、終始、不安を抱えていたといいます。

しかし、職員から出た「こんなに大粒で甘いのか。」の一言で、場の空気が変わったといいます。

そこから、栽培方法や収量の見通し、観光農園とカフェを組み合わせた経営計画を説明しました。その場にいた職員のひとりは、JAからの出向者で果樹栽培に明るい人でした。前例はないながらも前向きに捉えてくれたようです。
県外での研修を実績と認め、手続きを進める方針が決まります。1年動かなかった書類は、翌日から督促が届くようになりました。

前例がないなら、つくればいい。渡邊さんはそれを、言葉ではなく一鉢で示したのです。

残る課題は農地です。

渡邊さん

農地ならたくさんあると思っていましたが、立地にこだわりがあり、探すのは容易ではありませんでした。海に近すぎると潮風にやられますし、道路から入りにくいとお客さんが来ない。角地を選んで地主さんと直接交渉しました。まずは1,500㎡を借りて開園し、いまの約3,000㎡に広げています。

借りたのは、地元の方が離農した田んぼの跡地でした。ただし造成には農業委員会の許可が要り、盛り土できる範囲は当初1,500㎡分に限られます。生育が順調と確認されてから広げる条件つきのスタートでした。

初回に発注した苗木は1,200株。1,500㎡にすべてを収めるため、鉢はぎりぎりまで詰めて並べました。園内を歩くたびに寄せては戻しの繰り返しです。3,000㎡への拡大と第2ほ場の整備によって窮屈さは解消され、いまでは笑って話せる思い出のひとつです。

飲食修業の経験が実る。農園経営のビジョンとは

渡邊さん

農園は海の家をコンセプトにしたので、各地の海の家を実際に見て回りました。周りは見通しがよくて何もない。だから板塀で囲んで入口に木戸を設けました。ここだけは違う世界だと感じてほしかったんです。ガーデンカフェと農園の境は暖簾でゆるく仕切っています。料金をいただくエリアだからこそ、特別感はつくらないといけません。

入口の正面で暖簾が潮風になびくと、奥のブルーベリーが垣間見えます。受付を通って、その場所へ向かう。狙いどおり、別の世界に入る感覚がありました。

ちなみに園内の造作は、その大半がホームセンターの資材による手づくりです。2026年には受付とカウンター、ショーケースを新設し、2027年にはバーカウンターを予定しています。工事費をかけず、1年に一つずつ手を入れていく方法です。

カフェ起業を目指した渡邊さんならではの商品づくり

「農園の造りや動線に、飲食業を志した渡邊さんのセンスが生きています。潮風が涼しく、海を感じさせる他に類を見ない観光農園です」と話すのは、オーシャン貿易の前川さんです。

渡邊さんの戦略は農園づくりだけにとどまりません。

渡邊さん

ブルーベリーは摘み取りと直売でほぼ完売します。余剰が出たときは、自分で開拓した販路へ。野菜の直売コーナーを設けている眼科医院に卸します。オフシーズンは週末のイベントやマルシェで冷凍果実も売っています。栽培量を増やすだけでなく、売り先を確保しておくことも欠かせません。

2026年度にはECショップも開設しました。運営は渡邊さんと共同経営者を中心に、生産・出荷に2人、週末のカフェに2人を雇用する少人数体制です。カフェは誰が入っても回るよう、あえて調理手順をシンプルにする仕組みにしています。

内陸部に設けた約4,000㎡の第2ほ場には、2025年4月に追加融資を受けて400株の苗木とバッグカルチャーシステムを導入。生産と出荷を担う拠点として育苗を進めています。そして、バックカルチャーシステムを応用したイチジクとレモンの試験栽培も始めました。収穫期の異なる果樹を商品化できれば、営業期間を延ばせます。イチジクはかつて渡邊さんの祖父母が育てていた果樹でもあります。

2025年度の売り上げの内訳は、園内での直販が5割、摘み取りとカフェが残りの半々。6月から8月までの3カ月間で約4,500人が訪れました。

渡邊さん

摘み取りにはまだ伸びしろがあります。売り上げ2,000万円を達成したら、海が見えるように園内の展望デッキをもう一段高くしようかな。どんどん高くなったらいいですよね。農業未経験からでも、売る力とバッグカルチャーシステムがあればブルーベリーで食べていける。それを知ってもらえるとうれしいです。

農業未経験から、栽培だけでなく飲食や販売まで自分たちの手で形にしてきた渡邊さん。バッグカルチャーシステムを土台に、いまも一年ごとに次の一手を探り続けています。

『ブルーベリーバッグカルチャーシステム』の詳細はこちら

商品名

ブルーベリー人工培地養液栽培システム『ブルーベリーバッグカルチャーシステム』
初期導入コストの目安:100万円~600万円(税込)

お問い合わせ

オーシャン貿易株式会社 アグリ課
〒604-8134 
京都府京都市中京区六角通烏丸東入堂之前町254 WEST18 4階
TEL:075-255-2400
お問合せはこちら

取材協力

ブルーベリーファームいわき
福島県いわき市平藤間中谷地17-1
TEL : 070-8587-3752
https://blueberryfarmiwaki.com/

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