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農地なし、人脈なし、就農経験なし。元エンジニアが自らの手で掴んだブルーベリー農園開園までの軌跡

農地なし、人脈なし、就農経験なし。元エンジニアが自らの手で掴んだブルーベリー農園開園までの軌跡

「6月15日にグランドオープンしますが、ありがたいことに、6月の予約は120件満席です」。こう語るのは、「いやしのベリー」を経営する林康由さんと有美さんご夫妻。桑名東インターから車で10分。田園風景が一面に広がるエリアに、整然と鉢が並ぶブルーベリー観光農園が「いやしのベリー」です。1400坪の敷地に850鉢、およそ40種類のブルーベリーを栽培しています。康由さんは現在42歳。3年前まで大手機械部品メーカーの技術開発者として15年間勤務していた元サラリーマンです。農業とはまったく無縁の世界から、なぜ農業へと舵を切ったのか?紆余曲折を経ながらも、わずか3年でブルーベリー観光農園を開園できた裏側を語ってもらいました。

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元エンジニアが挑んだローラー作戦の土地探し

農地取得に駆け回った当時を振り返る林 康由さん

林さん

転機になったのは2020年のコロナ禍でした。仕事に空き時間ができたことをきっかけに、私が子どもの頃に父親と楽しんでいた家庭菜園を、自分の子どもたちと再開しました。25mプールほどの広さの畑を借りて、ナスやピーマン、キュウリなどを育てました。作物を育てる楽しさや、ぐんぐん成長する喜び、何よりも収穫したものを子どもたちが“おいしい!”と笑顔で食べる姿を見て、心から嬉しいと思ったのです。

一方で、エンジニアの仕事にやりがいを感じながらも、人が喜ぶ姿を直接見ることは難しい。あらためて自分が本当にやりたいことは何かを見つめ直し、目の前で笑顔が見られる仕事への転身を決めました。

お客さんと対面でできる農業をと考えたときに、栽培品目をブルーベリーに決めたのは、10年ほど前に、有美さんの母に誘われて渋々出かけたバスツアーでのブルーベリー狩り体験がきっかけでした。

林さん

酸っぱいイメージがあったブルーベリーでしたが、こんなに美味しいんだというギャップは、他の果物狩りに比べて大きかった。種もなく、皮も剥かず、ヘタも残らない手軽さは、果物狩りに最適だと思ったのです。しかもまだ日本では認知度が低いため、“伸びしろ”も感じたからです。

思っているだけでは何も進まない。とりあえず行動しようと、康由さんは動き始めますが、そこからの道のりは平坦ではありませんでした。農業経験もなければ、当然農地も持っていません。加えて康由さんは大阪出身で有美さんは高山市出身。たまたま転勤で転居した場所が桑名だっただけで、頼れる親類もいません。自分たちで農地を探す!と農地ナビなどのツールを使うものの、条件に合うような農地がなかなか見つかりません。

そこで、康由さんは、自宅のある桑名市内をGoogleマップで見渡し、耕作放棄地ではないかと当たりをつけて実際に車で行って確認するという、地道なローラー作戦に出ます。候補を5〜6カ所見つけては、法務局で登記を調べて地主の自宅を直接訪問し、インターホンを押す。その行動力に舌を巻くばかりですが、康由さんは、もともとここまでアグレッシブな性格ではなかったと言います。

林さん

自分にもこんな行動力があるとは思いませんでした。もちろん飛び込み交渉ですからドキドキしました。ただ絶対に諦めたくなかったのです。その想いに突き動かされた感じでした。しかし、そう簡単にはうまくいきません。『うちは使う予定があるから』『全く知らない人には貸せない』と断られ続けました。

林さん

ところが、ある好意的な地主が『うちの土地は貸せないけど、他の地主さんにも聞いてあげるよ』と力になってくれたのです。地元では知名度の高い大手企業の会社員だということと、仕事上プレゼン資料の作成が得意だったことが功を奏しました。『若い人が地域と農業を盛り上げてくれることは嬉しい』と気に入っていただき、半年以上かけてようやく現在の土地に辿り着きました。

1400坪の敷地に整然と並ぶブルーベリー鉢。園内は完全バリアフリーとなっている

会社員と並行して資金調達と栽培技術習得に駆け回る

夫婦で農園を管理。理論派の康由さんと感性派の有美さんはベストコンビ

この時点では、まだ会社員だった康由さん。エンジニア仕込みの緻密な計画と、信頼できるパートナーとの出会いが、未経験からの就農を確かな形にしていきました。
康由さんは、退職前に3つの条件を自らに課し、すべてをクリアして有美さんの同意を得なければ会社は辞められないと考えていました。その条件が「農地の確保」「栽培技術の習得」「資金調達」でした。資金面では国の新規就農支援制度を徹底的に調べ上げ、研修中の生活費を補う「就農準備資金」や認定新規就農者向けの「経営開始資金」、さらに農業設備費の4分の3を補助する「経営発展支援事業」という3つの補助金を活用する戦略を組み立てました。

栽培技術に関しては、近隣でブルーベリー栽培を手がける四日市の農園に直談判で研修を頼み込みます。ここでも当初は「教えるのは難しい」と断られましたが、「働きながらでもいいから体験させてほしい」と食い下がり、シーズン中に朝4時からの掃除を手伝うことでやる気を認められました。「安定した給料を捨ててまで、本当にやる気持ちがあるのか」と問われ、康由さんは行動で応えたのです。

このオーナーから紹介されたのが、パートナーとなるオーシャン貿易でした。同社のバックカルチャーシステムは、通常収穫まで4〜5年かかるところ、最短1年半〜2年程度で収穫ができるため、康由さんのような新規就農者にとって始めやすいことや、専用混入機により、ブルーベリーに最適なpHや肥料濃度を自動調整しながら灌水できることで、手間も大幅に削減できます。康由さんは、何より「レスポンスの速さと、どんな時でも親身に相談に乗ってくれたことから、迷わずオーシャン貿易さんなら頼れると思った」と、依頼の理由を語ります。

『オーシャン貿易』の詳細はこちら

『ブルーベリーバッグカルチャーシステム』の詳細はこちら

オーシャン貿易の担当者も康由さんの考案したシステムに学ぶことは多いと語る

着々と準備を進めてきた康由さんの、最後の一押しとなったのが、2023年8月に受けた海外赴任の内示でした。

林さん

このまま会社に残り、サラリーマンとして一生を全うするか。それとも、ブルーベリーとともに自分の夢へ踏み出すか。まさに人生の岐路に立たされていた時、まるで天から授かったかのようなタイミングで、会社からもそっと背中を押されたように感じました。

康由さんは10月に退職し、12月1日から1年間の研修を開始。生活費は就農準備金で補い、研修を終えた段階で「認定新規就農者」の資格を取得。ようやく農地の正式な契約にこぎ着けました。

「新たに農業を始めたい人は、農家ではないので農地が借りられません。にわとりと卵のようで、矛盾を感じますが、新規就農者ならではのジレンマもいい経験でした」と康由さん。

さっそく手に入れた荒れ放題の耕作放棄地は、地主が草刈り機で整備を手伝ってくれるなど、地域の協力を得て少しずつ姿を変えていきます。まず一部分を整地し、植木鉢を密集させる「密植栽培」で、まず700本からスタート。「アクアフォームを入れるのも、苗木の植え付けも、何をやるにも700回。腰も目もやられちゃいましたね」と笑いながら振り返ります。

農園の設計に関しては、研修先とオーシャン貿易の助言が大いに生かされました。後から変えることができずに後悔する点を、事前に教えてもらえたことは大きなメリットでした。水はけのための傾斜や自然の水の流れ、風や太陽の向きまで計算し、雨上がりでも2〜3時間で水が引き、梅雨の時期を挟む観光シーズンに最適化された農園を完成させました。
また、康由さん独自の工夫も随所に光ります。ポットを支える支柱には、地面に刺す従来の「行灯式」ではなく、重力の反力を利用した強固な方式を採用。配管も地面ではなく上部に這わせることで、足元がすっきりし、掃除がしやすくなります。安全性とメンテナンス性を両立させたのは、物理が好きなエンジニアである康由さんならではの発想です。

康由さんが考えた配管システム

何より目を引くのは100メートルに及ぶ中央通路に設置した、開閉式の遮光・雨除けシステムです。手動で開け閉めが可能で、コストもかなり抑えられたとのこと。

林さん

ぶどう農家を見て、これだ!と思ったのです。遮光ネットでは風で飛ばされますし、雨も防ぎたかったので、アーチでなければダメだと思ったのです。施工業者にとっても第一号となったようですが、遮光シートの中に入ればかなり涼しいので、夏場にシーズンを迎えるブルーベリー農園には最適です。

手動での開閉式遮光・雨除けシステム。真夏のブルーベリー狩りには欠かせない

みんなの笑顔が見たい!その想いで駆け抜けた3年間

大きな実と濃厚な甘みが特徴

取材日はグランドオープンの2週間前で、ブルーベリーもたわわに実ってきていました。同行したオーシャン貿易の前川さんは、「実の量と枝の出方のバランスが非常に素晴らしい!」と樹勢の良さを高く評価。その秘訣は、「林さんご夫妻が、いつも圃場に出て、一鉢ずつしっかりと観察しているからだと思います。異常に気づくのも早くなりますから」。
これに対し、康由さんは、「実際、病気が出た時は写真や動画を送ると、即座に電話で助言してくれますし、もちろん圃場にまで足を運んでくれます。オーシャン貿易さんの指導があってこそだと思っています」と、厚い信頼を寄せています。

1400坪もの圃場を、毎日有美さんと見て回る康由さん。新規就農者としての意気込みというより、ブルーベリーを我が子のように可愛がる“愛情”が強く伝わってきます。

林さん

サラリーマン時代に家庭菜園で家族とすごした、あのかけがえのない時間を多くのお客様と分かち合いたいのです。

「いやしのベリー」というネーミングにもその想いが込められています。ロゴマークは、葉の間を爽やかな風が吹き抜けるイメージと、ブルーベリーを食べたときのニコッと微笑む口元を組み合わせたもの。大きくて甘いブルーベリーを家族で味わってほしいと就農を決めた時からの願いは変わっていません。

そんな康由さんと有美さんがとりわけ大切にするのは、自分たちと同じ子育てファミリー層に快適に楽しんでもらうことです。つまずきにくく、ベビーカーでも移動しやすいバリアフリーの園内や、おむつ替え台を設置した広いトイレなど、小さなお子様連れのご家族も心から安心できる環境を整えています。

愛嬌が感じられるロゴマーク

「自分の子どもたちも大好きでよく食べますから、親目線で安心して食べてもらえるものを作っています」と有美さん。
今年はブルーベリー狩り対応に専念するつもりですが、来年は園内でブルーベリーのかき氷やスムージーの販売を準備中。再来年からはジャムの販売など、6次産業化を見据えています。また、ブルーベリー観光農園のオーナーが集う「パープルラボ」にも参加。「病害虫や台風対策など、農家ならではの相談ができるコミュニティで人脈も広げています」と康由さんは声を弾ませます。

最後に有美さんがポツリ。「この3年間で一番苦労していたのは、整地した直後の12月に地面を掘り起こされたモグラ被害ですね。波板を40センチ打ち込み、臭いや音波など、あらゆる対策を講じてようやく退散。あの時は大変でした」

一方の康由さんは「そんなこともありましたが、当初立てた10年計画はほぼ予定通りに進んでいます。運が良いとしか言いようがないですね」と謙遜しますが、その背景に、エンジニア時代に培ったPDCAの思考と、泥臭く動き続けた情熱があってこそ。元サラリーマンがわずか3年でオープンまでこぎ着けた「いやしのベリー」の歩みは、未経験からの就農という夢に、確かな再現性があることを示しています。

『ブルーベリーバッグカルチャーシステム』の詳細はこちら

商品名

ブルーベリー人工培地養液栽培システム『ブルーベリーバッグカルチャーシステム』
初期導入コストの目安:100万円~600万円(税込)

お問い合わせ

オーシャン貿易株式会社 アグリ課
〒604-8134 
京都府京都市中京区六角通烏丸東入堂之前町254 WEST18 4階
TEL:075-255-2400
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取材協力

いやしのベリー
三重県桑名市多度町御衣野4086
TEL : 070-8567-1840
Email : iyashinoberry@gmail.com
HP : https://iyashinoberry.com/

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