刈り草を堆肥、マルチ、草木灰に利用する
こういう暮らしをしていると、旅行などで長く家を空けることが難しい。畑の野菜は成長を止めてはくれないし、ニワトリやヤギの世話もしなくてはいけない。でも、今年の夏は家のことを妻に任せて、高校1年の長男と半月ほどカナダのユーコンでアウトドアライフを満喫してきた。久しぶりの旅だったけれど、どんな暮らしをしていても、ちょっと無理しても、たまには遠くに行かなくちゃいけないね。世の中を見る視野が広がるし、考え方も変わる。いい旅だった。
ただし、長い休みのあとは、その間うっちゃっていた仕事が山のようにのしかかってきて、ちょっと大変。加えて夏の盛りに家を空けていたものだから、田んぼと畑は草だらけ。ヒザの高さに伸びた草を刈り払い機できれいにするのに、1週間近くかかってしまった。夏は朝の涼しい時間しか外での作業ができないので、1日の作業はせいぜい1~2時間。草が伸びてしまうと、3反5畝ある田畑の草刈りはそれなりに時間がかかるのだ。

7~8月は2週間草刈りをしないと、雑草がはびこる。大きく育つと草刈りも大変
刈り取った草は、そのまま放っておけば水分が抜けてかさが減り、夏であればそれほど時間をかけずに分解されて消えていく。堆肥箱や畑の隅に積み上げて堆肥化してもいい。野菜の株元に敷いてやればマルチになるし、ヤギやニワトリの敷料としても使える。一度に大量の刈り草が出たときは草木灰にしてもいい。
肥料になり、酸度調整にも役立つ
草木灰とは、草や木、わら、落ち葉、野菜の残渣(ざんさ)などを燃やしたあとに残る灰のことだ。肥料の三要素のひとつ、カリウムを多く含み、作物の肥料になる。リン酸やカルシウム、マグネシウムなどの成分もある。一方で、窒素を含む化合物は燃焼によって気体となって大気中に放出されてしまうため、ほとんど残らない。
窒素は茎葉の生長に欠かせない栄養素だが、それをほぼ持たないのが草木灰の特徴で、そのことによるメリットとデメリットがある。

薪ストーブの木灰。野菜の生育に欠かせないカリウムとカルシウムがたっぷり含まれている
メリットは、窒素を利かせずにリン酸やカリウムを補給できることだ。窒素は過剰にやると必要以上に茎葉ばかりが育ち、果菜類では着果や品質に悪影響が出やすい。病害虫の発生も助長する。また、貯蔵性が求められるタマネギは、生育後期の窒素過多や収穫直前まで肥効が残ることで、貯蔵中の腐敗や品質低下につながることもある。そういうリスクを避けながら、窒素以外の養分を効かせたいときに草木灰は効果的だ。
かといって、草木灰だけで十分な施肥になるかといえば、そんなことはない。茎葉の生長にはどうしたって窒素が必要なので、草木灰はそれだけで完結する肥料にはならない。窒素分が足りない畑では、油粕や魚粕、鶏ふんなど、ある程度窒素分を含む肥料と合わせて施用する必要がある。

灰となった草木が土に還り、その養分でまた作物が育つ
草木灰の成分は原料によって差が大きい。ある市販品の成分表を参考にすると、窒素0.26%、リン酸0.76%、カリ3.43%、石灰9.05%とある。また、農林水産省の資料では木灰に限定した場合、リン酸4.0%、カリ10.0%、石灰30.0%で、窒素の記載はない。おそらく0に近い。わら灰だとリン酸2.0%、カリ4.0%、石灰2.0%で、木灰に比べて石灰をあまり含まない。
石灰は土壌の酸度調整にも役立つ。特に木灰は石灰分を多く含み、アルカリ性が強い。日本の土壌は雨によって石灰などの塩基類が流出しやすく、酸性に傾きやすい。酸性が強くなると野菜の生育に影響するため、苦土石灰やカキ殻石灰などアルカリ性の資材を入れて調整することがある。草木灰にもその効果が期待できるのだ。
草木灰の作り方
刈り草で草木灰を作るときは、風のない日を選び、周囲に燃えやすいものがない場所でやる。自宅の庭などでの軽微なたき火や農業を行う上での野焼きや焼却は法律で禁止されてはいないが、それなりに煙が出るので、近隣の環境をよく考えて行うこと。
刈ったばかりの青草は成分の多くが水分のため、直接火をつけようとしても燃えない。あらかじめたき火を起こしてたっぷりとおき火を作っておき、その上に草をのせる。火の勢いが弱いと、草の水分ですぐ消えてしまう。とにかく最初のたき火が肝心だ。

薪を燃やして簡単には消えないおき火をつくる
おき火の上に刈り草を積み上げると炎は消えるが、十分な熱があれば大量の白い煙を上げて、くすぶりながら燃えていく。

刈り草を燃やすと大量の煙が出るので、周囲に迷惑がかからない場所でやること
しばらくすると、積み上げた刈り草の中央が燃えて、富士山の火口のようなくぼみができる。そうしたら、周囲の草を寄せて全体をさらに燃やす。落ち葉や庭木の剪定枝があれば、それも一緒に燃やしてしまってかまわない。

草の量にもよるが、ゆっくり燃えていくため結構時間がかかる。畑仕事をしながら燃やすとよい
燃えるものがなくなると、火は自然に消えて白い灰だけが残る。これが草木灰だ。その量は、燃やした草の量に比べると驚くほどわずかしかない。
燃え残った灰は、その場で自然に冷めるのを待って畑に施す。保存する場合は、完全に火が消えて冷めたのを確認してから容器や袋に移す。

燃え尽きると灰だけが残る。これが草木灰
最近はようやく夏の暑さも和らいできて、草の勢いも落ちてきた。今シーズンの草刈りもあと1回やれば終わりだ。そしたら薪ストーブのシーズンがやってくる。薪を燃やしたあとに残る灰は、すべて庭と畑に。それで、来年の春にはきっとサクラが満開、トマトの豊作も約束される。
私はそんな花咲かじじいである。


















読者の声を投稿する
読者の声を投稿するにはログインしてください。