出穂前にアイガモを回収
3年目のアイガモ農法は反省が多い。放鳥直後にイタチが侵入して多くのアイガモを失ったばかりか、それから1週間も経たないうちに雨が降って冷え込んだ日があり、その寒さでまた少なくない数のヒナが死んでしまった。
そういうことがあって追加でヒナを注文したのだが、田んぼの草は後発隊のデビューを待ってはくれない。手をこまねいていると、容赦なく生えてくる。田車による除草もしていたのだが力及ばず。小さなうちにとりきれなかったヒエが、稲刈りの頃にはずいぶん大きく育ってしまった。

アイガモの奮闘むなしく、ヒエが育ってしまった田んぼ。種が落ちると来年また生えてくるので、できるだけ穂を摘み取る
アイガモは田植えから1週間前後で放鳥しないと、草が育ってしまい抑えるのが難しくなる。後発隊の出番は少し遅かった。とはいえ、それなりに働いてくれて、コナギやクログワイなどはだいぶ抑えることができた。
田んぼに放したアイガモは出穂前に回収する。穂がつくと、それを食べてしまうからだ。では、どうやって捕まえるか。じつは、まだうまい方法が見つかっていない。餌付けをして、私が「カモちゃ~ん」と呼ぶと休憩小屋に集まるようにはなっていたのだが、いざ回収しようとしたときに何羽かをとり逃してしまった。すると警戒心を持つようになって、次からは集まりにくくなる。寄ってきても、私の姿を見て逃げてしまう。そうなったら仕方がない。日が落ちて暗くなってから田んぼの中に入り、カモが休んでいるところをガバッと捕まえる。
今年、最終的に残ったアイガモは15羽。先発隊が大きな被害を受けたあとに後発隊を放し、その時点で30羽前後いたのだが、その後またイタチに入られた。うまく水をはじけなかったり、体が小さくて弱かったりして脱落したヒナもいる。原因の多くは私の管理のまずさにある。でも、アイガモには悪いが、簡単ではないから面白いのだと思う。頭の中には次はこうしてやろう、ああしてやろうという考えがあって、つい先日稲刈りを終えたばかりなのに、もう来年の田んぼが楽しみになっている。

田んぼを泳ぐアイガモ。足で泥をかき回すので水が濁り、日光が遮られて草が生えにくくなる。草の種や芽も食べてくれる
アイガモは野生に放せない
さて、記事の本題はここから。回収したアイガモのその後である。
アイガモ農法をあまり知らない人のために言っておくと、回収したアイガモをそのまま飼育して翌年の田んぼに放すことはできない。田植えをしたばかりの田んぼに成鳥を放すと、小さな苗が踏み倒されたり、食べられたりしてしまうからだ。だから、毎年新しいヒナを仕入れなくてはいけない。
また、野生に放すことは法律で禁止されている。アイガモは野生のマガモとアヒルを交配させて作られた雑種で、在来のカモ類と交雑すると野生種の遺伝的特徴に影響を及ぼす恐れがあるからだ。生態系のバランスを乱す原因になるかもしれない。
そういうわけなので、回収したアイガモは絞めてお肉にしちゃいます。
大規模にアイガモ農法をやっている農家では何十羽、何百羽ものアイガモをさばかなくてはならないため、食肉処理場に依頼して商品として販売する人も多い。でも、わが家のアイガモはわずか15羽。家庭で十分に処理できる数だ。
田んぼから引き揚げたアイガモは、すぐに絞めるわけではない。まだふ化後3カ月程度の大ビナで、肉にするには小さいのだ。絞めるのは、もう少し体が大きくなる晩秋から冬。その間は柵で囲んだニワトリの運動場で飼育する。本来は水を張った田んぼや池のある環境がいいのだが、水を入れた大きな容器を運動場に置いておき、それで我慢してもらう。

回収したアイガモは、成鳥になるまでしばらくニワトリと一緒に飼う
生後5~6カ月になると、メスは性成熟して産卵するようになる。卵はニワトリの卵と同じように食べられるのでそのまま飼ってもいいのだが、わが家にはニワトリが10羽いるから、卵のためにアイガモを飼う理由はあまりない。ただ、来シーズンは自家繁殖に挑戦してみたいので、オス1羽とメス3~4羽だけ残し、残りを絞めることにする。
家庭でアイガモを絞めて、さばく方法
ニワトリもアイガモも、絞めるのはたいてい妻の役目だ。私より場数を踏んでいて、ずっと手早くやってのける。とにかく料理については熱心で、ニワトリの絞め方も養鶏農家のところに何度も行ってコツを聞いていたし、アイガモにいたっては妻の父が狩猟をやるので、うまいやり方を教わっていた。
手順はこうだ。
- 頸動脈(けいどうみゃく)を切って血を抜く
- 羽根ごと全身の皮をはぎとる
- 手羽先と足をとる
- モモ肉をとる
- 胴体と胸骨をわける
- ムネ肉をとる
- 内臓をわける
この作業に1羽30分くらいかかる。絞め方やさばき方は人によって異なるが、手慣れた人ならもっと早くできると思う。さばき方は基本的にニワトリと同じ。ただ、ニワトリの場合は羽根をむしるが、アイガモは厚い皮下脂肪ごと羽根をはいだほうが楽なのでそうしている。シカやイノシシなど、獣をさばくときに皮をはぐのと同じ要領だ(やったことはないけど)。
絞める前には包丁をよく研いでおくことも忘れずに。これ、とても重要。
アイガモを絞める
血抜き

羽を背中に回して交差させ(羽交い締め)、暴れても外れないように足をきつく縛って庭木に吊るす。頭を持って首にカッターナイフか包丁を当て、頸動脈を切る。先に首を落とすと心臓がすぐに止まり、血が抜けきらない。だから生かしたまま、心臓のポンプ機能で血を抜くのだ。

木に吊るしたまま10分ほど置いておくと、血が抜けて息絶える。地面に血が落ちるので、新聞紙を敷いておくか、血抜きが終わったあとで土をかけて埋めておく。血の臭いが残っていると、イタチやキツネを呼んでしまう恐れがあり、小屋のニワトリやアイガモに被害があると困る。完全に動かなくなったら木からおろし、首を落とす。ナタや手斧でひとたたきすれば、硬い骨ごとストンと落ちる。
羽根ごと皮をはぐ
水鳥のアイガモには厚い皮下脂肪がついているので、その皮下脂肪ごと皮と羽根をはぎとる。まず、腹側から見て首の右のつけ根に、ナイフで浅く切れ目を入れる。左側には、食べたものを一時的にためておく食道のふくらみがあるので、破らないように気をつける。次に、首の切れ目に両手の指を突っ込んで、皮を開くようにして背中側からはいでいく。

少し力を入れて引っ張れば、皮はメリメリッと肉からきれいにはがれていく。背中の皮がある程度はがれたら腹側をはがし、手羽先と足先で皮を切り離す。

体に残った羽根は水できれいに洗い流し、翼を切り落とす。
手羽先と足をとる

手羽先はほとんど肉がなく、足の黄色い部分も食べないので(スープの出汁にすることもできるが、わが家では好まない)、関節の筋を切って外し、処分する。切り落とした首や羽根、皮下脂肪など、不要な部位は堆肥(たいひ)箱に入れて分解させる。
アイガモをさばく
モモ肉をとる


腹を上に向け、モモのつけ根に包丁を入れて、関節の周りの肉と筋を切りながら体からはがしていく。

モモ肉がとれた。
胴体と胸骨をわける

手羽のつけ根に包丁を入れて、関節の筋を切る。

背中を上に向け、肩甲骨に包丁を入れて胴体と切り離す。

首のつけ根から胸骨を起こし、開いた体に人差し指と中指を入れる。もう一方の手は首をつかむ。

そのまま胸を開くと、手羽と胸骨が胴体からはがれる。
ムネ肉をとる

胸骨の左右に包丁を入れ、骨から肉をはがしていく。

ある程度切れ目が入ったら、ムネ肉を引っ張ってはがす。

左右のムネ肉がとれた。
内臓をわける

血管を切って心臓をとる。

肝臓をめくったところにある緑色の部位は胆のう。苦みが強いので、破らないように気をつける。

肝臓をとる。

砂のう(筋胃)をとる。鳥類は歯がないので、ここにため込んだ砂や小石で食べたものをすりつぶす。いわゆる砂肝。筋肉質で歯ごたえがいい。

半分に切って中身を洗い流し、内側のざらざらした硬い膜を切りはがす。
解体した食用部分。腸や肺など、そのほかの内臓は処分し、骨に残った肉は圧力鍋で煮込んで崩す。骨はスープのだしにする。

- 首肉(セセリ)と肋骨(ろっこつ)、腸骨など(ガラ)
- 胸骨、ササミ、手羽
- 心臓(ハツ)
- 砂のう(砂肝)
- 肝臓(レバー)
- モモ肉
- ムネ肉
命を食べるということ
こうして命は肉になる。私たち人間を含め、多くの生き物は別の生き物(植物を含む)を食べることで、自らの体を作り、命をつないでいる。生きるということはそういうことだ。
カモちゃん、ありがとう。
心を込めていただきます。

絞めたアイガモで作ったカモロース
カモロースの作り方
材料
- アイガモ肉 400~500g
- 水 120ml
- 塩 小さじ1
- 砂糖 大さじ2/3
- しょうゆ 大さじ1/2
- 黒コショウ お好みで
- 粒マスタード お好みで
作り方
- 水(120ml)、塩(小さじ1)、砂糖(大さじ2/3)、しょうゆ(大さじ1/2)を混ぜ、調味液を作る
- アイガモ肉を調味液に3~4日漬け込み、肉をやわらかくしながら味をじっくりしみ込ませる
- 調味液からアイガモ肉を取り出し、フライパンで表面に軽く焼き色をつける
- ポリ袋に調味液とアイガモ肉を入れ、空気を抜いて口をしばる
- ポリ袋を沸騰した湯を入れた炊飯器に沈め、そのまま20~30分保温する
- しっとり仕上がった肉を薄くスライスし、好みで黒コショウや粒マスタードをまぶしてもOK。前菜にも酒の肴にもなる絶品のひと皿に


















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