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12万円の激安トラクターを自分で整備 耕運爪とガスケットの交換【DIY的半農生活Vol.59】

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

12万円の激安トラクターを自分で整備 耕運爪とガスケットの交換【DIY的半農生活Vol.59】

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約3.5反(35アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。
雨の多い秋だったが、なんとか稲刈りを終え、次は秋起こし。その前に、トラクターを少し整備しておくことにした。ロータリーのチェーンケースのオイル漏れを直し、長年の使用でへたっていた耕運爪を交換する。

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リスク織り込み済みの激安品

5年前、田んぼを始めるにあたってトラクターを手に入れた。当時はあまりお金がなかったので(いつもないのだが……)、なるべく安いものを探した。
それは家の近くにある、中古農機具店というより解体業者といったほうがしっくりくるような店にあった。イセキの「TU1500」というモデルで製造は1980年代前半というから、もう40年以上前のベリーオールドマシンだ。整備などは一切なしの現状渡しで、価格は12万円ぽっきり。見た目は古くてボロいが、その場でエンジンをかけ、ひと通り動かしてみたところ、とりあえず大きな問題はなさそうだったので買うことに決めた。

TU1500正面

TU1500。角目2灯のフロントマスクがかわいい。出力約15馬力。愛称はKota(耕太)

古いなりに遠からず不具合が出てくることは、リスクとして織り込み済みだったが、今日まで大きなトラブルは一度だけ。ラジエーターのホースが破れて冷却水が漏れていたのに気づかず作業を続け、エンジンから煙が上がるほどのオーバーヒートを起こしてしまったのだ。幸い、エンジンの焼き付きやシリンダーヘッドのゆがみといった重症には至らなかったが、ヘッドガスケットの交換など、ちょっとした修理が必要になった。
ほかにはフロントアクスルやミッションギヤボックスのまわりにオイルのにじみが見られるが、直すとなると手間がかかるので、始動前にオイル量を点検し、減っていれば補充するということで、今のところはそのままにしている。

しかし、ロータリーのチェーンケースからのオイル漏れだけは、そうも言っていられなくなってきた。止めておいた場所の地面に、はっきりとオイルのしみができるほど漏れるようになってしまったのだ。これはさすがに直すしかない。
ついでに、入手してから一度も替えていない耕運爪も交換することにした。じつは恥ずかしながら、つい最近まで、爪がどれくらいへたっているのかをちゃんとわかっていなかった。先日ホームセンターで交換用の新品を目にして、ようやく、わが家の爪が限界をはるかに超えていることに気づいたのだ。よくもまあ、あのすり減った薄っぺらい爪で耕していたものだと思う。いや、実際にはまったく耕せていなかったのだろう。知らないというのは怖いことだ。

ロータリー側面

摩耗して先端がとがった耕運爪

40年前のトラクターでもパーツは出る?

チェーンケースのオイル漏れを直すのに必要なのはガスケット(オイル漏れを防ぐためにケースの合わせ面に挟んで、隙間をふさぐ部品)だ。古くなって劣化すると隙間ができて、そこからオイルが漏れるようになる。それを新しいものに交換するのだ。これはイセキの販売店で純正品を注文することにした。
窓口で「TU1500についているロータリー、SA1200のチェーンケースのガスケットを注文したいんですが」と伝えると、対応してくれた男性は「TU1500⁉ パーツ出るかなぁ……」と、あまりに古いトラクターに少し戸惑うような表情を見せたあと、棚の奥から年季の入ったパーツリストを引っぱりだし、パソコンで在庫を調べてくれた。
「あ、出るね」
ホッとした。古いモデルだと、部品によっては純正品が手に入らないこともあるが、ガスケットのような汎用的なパーツでは、そういうことは少ない。仮に純正品がなくても社外品や互換品で対応できるし、紙のガスケットなら、ホームセンターやネット通販で売られているシートガスケットから必要な形に切り出して使うという手もある。

一方、耕運爪は純正品より互換品のほうが安いので、ホームセンターでばら売りされているものを買った。

新品の爪

ホームセンターで入手したバラ売りの耕運爪

ロータリーの爪は1本ずつ曲がり方や向きが違い、SA1200の場合は左爪・右爪が各13本、左偏心爪・右偏心爪が各1本の計28本の組み合わせになる。同じロータリーに対応する爪でも、材質や形状、耐久性の違いでいろいろな種類があり、価格もさまざまだ。今回は最も安い標準のナタ爪を選んだ。28本で1万1344円(税込)なり。

トラクターの爪交換の方法

今、ロータリーについている爪が、どれくらい使われたのかはわからないが、新品と比べると幅は3分の1ほどまですり減り、先端がとがってしまっている。

古い爪と新しい爪

左は摩耗した爪、右は新品

交換作業はロータリーを持ち上げた状態で行うが、至るところにオイルのにじみがある私のTU1500は、油圧システムのどこかでオイルが逃げてしまっていて(油圧漏れ)、エンジンを切るとロータリーが上がった状態を維持できない。そのため、角材をかましてロータリーが下がってこないように支えてやる。

爪は1本ずつ交換するのが安心

爪の交換そのものは難しくない。爪を固定しているボルトを抜いて古い爪を外し、新しい爪を取り付けてボルトを締め直す。やることはそれだけだ。

爪交換作業

耕運爪を固定しているボルトを外して新しい爪と交換する

気をつけたいのは爪の取り付け位置だ。ロータリーの爪は形状によって付ける場所が決まっている。左爪と右爪を取り違えるとうまく耕せない。
古い爪をすべて外してから新しい爪を付けようとすると、どこに左右どちらの爪が付いていたのか、わからなくなる恐れがある。そのため1本外したら同じ形の新しい爪をすぐに付ける、というふうに1本ずつ交換していったほうが安心だ。

固着したボルトにはラスペネが効く

意外と手こずるのはボルトの取り外しだ。長くそのままだったので硬く締まっているうえに、さびて回りにくくなっているものもある。力任せに回してねじ切ってしまうと余計な仕事を増やすはめになる。そういうことを過去に何度かやらかした。
硬く締まったボルトを緩めるには浸透潤滑剤の「ラスペネ」(和光ケミカル)が定番である。てきめんに効く。固着部に噴射後、10分ほど置いてしっかりとしみ込ませる。ハンマーで軽くたたくと固着部に亀裂が入り、浸透しやすくなる。衝撃がボルトを緩める効果もある。

ラスペネ

固着して回らないボルトには浸透潤滑剤「ラスペネ」を塗布

古い爪を外して新しい爪を付けたら、再びボルトをしっかり締め付ければOK。28本の爪をすべて交換したロータリーは、見違えるようになった。真っ赤な爪が並んださまが頼もしい。

爪交換終了

使い込んで摩耗した耕運爪をすべて新品に取り換えた。輝く赤がまぶしい

チェーンケースのオイル漏れ修理

チェーンケースのガスケット交換は、手順としてはシンプルだ。ドレンボルトを外して中のオイルを抜き、ケースを開けて、劣化したガスケットを新しいものに交換する。それだけである。

古いガスケットは根気よくはがす

厄介なのは古いガスケットの除去だ。合わせ面にこびりついて紙が炭のように硬くなっている。カスが残っていると凹凸ができてオイル漏れの原因になるので、スクレーパーやカッターの刃できれいにこそぎ落としておく。その際、合わせ面を傷つけないように注意すること。傷やえぐれができると、それもまたオイル漏れにつながる。ガスケットが固着してはがれにくい場合はガスケットリムーバーを塗布すると、ふやけて柔らかくなり、はがしやすくなる。電動工具のディスクグラインダーやサンダーの使用は基本的には避ける。研削力が強いため、合わせ面を傷つけてしまう恐れがあるからだ。時間はかかっても少しずつ丁寧にはがしていくのが最も確実だ。

固着したガスケット

固着して固まったガスケット

ガスケットはがす

チェーンケースの合わせ面を傷つけないように、スクレーパーでガスケットを削っていく

古いガスケットをきれいに取り除いたら、両方の合わせ面に薄く液状ガスケットを塗る。細かい傷や小さなへこみに入り込んでオイルにじみを防いでくれる。それから新しいガスケットをはさみ、カバーを付けてボルトを締める。

液状ガスケット

液状ガスケットを塗り、全体に薄くのばす

紙ガスケット

新品の紙ガスケットをつけて、カバーを取り付ける

カバーのボルトは対角に少しずつ締める

カバーのボルトは、車のホイールのボルトと同じように対角線の順に少しずつ、全体を均等に締めていく。1カ所だけ強く締めるとカバーがゆがみ、隙間ができる原因になる。緩くてはいけないが、力任せに締めすぎるのも禁物。適度な力加減が求められる。トルクレンチを使って、マニュアルの規定値で締めれば間違いないが、それがなければ経験と勘による。でも、大抵はそれで問題ない。

ボルト締める

カバーのボルトを均等な力で締めていく

ボルトを締め直したら、液状ガスケットが完全に乾くまで1~2日ほど待つ。それから給油口から規定量のオイルを入れ、ロータリーを回して不具合がないか確認する。2~3日して、オイルにじみがなければとりあえず一安心。ただ、何かが原因でほんのわずかでも隙間があるとそう経たないうちににじみが出てくる。今は、そうならないことを願っている。

新しい爪で秋起こしへ

今年の秋は雨が多かった。わずかな晴れの日に稲刈りを終えることはできたけれど、その後も雨は降り続き、秋起こしはこれからだ。新しくした爪の具合はどうだろうか。これまでの薄っぺらな爪とは、土への食い込み方だって違うはずだ。楽しみである。
この古いトラクターがいつまで働いてくれるかはわからないが、できることなら私がヨレヨレになって田んぼに出られなくなるまで、もう20~30年付き合ってもらいたい。お役御免になったら、イセキの歴代の農機が展示されている愛媛県松山市の「ISEKI Dream Gallery」に飾ってもらおう。それくらいの価値があるクラシックマシンになっているだろう。

田んぼとトラクター

古い道具もちゃんとメンテナンスしてやれば、まだまだ使える

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