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令和の米騒動はどこへ向かうのか。「民間在庫・生産量・需要量」3つの数字から読み解く、米価乱高下の真実

kawashima_reijiro

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令和の米騒動はどこへ向かうのか。「民間在庫・生産量・需要量」3つの数字から読み解く、米価乱高下の真実

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「令和の米騒動」は終わったのだろうか。2025年秋、米がスーパーの棚から消え、小売価格が4,000円/5kgを超えた。2026年に入ると一転して米価は下落し始めたが、なぜこれほど乱高下したのだろうか。
本稿では、2023年以降の「6月末民間在庫量」「生産量」「需要量」という3つの数字を追い、そこに概算金、相対取引価格、小売価格がどう動いたのかを重ねて検証した。すると、米騒動の前後で、米をめぐる状況が大きく変化していたことが見えてきた。

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米の専門家による予想は的中。米価は劇的に下がった!

赤2本線が販売価格(全POSデータ平均)。2026年3月に入り3,000円台に下落している。(出典:農水省「スーパーでの販売数量・価格の推移(KSP-POSデータ全国)」)

令和の米騒動の渦中にあった昨夏、筆者はマイナビ農業にて「米流通の専門家が断言。『8月には5キロの価格が3000円! 2025年産米も必ず値下がりする』」という記事を書いた。

この時、取材に応じてくれた米の専門記者である熊野孝文(くまの・たかふみ)さんはこう言い切った。

「2025年7月には店頭価格の値下がりが本格化し、8月になると全体の米価は3,000円を切る可能性すらあります。(中略)本格的に新米が出回り始める9月以降には2,000円台/5kgまで下がると予想しています」

上の図にある通り、実際の経過は2025年8月に下落どころか上昇を続け、2025年末まで米の小売価格は4,000円を上回り続けた。ところが2026年に入ると、米価は徐々に下がり始め、2026年3月にはついに3,000円台になった。

熊野さんの予想より半年ほど遅れたものの、大枠の動向は的中したと言える。熊野さんがこうした見通しを立てた背景には、店頭から米が消えた原因への分析があった。

「猛暑の影響により白濁米が多かったとか、ふるいの網目の大きさの問題により精米した際に量が減ってしまったことなどが、まことしやかに言われています。また、新規買取業者が劇的に多く参入した、消費者への直販が増えた、インバウンドの影響などとも言われていますが、いずれも見当違い。単純に、米が足りていなかったのです。民間在庫量を見れば、米が足りていなかったことが、誰にでも分かりますよ」

前回記事で熊野さんが語ってくれたこの言葉を念頭に置きながら、2023年以降の数字を追ってみたい。

2023年:米騒動前夜。在庫は「適正水準」だった

相対取引価格と民間在庫量の推移。2023年6月末民間在庫量は197万t。同年産枚の相対取引価格は15,315円/60kg(出典:農水省「米をめぐる状況について(令和8年3月)」)

2023年6月末の民間在庫量は197万tだった。農水省が示している適正水準は180~200万tであるため、この時点では適正水準の範囲内にあった。

その秋に収穫された2023年産米では、白未熟粒の発生により一等米比率が大きく低下した。2022年産米は78.5%だった一等米比率が、2023年産米では60.9%。17.6ポイントも下がっている。

2023年産米の生産量は661万t(出典:農水省「米をめぐる状況について(令和6年12月)」)

2023年産米の生産量は661万t。今見ると驚くほど少ないが、この661万tという生産量は、民間在庫量、需要量などを踏まえて生産調整が行われた結果である。

2023年の需要量は705万t。長年の下落傾向から突然増加に転じている(出典:農水省「米をめぐる状況について(令和6年12月)」)

もう一つ気になる数字が需要量だ。2023年の需要量は705万t。長期的に減少傾向にあった米の需要量がこの年、突然14万t増えた。農水省はこの需要量の増加について、2023年産米の品質低下に伴う精米歩留まりの悪化などを要因として挙げている。

・生産量:661万t
・需要量:705万t

この需要ギャップにより、結果として2024年6月末の民間在庫量は、適正水準(180万~200万t)を大きく割り込む153万tまで減少した。2023年産米の相対取引価格(2023年9月~2024年8月)は15,315円/60㎏となり、ここから米をめぐる景色が変わり始めた。

2024年:6月末民間在庫量は153万t。概算金と小売価格が急騰

2024年6月末の民間在庫量は、生産調整と思わぬ需要増が重なった結果、前年比44万t減の153万tまで落ち込んだ。適正水準の下限180万tと比べて27万tも少ない数字だ。

2024年産米の集荷時期を迎えると、各地で概算金の引き上げが相次いだ。2024年産米の相対取引価格は、出回り開始時点の2024年9月で22,700円/60kg。年産平均では25,179円となった。2023年産米の年産平均15,315円から、大幅な上昇である。

小売価格も上昇した。2024年6月の2,201円/5kgから、2025年6月には3,895円/5kgへ。1年間で1,694円(77.0%)上昇した。

さらに2024年8月8日の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」発表や台風への不安から買い込みが発生。農水省の分析によればスーパーの米購買量は前年同期の約1.5倍に急増し、在庫不足と重なって店頭から米が姿を消す事態となった。

こうした状況下にあって、2024年産米の生産量は前年より19万t多い679万tとなった。飼料用米からの転換によって作付面積が増えたこと、全国的に好天に恵まれたことなどが背景にある。

2024年の需要量は713万t。2年連続の増加となった(出典:農水省「米をめぐる状況について(令和8年3月)」)

それでも、2024年6月末の民間在庫量は155万tまで減少していた。生産量は前年より増えたが、需要量は713万tまで増加していたからだ。今になって振り返ると、この2年続いた需要増も痛手となる。

2025年:米価が高騰し「米バブル」に。需要は一転して急減

2025年6月末民間在庫量は155万t。相対取引価格は更に急騰し36,310円/60kgとなった。農水省「米をめぐる状況について(令和8年3月)」より再掲

2025年6月末の民間在庫量も155万tと低水準が続いたことで、2025年産米では前年比5割~7割増といった概算金の大幅引き上げが相次いだ。

JAだけではない。民間の集出荷業者も米を確保するため、JAを上回る高値を提示した。筆者は何人もの米生産者から、「いくらでも良いから売ってくれ」「言い値で買うと言われた」「見たことのない業者が来た」という話を聞いた。まさに、バブルのような状況となり、相対取引価格は過去最高となる36,310円/60㎏を記録した。

主食用米の生産量は左から3列目( )内の数字を見る。2025年産は747万tである(出典:農水省「米をめぐる状況について(令和8年3月)」)

2025年産米の生産量は747万t。2023年産の661万t、2024年産の679万tから大きく増えた。民間在庫が2年続けて低水準だったこと、そして2024年産米の価格が上昇したことなどから、生産意欲が高まったことも背景にある。

さらに2025年は、過去に例のない出来事も起きた。備蓄米の放出だ。2025年春から、合わせて59万tが放出された。この放出された備蓄米の一部は、2025年6月末の民間在庫量にも含まれている。

2年連続して増加し民間在庫量を減らしていたはずの需要が683万tに急減している(出典:農水省「米に関するマンスリーレポート(令和8年8月号)」)

ここで意外な数字が出てきた。需要量の変化だ。2022年の691万tから、2023年705万t、2024年713万tと増加に転じたはずの需要量が、2025年は683万tと、一気に30万tも急減した。これは過去最低水準である。

なぜなのか。農水省は大きく二つの要因を挙げている。一つは、米価が高くなったことによる買い控え。もう一つは、輸入米への置き換えである。輸入米は、この統計上の米需要にはカウントされない。

生産量が747万tまで増え、需要量は683万tまで減少した。その結果、翌2026年6月末の民間在庫量は大きく積み上がることになった。

2026年:一転して「米余り」の局面へ

2026年6月末民間在庫量は243万t。大幅な生産増と需要の急減、備蓄米の放出が重なった結果である(出典:農水省「米に関するマンスリーレポート(令和8年8月号)」)

2026年6月末の民間在庫量は243万tとなった。これは比較可能な2004年以降で過去最高水準である。わずか2年前、2024年6月末には153万tだったから、90万tも増えている。

米価は顕著に下がり始めた。2026年産米の概算金は前年比30~40%減となり、13,000~17,000円前後を提示するJAが多い。ただし、2025年産米の概算金が異例なほど高かったから、前年比だけで評価することはできない。

米穀安定供給確保支援機構が発表したコスト指標。2026年4月時点の生産段階のコスト指標は20,535円/60kg

ところが米生産者からすれば、話はそう単純ではない。生産費が上がっているからだ。2026年4月、食料システム法に基づき、公益社団法人米穀安定供給確保支援機構がコメのコスト指標を発表した。

2026年4月時点の生産段階のコスト指標は20,535円/60kg。2025年4月時点では19,860円/60kgだった(1.0ha以上3.0ha未満のコメ生産者の生産費を用いている)。

そして、もう一つ見ておきたいのが、2026年産米の生産量だ。これは711万tとされている。農水省の「コメのマンスリーレポート」2026年8月号によれば、下記のように予測されている。

生産量見通し711万tに2026年6月末の民間在庫243万tを加え、需要量の見通しを差し引くと、2027年6月末の民間在庫は242万~260万tと予測されている。さらに、2026年6月末時点の作付意向調査を踏まえた生産量ベースでは、263万~281万tとなる。

もし需要量が見通しどおりになれば、2027年6月末民間在庫量は、適正水準を大きく上回ることになる。2026年に「米余り」へと変わったばかりだが、この状況はまだ続く可能性がある。

米価はなぜ、これほど乱高下したのか

米価高騰をめぐって巷では、「流通段階に米が滞留している」「誰かが米をため込んでいる」といった声が聞かれた。ネット上だけではない。大手メディアでも、そうした論調が見られた。

しかし、2025年6月末の民間在庫量は155万tしかなかった。農水省が示す適正水準を大幅に下回っていた。一方、2025年産米では生産量が747万tまで増え、備蓄米も放出された。ところが米価が急騰したこともあり、需要量は683万tまで減少した。その結果、2026年6月末民間在庫は243万tまで積み上がった。

米が足りない。米価が上がる。生産量が増える。需要量が減るー。そして、今度は米が余る。2023年から2026年までの数字を追うと、そんな景色が見えてくる。

筆者はこの騒動の前後にわたり、多くの米生産者、集出荷業者、米小売、農水省、地方自治体、農機メーカーや資材メーカーから、継続的に話を聞いてきた。

大規模生産者だけをみても、「米価が上がって嬉しい」という声だけではなかった。「離農予定だった高齢生産者に賃貸契約を反故にされ、合筆の計画が遅れてしまった」「米価が一定程度は上下するのは構わないが、先を見通せないと投資が難しい」「大豆や飼料用米を作るメリットをより出してほしい」そんな声があった。

小規模生産者の声も、決して一様ではなかった。「ようやく機械の更新ができる!」という喜びの声も確かにあったが「ウチはほとんど直販だから関係ないかな」という、思いのほかアッサリした意見もあった。

さまざまな声を思い出しつつ統計データを遡ってみると、令和の米騒動から米価の暴騰と下落が「誰か一人のせいだった」と考えるのは難しい。民間在庫量、生産量、需要量を中心として、品質、消費者の行動、流通、政策など、さまざまな要素が重なった結果だと考えるのが自然だ。

米価が高すぎれば消費者が困る。安すぎれば米生産者や流通が困る。それでも確かな事実がある。米生産者が作り続けられなければ、安定供給に支障がでる、ということだ。米は日本の主食であり、農村の維持や食料安全保障にも関わる。

必要なのは、誰かにとって都合のいい価格ではなく、消費者が買うことができ、生産者が作り続けることができる、安定した価格だ。令和の米騒動はまだ終わったとは言えない。

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