コンバイン1台から2台体制へ
横田農場は面積が184ヘクタールで、コシヒカリや一番星など8品種を育てている。品種が多いので田植えと収穫の適期がそれぞれ2カ月と長く、田植え機とコンバインを1台ずつでこなすことを可能にしている。
どの品種をどこにいつ植えるのかを含め、作業体系は極めて緻密。では記録的な長雨は作業にどう影響したのか。そうたずねると、意外な答えが返ってきた。「コンバインを2台使うことにした」。初めて聞く言葉だった。
国の研究プロジェクトに参加したとき研究機関から借りたコンバインの貸与期間が残っていて、そのまま農場の施設に保管してあった。稲刈りを始めたのは8月16日で、9月上旬からそれを使うことにしたという。
100万円相当のコシヒカリの収穫を途中で断念
「コシヒカリは最後まで刈るのを諦めた」。横田さんはそう話す。コシヒカリの面積は30ヘクタールで、うち0.7ヘクタールは収穫を断念した。倒伏して水を吸ってしまっていたためだ。金額にして100万円ほどになるという。
無理をすれば刈ることはできたかもしれない。だが濡れたまま収穫すると、コンバインや乾燥機から藁(わら)などのゴミや泥を取り除く作業が必要になる。その結果「刈っている時間より掃除している時間の方が長くなる」。
遅い日は夜中の11時まで収穫した。コンバインを2台使えば、通常なら10ヘクタールは刈ることができる。だがこの日はわずか2ヘクタール。「コシヒカリはもう諦めよう」。この日、横田さんは社員にそう告げた。

横田農場の収穫の様子
作業の見通しをグラフで提示
この間、横田さんが力を入れてきたのは社員に先の見通しを示すことだ。そのために実施したのが情報の共有。縦軸に累計の収穫面積、横軸に日付をとった折れ線グラフをつくり、作業が終わると社員に毎日見せた。
8月16日を起点にしたグラフは、8月下旬まではほぼ右肩上がりの直線を描いている。ところが9月に入ると、収穫面積が増えない日が増える。2025年の実績を示すグラフを下回り、その差が広がっていく。
横田さんが強調したいのはこの先だ。例年より多く1日4ヘクタール強のペースでこの先収穫すれば、25年と同じように10月半ばで稲刈りを終えることができる。9月は確かに停滞したが、取り戻せないほどの遅れではない。
しかも重要なのは雨続きで日照量が不足し、生育が遅れている品種がある点だ。その結果、収穫適期が10日ほど遅れて10月末まで延びる。雨が降って収穫できない日があっても、全圃場を収穫することは可能だ。
「こんなんで作業は終わるんですか」。社員からそう聞かれると、横田さんはグラフを見せながら「このペースでいけば大丈夫。自信を持っていい」と説明する。こんなときだからこそ、社員を力づけるのはトップの大切な役割だ。
日照量が少なかったので、一部は登熟(とうじゅく)がうまく進んでいない可能性もある。だがそれは収穫後にわかること。いま必要なのはやるべき作業を日々しっかりこなすことだ。情報の共有はそのための活力になる。

横田農場の乾燥貯蔵施設
社員との会話で活力
横田農場にはいま14人の社員がいる。横田さんは取材の中で社員への感謝の気持ちも語った。

















