苗作りも、育てる大きさも、もっと自由にできる水耕栽培
私の水耕栽培は、発芽(はつが)するまではバーミキュライトで苗を育て、ある程度大きくなったら液肥(えきひ)を入れた容器に移すのが基本のやり方です。土を使わないので管理がしやすく、初期費用もあまりかからないのが魅力ですが、正直ちょっと面倒だった工程があります。それは、苗作りです。
視聴者さんからのコメントがきっかけで、その面倒さがほぼなくなりました。今回は(1)苗作りが激変した育苗の新方法、(2)スポンジと容器で育てる基本の水耕栽培、(3)もっと大きく育てたい方向けの巨大化テクニックの3本立てでお届けします。
1. 苗作りが激変!水切りネットで発芽させる新方法
バーミキュライトの苗作りで感じていた手間
以前はスポンジに直接種を蒔く方法やハイドロボールで育てる方法も試したのですが、どちらも上手くいきませんでした。詳しくは第1回の連載記事で詳しく述べていますのでぜひご覧ください。
それに比べてバーミキュライトは、高温処理されていて無菌なので虫がわきにくく、根も綺麗に伸びて、再利用もできる。この資材がすごく自分に合っていると思い、これまでの苗作りは、バーミキュライトに種を蒔き、発芽するまで毎日霧吹きで湿らせて育てていました。発芽したら苗を抜いて、根っこに付着したバーミキュライトを1本1本洗い落とし、スポンジに挟んで液肥入りの容器に定植する、という流れです。長く続けるには「根の汚れを洗い落とす」工程だけがちょっとしんどいな、という感じがありました。

バーミキュライトに種を蒔く

霧吹きする

発芽する

苗を抜く

根っこを洗浄する

容器の蓋の穴に定植する
着想のきっかけは視聴者さんからのコメント
以前、水切りネットでブロッコリースプラウトを育てる動画を出したとき、視聴者さんからこんなコメントをいただきました。「この方法で催芽(さいが)をやってみては」というものです。確かに水切りネットの上なら種が発芽するので、これならいけるかもと思い、試してみることにしました。結果は、催芽どころの話ではありませんでした。苗作りそのものが、このやり方で完結してしまったんです。

水切りネットで栽培しているブロッコリースプラウト
きっかけとなった動画はこちらです。
水切りネット育苗のやり方
大きめの容器を用意する
100円ショップの収納BOXやタッパー、捨てる予定のプラスチック容器で十分です。透明の容器なら横から根の長さが見えるので成長を確認しやすく、大きめなら水も減りにくいので、しばらく放っておけます。

透明の空き容器
容器に水切りネットをかぶせ、洗濯バサミで5cm間隔くらいに留めて、ピンと張る
真ん中がたるんでいると、種全体が水に浸かってしまい、発芽にばらつきが出たり、種が腐りやすくなるので全体がピンと張っていることが大切です。

ストッキングタイプ浅型の水切りネット

水切りネットを用意する

水切りネットを容器にかぶせる

5cm間隔で、容器の縁に洗濯バサミを挟む
水はネットがひたひたになるくらい入れ、ネットの表面を水で濡らす

水道水を容器に入れる
種はネットの真ん中あたりに蒔く
端は水位が下がってくると、ネットが水面から浮いて乾きやすいので、中央あたりがおすすめです。

レタスミックスの種

レタスミックスの種を蒔く
–嫌光性種子(けんこうせいしゅし)の場合は、アルミホイルを被せて遮光(しゃこう)する

嫌光性種子はアルミホイルで覆う
ここからが革命なんですが、もう何もしません。霧吹きもいりません。ネットが水を吸い上げてずっと湿った状態を保ってくれるので、種を蒔いたら日当たりの良い場所に置いて、発芽するまで放置するだけです。

日当たりの良い窓辺に設置する
発芽してからの成長記録
種を蒔いて3日ほどで発根し、14日ほどで根が5cmくらいに成長します(気温が高い時期ほど早く、涼しい時期は気長に待ってあげてください)。

レタスミックスが発芽した様子

横から見たレタスミックスの根っこの様子

レタスミックスが発芽した様子
根を洗う作業が一切いらず、すっと抜いてそのままスポンジに挟むだけ。たまたま視聴者さんのコメントから見つけた方法でしたが、手間がひとつ減るだけで「またやろう」と思えるようになり、私にとって本当に革命でした。

苗を抜いている様子

抜いた苗をスポンジに挟む
この水切りネット育苗方法の様子は、動画で分かりやすく紹介しています。
【超重要】水切りネット育苗で気をつける2つのポイント
この方法は、葉物野菜から実物野菜までいろいろな野菜の種で発芽することが分かっています。
実際にやってみて分かった、絶対に気をつけたい点が2つあります。
①早めに抜く:双葉が開いてくる頃には、根もちょうど5cmくらいに伸びてきます。根が1本5cmほど伸びた時点で抜くとすっと抜けます(長すぎると定植する蓋の穴に通しにくく、短すぎると水位が合わせにくいので、5cmがちょうどいい長さです)。

根っこが5cm以上伸びすぎた二十日大根の苗

根っこが5cm位の二十日大根の苗
この時期を過ぎて根が何本か枝分かれしてくると、抜こうとしてもネットに絡んでブチブチ切れてしまううえ、支えがないので倒れやすくなります。抜くときは根元をそっと持ってください。

根っこ1本から沢山枝分かれしている空芯菜の苗

成長して倒れているオクラの苗
②乾かさない:容器を動かすと水が揺れて根がネットに張り付いたままになり、そこだけ乾いて枯れてしまうことがあります。容器を移動させる場合はできるだけ静かに動かしてください。

ネットに根っこが張り付いて一部分が枯れているレタス
1つの容器には同じ品種だけを蒔くのがおすすめです。同じ品種なら発芽の速度もだいたい揃うので、水の減り方も均一になり、種を蒔いたら放置でも大丈夫です。何種類も同じ容器で育てる場合は、発芽の速度に差があるため水の減り方にも差が出ます。様子を見て水を足すようにしてください。

1つの容器で7種類育苗している様子
2. 基本の水耕栽培:スポンジと容器でレタスを育てる
ここからは、私がこれまでやってきた中で1番やりやすかった、基本のレタスの水耕栽培のやり方をご紹介します。
容器を作る(遮光・反射の工夫)
準備するものは、2.4Lのタッパー、アルミテープ、黒いゴミ袋、ネットスポンジ(100円ショップのものでも大丈夫です)です。容器の作り方は第1回の記事でご紹介した方法と同じで、タッパーの蓋に、半分だけ切り込みを入れて四角く切ったスポンジより一回り小さい穴を開け、表面にアルミテープを貼って遮光し、容器全体に黒いゴミ袋を被せて密着させれば完成です。アルミテープを貼ると、透明な容器のままだと発生してしまう藻(も)を防げるうえ、反射で光量もアップします。

100円ショップの2.4Lのタッパー

穴を開ける部分にボールペンで印をつける

カッターで穴を開ける

アルミテープ

蓋の表面にアルミテープを貼る

蓋が完成

容器に黒いゴミ袋をかぶせる

水耕栽培の容器が完成
スポンジを自分で切るのが面倒な方には、最近100円ショップで売られている水耕栽培専用スポンジもおすすめです。すでに十字の切り込みとくぼみが入っているので、指でちぎるだけで使えます。

100円ショップの水耕栽培スポンジのパッケージ

100円ショップの水耕栽培スポンジ
苗を育てて定植する
苗は、前述した水切りネットの育苗方法で育てたものを使います。根が5cmほどに伸びたら、そのまま茎をスポンジの切り込みに挟み、容器の蓋の穴にはめ込めば定植完了です。

苗を容器に定植する
液肥を入れて管理する
水だけでは野菜は大きく育ちません。なのでここからは液肥に切り替え、水耕栽培専用の肥料を使っていきます。液肥は、2Lの水に2gの微粉ハイポネックスを溶かして作ります。

微粉ハイポネックスのパッケージ

微粉ハイポネックス

2Lのペットボトルに2gの微粉ハイポネックスを溶かす
水位は、根っこの4分の3が液肥に浸かるのを目安にしてください。茎やスポンジまで液肥が触れると根腐れ(ねぐされ)の原因になるので、ここは絶対に守ってください。蓋をしっかり閉めれば液肥が蒸発しにくくなります。

液肥の水位は根っこの4分の3位入れる
置き場所で絶対に守ってほしいのが、レースカーテン越しではなく、直射日光に当てることです。レースカーテン越しで育てると、レタスは必ず日光不足で茎が間延びしてひょろひょろになってしまいます。

南側の窓際の棚に設置する

日光不足で徒長したレタスたち
ただ、ひとつ注意点があります。アルミテープの蓋は反射で光量がアップする分、日当たりが良すぎる窓辺だと、反射光が強すぎてレタスがシナシナになって枯れてしまうことがあるんです。特に、まだ気温が高い時期の南向きの窓際は要注意。

高温と日差しにより枯れた出タス
そんなときは、ヨーグルトの空き容器が便利です。

ヨーグルトの容器
先に縦に1本ハサミで切り込みを入れてから、その切り込みから底をくり抜くのがポイント。先に底をくり抜こうとすると固くて大変なので、縦の切り込みを先に入れてください。この切り込みがないと、苗が大きくなったときに容器を外すのも大変になりますが、入れておけばパッと外せます。

ヨーグルトの容器を縦に切る

ヨーグルトの素底を切っていく

ヨーグルトの容器完成
小さい苗にかぶせておけば光をちょうどよく和らげてくれますし、少し育ってひょろっと倒れてきた苗の支えにもなる、一石二鳥のアイテムです。苗がヨーグルトの容器より大きくなってきたら外して、そこからは直射日光でぐんぐん育てましょう。捨てるはずだった容器が0円で活用できるので、ぜひ試してみてください。

レタスの苗にかぶせる
こうして日当たりに気をつけながら育てていけば、室内の窓辺でもこのくらいのタッパーで十分な大きさに育ちます。ベランダなど屋外で育てると日当たりがさらに良くなる分、もっと大きく育てることができるので、屋外なら思い切って大きい容器を使うのもおすすめです(詳しくは後述します)。

タッパーで育ったレタス
室内栽培で後からもっと大きくしたい場合:容器が小さいと、野菜もそれに見合った大きさにしかなりません。タッパーで小さく始めた苗も、ある程度育ったらスクエア収納BOXなど大きい容器に引っ越せば、さらに大きく育てられます。

大きい容器で育てているレタスたち

大きい容器で育てているレタスたち②
室内栽培でレタスの水耕栽培に適している時期は、秋から冬にかけてです。冬は太陽の角度が低くなるので部屋の中まで光が差し込みやすくなり、育てやすくなります。
無限にレタスを収穫したい場合は、1章の水切りネットに残した苗を必要な分だけ少しずつ抜いて定植すれば、種を蒔き直さなくても収穫時期をずらしながら次々と収穫できます。
収穫とスポンジの再利用
レタスは、株ごと切ってしまうとそこで終わりですが、外側の葉っぱから順番に大きくなった葉だけをかきとり収穫していくと、株はそのまま育ち続けるのでずっと収穫を楽しめます。

かきとり収穫している様子

かきとり収穫し終わった様子
つぼみがついてきたら、その株は収穫終了のサインです。収穫が終わったレタスはスポンジから外し、黒いゴミ袋を被せていた場合は液肥を全部捨ててゴミ袋ごと苗を入れて捨てると後片付けが楽ですよ。

レタスの花芽
収穫を続けると茎が丸出しになって不格好になってきますが、スポンジの位置を茎の上のほうに移動させると見た目がすっきりします。スポンジは、茎に挟んであるだけで根が付いていなければそのまま再利用できます。汚れが気になる場合は洗ってから使ってください。

茎をずらしてスポンジを挟む様子

栽培終了した後のスポンジ
基本のレタスの水耕栽培は、動画でも詳しく紹介しています。
3. さらに大きく育てたいなら:100円ショップのバケツで巨大レタス栽培
ベランダなど屋外の日当たりのいい場所に置いておくと、レタスは驚くほど大きく育ちます。例えば、小さい容器で3cmほどまで育てた苗を100円ショップの8Lのバケツに引っ越してみたら、1ヶ月半ほどで超ジャンボサイズに成長しました。ここからは、そのときの容器の作り方と育ち方をご紹介します。

8Lのバケツで育てたロメインレタス
8Lバケツの自作容器
100円ショップの8Lバケツと、カラーボードを用意します。

100円ショップの8リットルバケツ

100円ショップのカラーボード
バケツより一回り大きいサイズに印をつけて切り、表面にアルミテープを貼って遮光し、縁にすきまテープを小さく切って1個ずつ貼ると蓋がずれにくくなります。

バケツの形に沿ってペンで印をつける

カラーボードをハサミで切る

カラーボードの表面にアルミテープを貼る

100円ショップのすきまテープ

カラーボードの縁に隙間テープを貼る
穴は油性ペンの小さいほうのキャップで前後左右に跡をつけるように傾けると簡単に開けられます。穴の数は、大きく育てたい株数に合わせて決めてください(私は3個開けました)。

苗を定植する部分に穴を開ける
1枚のカラーボードで8Lバケツ3個分の蓋が作れました。

カラーボード1枚で8リットルのバケツ3個分作成できる
この蓋の作り方は、第2回の記事でもさらに詳しく紹介しています
バケツで作るときに1つだけ注意したいのが、持ち手です。蓋をはめると持ち手の部分が当たって浮いてしまうことがあるので、その部分は蓋をハサミで切って調整すると、持って移動できるようになります。

バケツの取っ手が当たる部分をハサミで切る

バケツの蓋が完成
最後に、藻の発生を防ぐため30Lの黒いゴミ袋を被せて、容器の完成です。

30リットルの黒いゴミ袋
蓋の自作方法は、動画でも詳しく紹介しています。
定植後の注意点
バケツに1000倍に希釈した微粉ハイポネックスを7L入れ、苗を定植したら蓋の上に石など重たいものを乗せたり、蓋の端を洗濯バサミで固定したりします。この蓋はとても軽いので、風ですぐに飛ばされてしまいます。

水道水に微粉ハイポネックスを溶かす

8リットルのバケツにレタスの苗を定植した様子
定植してすぐの頃は、レタスがしなってアルミテープの蓋に貼り付いてしまうことがありました。2章でご紹介したヨーグルトの空き容器を土台にすると、葉っぱが倒れ込まずに済みます。葉っぱがしっかりしてきたら、この支えは卒業しましょう。

ヨーグルトの容器を苗にかぶせた様子
バケツ栽培のメリット・デメリット
【メリット①】液肥の容量が多いほど大きく育つ:根が広く伸び、肥料切れや濃度変化が起きにくいので、最後までストレスなく育ちます。
【メリット②】液肥の継ぎ足し回数が少なくて済む:7L入ると減りがゆっくりで、数日〜1週間は足さずに済みます。
【メリット③】移動させたいときに楽:持ち手付きなので、日当たりや天気に合わせて簡単に移動できます。
唯一のデメリットは重さです。水の入ったバケツは持ち運びがちょっとした力仕事になります。

8リットルのバケツで育てたサンチュ

8リットルのバケツで育てたサンチュを収穫した様子
【超重要】室内で育てる場合・屋外で育てる場合
バケツ栽培はベランダに置いて屋外で育てたので、日当たりの良さが巨大化の大きな理由になっています。室内で育てる場合は、光の量によって大きさや成長スピードだけでなく、食感まで変わってくる点を覚えておいてください。室内で育てるととても柔らかい葉っぱに、屋外で育てるとスーパーで買うようなしっかりした食感の葉物野菜に育ちます。どちらにもそれぞれの良さがあるので、ぜひいろいろチャレンジしてみてください。虫が気になる方もいるかもしれませんが、秋から冬は虫がほとんど出ない時期なので、屋外栽培を始めるにもおすすめです。

8リットルのバケツで育てたサニーレタス

8リットルのバケツで育てたロメインレと自分
バケツでの巨大栽培の様子は、動画でも紹介しています。
4. まとめ 手間を減らして、大きさも自由に育てる水耕栽培を楽しもう
苗作りも、育てる容器の大きさも、ちょっとした工夫で楽に、そして自由になります。水切りネットなら清潔で面倒な根洗いが不要ですし、容器を大きくすれば野菜は驚くほど大きく育ってくれます。
「自分に続けられるかな…」と心配な方も大丈夫です。材料はどれも100円ショップで手に入るものばかりなので、失敗しても気軽にやり直せます。野菜が高くなったときだけ「どうしよう」と慌てるのではなく、自分で野菜を育てるスキルを身につけておけば、そのたびに一喜一憂しなくて済みます。自分で野菜を育てて食べる小さな幸せを、ぜひ毎日の暮らしに取り入れてみてくださいね。
この記事をきっかけに、ぜひ一度、あなたも水耕栽培にチャレンジしてみてください!

室内の南側の窓際で育てているレタスたち

室内の南側の窓際で育てているレタスたち⓶

















