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夏秋栽培における環境制御の成功事例 -なぜ北海道・伊達地域で環境制御の導入が広がったのか-

夏秋栽培における環境制御の成功事例 -なぜ北海道・伊達地域で環境制御の導入が広がったのか-

環境制御を導入したのに収量が伸びない。データは見えているのに、生産管理に生かせない。そんな悩みを抱える導入者は珍しくありません。しかし北海道伊達地域では、環境制御の導入ハウス数が3棟から31棟へ拡大し、トマト129%、ナス131%の増収を実現しています。なぜ伊達地域ではここまで普及が進み、多くの生産者が成果を出せるようになったのでしょうか。その背景には、伊達信用金庫による「導入して終わらせない」伴走型支援がありました。

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伊達信用金庫 アグリソリューション推進室の皆さん 右:室長 五十嵐さん(技術士:農業部門) 左上:上席調査役 篠原さん 左下:調査役 林さん

環境制御が広がらない本当の理由

北海道の施設園芸を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。高齢化による担い手不足、資材価格や燃料価格の高騰、そして近年の高温化。これまでの経験や勘だけでは、安定した収量や品質を維持することが難しくなってきました。だからこそ、環境制御技術への期待が高まっています。
しかし、環境制御は機器を導入しただけで成果が出る技術ではありません。
温度、湿度、CO₂濃度、日射量、灌水量。これまで見えなかった環境を数値で確認できるようになりますが、その数値をどう読み、どう管理に反映するかは別の話です。
実際、導入当初に寄せられた声の多くは、
•本当に収量が上がるのか
•自分でも使いこなせるのか
•設定が難しそうだ
という不安でした。
伊達信用金庫アグリソリューション推進室長の五十嵐正彦さんは、「環境制御機器を、導入して終わり、にしないことが大切」と話します。環境制御では、機械の操作だけでなく、植物生理や栽培技術を理解した上で、実際の作物の状態と環境データを結び付けて考える必要があるからです。
つまり、環境制御技術の導入を進める多くの産地が直面している課題は、機械の性能ではありません。
『データをどう活用するか』という壁だったのです。

伊達信用金庫が目指したのは「普及」ではなく「所得向上」

伊達信用金庫が「アルスプラウト」に着目したのは令和3年。比較的低コストで導入でき、地域の小型パイプハウスでも導入しやすいことから、地域生産者とともに実証試験をスタートしました。
しかし、その目的は機器を販売したり、導入棟数を増やしたりすることではありませんでした。
五十嵐さんたちが見ていたのは、その先にある農業経営です。
収量が増えても、設備費や電気代が増えてしまえば意味がない。大切なのは、最終的に農業者の所得がどう変わるか。その考え方がすべての取り組みの土台にありました。
だからこそ、伊達信用金庫の取り組みは技術指導だけにとどまりません。
技術を高める。
収量や品質を向上させる。
所得を増やす。
経営を安定させる。

その一連の流れまで見据えながら生産者と伴走し、自立する支援を続けてきました。

新規就農者の清水大樹さんも、その支援を受けた1人です。当初は環境制御を使いこなせるイメージさえ持てなかった新規就農者が、今では自らデータを読み、ナスの生産で反収17tを達成しています。その背景には、「導入して終わりにしない」という伊達信用金庫の姿勢がありました。

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伴走支援が、生産者の自走を後押しした

五十嵐さんたちの取り組みは、3棟の実証ハウスからスタートしました。
実証の成果を勉強会や個別相談で生産者に公開し、導入を決断した生産者には[中純1.1]技術の活用と定着に向けた伴走支援を行っています。また、こうした支援から得られた経験や知見をさらにブラッシュアップし、地域内にとどまらず、道内各地の産地とも情報共有し、地域全体の農業振興につなげています。

特に五十嵐さんたちが重視していたのは、生産者が環境制御を使いこなせるようになるまで伴走し、やがて自らデータを読み、作物を見て、判断し、改善できる状態へ成長していくことです。
清水さんも、その1人でした。
就農当初は環境制御を使いこなせるイメージさえ持てなかった清水さんですが、導入後の1年目、2年目は伊達信用金庫の支援を受けながら栽培管理を学びました。
清水さんは取材の中で、
「1年目、2年目は本当に付いてもらいながらでした。今は3年目で、だいぶ1人でもできるようになりました」
と振り返っています。
この伴走支援を支えてきたのが、約240ページに及ぶ独自マニュアルです。このマニュアルには、伊達信用金庫が蓄積してきた環境制御の操作方法だけでなく、植物生理や栽培管理に関する知見、さらには成功事例から失敗事例まで、幅広い情報が体系的にまとめられています。
支援者が生産者との対話を積み重ねながら、「植物生理とデータ」という共通の物差しで議論できる環境を築いてきた歴史は、このマニュアルの厚みに象徴されています。
そして、このマニュアルが公開され、地域の生産者にとって共有財産として活用されていることが、技術普及を大きく後押しする重要な足掛かりとなったことは言うまでもありません。

「植物生理とデータ」という共通の物差しで、作物を見ながら改善策をともに考える伴走支援

成果が成果を呼び、地域へ広がった

こうした伴走支援の積み重ねは、やがて数字にも表れ始めました。

伊達地域で生まれた主な成果

•就農4年目(環境制御導入2年目)生産者でナス収量17t/10aを達成(令和7年度実績)
•ナス収量13.3t/10a:124%(令和4年度実証試験実績)
•キュウリ収量30t/10a:124%(令和4年度実証試験実績)
•導入ハウス数:3棟 → 31棟(令和3年度→8年度実績)
•導入面積:約300坪 → 約3,400坪(令和3年度→8年度実績)

環境制御による成果は収量向上だけではありません。規格外果実の減少や作業時間の削減も確認されており、生産性向上と省力化の両立にもつながっています。

さらに現在は、清水さんのほ場で、つる下ろし栽培による省力化にも取り組んでいます。
新たな栽培方式では、収量を維持しながら収穫作業時間は10a当たり4時間であったのが2.5時間となり、37.5%削減という成果も見え始めています。
伊達地域では、成果は地域で共有され、次の挑戦へつながります。
生産者同士が情報交換し、成功も失敗も学びに変えていく。実証結果や経験を一部の人だけのものにせず、地域全体で活用する。そうした積み重ねが、導入3棟から31棟への拡大につながりました。

学び続けられる環境が、人を育てる

環境制御が広がらない理由は、機械の性能ではありません。
そして、伊達地域で環境制御が広がった理由も、機械の性能ではありません。
そこにあったのは、
•実証試験
•勉強会
•マニュアル
•個別相談
•生産者同士の学び
という、人が成長できる環境でした。

清水さんも、「最初は全然想像もつかなかった」と話していました。それでも今、自らデータを読み、作物を観察し、判断し、改善しています。
人が育つ。
技術が残る。
地域に広がる。

これこそが、伊達地域で起きていた変化でした。

もし、あなたの地域でも技術普及に課題を感じているのなら

伊達信用金庫の取り組みを、そのまま全国で再現することは簡単ではありません。金融機関だからこそ実現できた部分もあるでしょう。
しかし今回の取材で見えてきたのは、成果の本質は機械でも組織でもなかったということです。
作物を見る。
データを読む。
失敗を共有する。
学び続ける。
その環境を作る。

そうして人が育った結果として、収量が伸び、品質が安定し、地域へ広がっていきました。

それぞれの地域で、「人が育つ仕組み」をどう作るか。
そこにこそ、伊達地域の取り組みから学べる価値があるのではないでしょうか。

学びを支える仕組みも進化している

今回紹介した伊達地域の事例から見えてきたのは、成果につながるのはデータそのものではなく、データを活用する力だということです。
「アルスプラウト」では環境データの取得だけでなく、レポート機能などを通じて、栽培改善や経営判断をサポートする機能の拡充も進めています。
また、生産者向けのオンラインセミナーを無償で開催し、環境制御や植物生理、栽培管理について学べる機会も提供しています。
環境制御は機械を導入して終わりではありません。
データを読み解き、作物を理解し、改善につなげる。

その学びを支える仕組みも、これからますます重要になっていくでしょう。

環境制御への第一歩は、相談から

今回ご紹介した伊達地域の取り組みも、最初から成果が見えていたわけではありません。
「収量を伸ばしたい」
「品質を安定させたい」
「環境制御に興味はあるけれど、自分にも使いこなせるだろうか」
そんな疑問や不安から始まった挑戦でした。
もし同じような悩みをお持ちでしたら、まずはお気軽にご相談ください。
皆さまの栽培環境や課題を伺いながら、「アルスプラウト」活用の可能性を一緒に考えます。
そして同時に、
「人が育つ仕組み」を地域の中でどう作るか。
その視点も含めて、これからの環境制御を一緒に考えてみませんか。

「アルスプラウト」の詳しい情報はこちら

環境制御について詳しく学ぶなら!
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(文・写真:サカタのタネ)

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株式会社サカタのタネ ソリューション統括部
〒224-0041
神奈川県横浜市都筑区仲町台2-7-1
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