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利益アップの実例も!気象ビッグデータで叶える「攻めの農業」

利益アップの実例も!気象ビッグデータで叶える「攻めの農業」

気象庁が保有する膨大なデータを活用して、1キロメートル単位で最新の天気予報を提供するサービスがあります。自分の畑の気象情報をピンポイントで得ることで、収穫量がアップした事例も数多くあるのだとか。農業に有効な気象予報の最前線に迫りました。

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農家のみなさんの日々の関心ごとといえば、作物に影響する気象ではないでしょうか。テレビやインターネットで天気予報をチェックしているけれど、正確性に不満を抱いているという方もいらっしゃるかもしれません。これらの予報は、気象庁が観測している情報のほんの一部にすぎません。気象による作物へのリスクを少しでも抑えるために、気象予報をもっと上手に活用しませんか。

気象予報の最前線に迫るべく、気象ビッグデータ解析による農業用高精度気象予報サービスを提供する株式会社ハレックス代表取締役社長の越智正昭(おちまさあき)さんと、気象予報士及び防災士の資格を持つ酒井紀子(さかいのりこ)さんに、お話をうかがいました。

【関連記事】農家の経験と勘に匹敵!? 気象ビッグデータが拓く「未来の農業」

天気予報が当たらない理由とは

ニュースで見る気象予報はなぜ当たらないと言われるのでしょう?

越智さん ニュースで見る天気予報で「東京は雨」と言われていたのに、自分がいる場所では降らなかったという経験はありませんか。しかし、東京のどこかでは降っているのです。気象庁の発表する天気予報は、あくまで観測台周辺の情報を伝えているだけなのです。

酒井さん 同じ東京であっても、各地で微妙に気象が違ったりします。日本の地形は起伏に富んでいるので、局所的に天気が違うことは珍しくないのです。

越智さん こういった事情があるわけですから、ニュースの天気予報を見て、多くの農家が「当たらない」と言うのは当然のことです。

農業に使える1キロ単位で予測する気象情報

天気予報が当たらない理由とは

越智さん 農業には、ピンポイントの気象予報が必要なのです。しかし、ピンポイントの気象情報がわかる有料サービスを利用するかといえば、そこまでには至らない。
先日、農業関係者の意見交換があって、「この中で有料の気象情報を使っている方」と聞いてみたところ、一人だけでした。みなさんテレビやインターネットのポータルサイトなどの無料の情報だけを頼りにしているのです。

酒井さん 気象庁ではもっと膨大なデータを持っていて、私たちはそれを活用して、1キロメートル単位で最新の気象予報を提供できます。しかも膨大なデータをお客様のニーズに合わせてカスタマイズできます。育てている作物や地域によって、欲しい情報は違いますからね。

収穫時期の見極めで麦農家の利益がアップ

──気象ビッグデータの活用実例を教えていただけますか。

越智さん 麦の穂は、雨が当たる前に刈り取らなければならないことをご存知でしたか。熟した麦に少しでも雨が当たってしまうと芽が生え、品質が下がってしまいます。熟す前に刈り取ってしまうのもよくありません。麦の収穫は、5月末から6月頭の梅雨に差し掛かる時期に行います。旨味が凝縮されておいしい麦は、収穫の時期の見極めが重要なのです。

ある麦農家から「収穫時期に高精度な気象予報が欲しい」という依頼を受けました。そろそろ収穫という時期になり、当社でデータを日々観察しながら、“3日後の午前9時に雨が降る”と予報しました。農家に伝えると、丸3日間夜を徹して収穫したそうです。

収穫後、予報通り9時に雨が降ってきて、依頼を受けた農家から「本当に助かった! それに、収穫までギリギリ粘ったので、今年は品質が最高。平年より2割から3割収入が上がるかもしれない」と言われました。一瞬の判断で、品質も収益もこんなに変わるのです。

広範囲の天気予報だと、その一瞬を読み逃してしまったかもしれない。ピンポイントでわかる気象予報だからこその成果と言えるでしょう。

「農業のプロ×気象のプロ」お互いの知恵が相乗効果を生み出す

──育てている作物によって欲しいデータは違うと思いますが、どのように対応しているのですか。

越智さん そうですね。私たちは気象のプロとしての知識はあるけれど、農業の知識は農家の方には及びません。私たちは農家の方とのコミュニケーションをとりながら、お互いの知識を出し合って問題解決にあたっています。

私はよく農家の方に“夢”を聞くのですが、そこからヒントが得られることが多いです。農家の方からすると夢みたいなことだと思っているけれど、私たち気象のプロからすると簡単に実現できることもあります。

酒井さん 私たちが「こんな情報はいらないだろう」と思っても、農家の方からすれば「喉から手が出るほど欲しい情報だ」ということも珍しくありません。話してみて初めてわかることが、たくさんあります。

気象ビッグデータの活用で広がる農家の未来

──気象ビッグデータの活用で、農業の未来はどう変わるか

越智さん 気象ビッグデータは安定生産という“守り”はもちろん、付加価値をいかにつけていくかという“攻め”の農業にも活用できます。先に挙げた麦農家が好例です。

農家の後継者不足が深刻な問題になっていますよね。若い方が農業をためらってしまうのは、やっぱり不安があるからだと思うのです。結婚して子どもが生まれた時のことを考えたら「この先、農業をやっていて(家族を)食べさせていけるのかな」と。若い方たちが安心して就農できるように、“攻め”の農業で競争力をつけていくことが大切なのではないでしょうか。そのために私たちは、気象という視点から貢献していきたいと思っています。

気象ビッグデータの活用というと、災害などに備える“守り”として活用するイメージでしたが、利益を上げるための“攻め”の農業にも活用できます。農家からの要望やアイデアを取り入れながら、気象予報を日々進化させているというハレックス。今後のさらなる挑戦が楽しみです。

株式会社ハレックス
住所:東京都品川区東五反田2-20-4 NMF高輪ビル3階
電話:03-5420-4311
http://www.halex.co.jp

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