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農家の経験と勘に匹敵!? 気象ビッグデータが拓く「未来の農業」

農家の経験と勘に匹敵!? 気象ビッグデータが拓く「未来の農業」

膨大な気象データをカスタマイズし、それを農業にうまく活用したのが、オリジナルの気象サービスを農家に提供している株式会社ハレックスです。気象に関する高度な知識を持った専門家が、農業をサポートするとはどういうことなのでしょうか。

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農家の経験と勘に匹敵!? 気象ビッグデータが拓く「未来の農業」

一般的な天気予報で得られる気象情報は、予測する範囲が広すぎて、農家からすると十分であるとは言えません。しかし、専門スキルを持ったスペシャリストが膨大な気象データを解析、カスタマイズし、気象に関して農家をサポートするサービスがあります。

気象情報の専門家が、高度な専門知識を活かして農業をサポートする。異分野との取り組みは、日本の農業の未来を明るくしてくれる可能性を秘めています。

気象の専門分野で農家のサポートを行う、株式会社ハレックス。代表取締役社長の越智正昭(おちまさあき)さんに詳しく話をお聞きしました。

【関連記事】利益アップの実例も!気象ビッグデータで叶える「攻めの農業」

農業とは、環境をコントロールする産業

──越智さんは、農業とはどんな産業だとお考えですか。
農業は特別な産業だとは思っていません。農業法人や、熱心で研究心に富んだ農家の方々と話をすると、農業は製造業だとつくづく思います。ものを作るという点では、二次産業の考え方と変わらないのです。日本の製造業は強いと言われていますが、それは定量的に管理しているからです。利益を上げたいと考えるなら、農業も定量的に管理しなければならないですね。

その上で、農業は作物を作るのではなく、環境をコントロールする産業だと思っています。例えば、日本人の主食が米である理由をご存じですか。米は日本原産のものだからです。よく米は中国から伝来したと言われますが、厳密には違います。中国から伝わったのは、大量生産するための技術です。

日本は水稲で中国は陸稲です。東南アジアも水稲ですが、日本はジャポニカ米で東南アジアはインディカ米。同じ米でも種類が違うのです。

ジャポニカ米は、元々日本に自生していたのです。つまり、日本の気候風土に合った植物なわけですから、極端なことを言えば田植えの時期さえ間違えなければ自然に育ちます。

ジャポニカ米は、元々日本に自生していたのです。つまり、日本の気候風土に合った植物なわけですから、極端なことを言えば田植えの時期さえ間違えなければ自然に育ちます。

一方で、トマトやキュウリなどの外来種は、基本的に日本の気候風土と合っていません。だから温室などを使って原産地と似た環境を作ってあげるのです。つまり、環境をコントロールしているのですね。

ところが、日本は北緯25度から45度と縦に長く、温帯もあれば亜寒帯、亜熱帯もあります。さらに国土の70%は山でできており、国土を囲む海には暖流と寒流が流れています。地域ごとに気候がまったく違うため、環境をコントロールするのが難しいのです。

そこで、役に立つのが気象ビッグデータです。

当社では、防災対策レベルで活用できる膨大なデータを持っていたので、それを農業にうまく活用できないかと考えました。

気象情報が、農業の形を変える

気象情報が、農業の形を変える

──“農業は経験と勘”とよく言われますが、気象ビッグデータでこれらをカバーできるのでしょうか。
例えばベテラン農家の方は、山の雪形を見て田植えの時期を決めるなど、自然の変化を目安に判断していたのでしょう。それを“経験と勘”と言っていたのでしょうね。

しかし、その経験値を活かして予測することが難しい時代になってきました。地球規模で起きている気象変動の影響で、季節感や気象に関する言い伝えが微妙に狂ってきているのです。

けれども、やはり農家の方の観察眼はすごいです。農家の庭にはさまざまな花が植えられていることが多いですが、これは「この花が咲いたらこの作物を植える」という自然のセンサーとして活用されているのです。

農業では“経験”と“勘”だけでなく、“観察”も重要なのですね。この“観察”は“計測”に置き換えて数値化できるのです。

毎年、気象庁が桜の開花宣言をしていますが、それも気象を知るための一つの目安です。桜だけではなく、気象庁では鶯の初鳴きや蛍の初見日などあらゆる動植物の観察をしています。観察項目は全部で100種類以上あって、毎年すべてを調べて記録をとっています。これらのデータから「今年は平年並みの暑さ」などと予測をするわけです。農家の庭先の花壇と同じことなのですが、それを数値化して予測に役立てているのです。

私が提唱しているのは、計測して改善するということ。従来の“経験・観察・勘”から、“計画・計測・改善”の考え方になれば、農業はもっと良くなると思います。まずは計測し、それを数値に置き換えます。数値を使って計画・改善していくことで、農業経営は安定し、地域経済の活性化にもつながるのではないかと思います。

農業は総合産業に原点回帰する

農業は総合産業に原点回帰する

──今後、日本の農業はどのような時代を迎えると考えますか。
かつて、農業はさまざまな得意分野を持った人が携わる総合産業でした。中には我々のように気象を読むのが得意な人もいたのでしょう。建物を作る人、農機具を作る人、流通に長けた人もいたでしょう。きっと、町全体を治める政治を担った人もいましたよね。

明治維新以降はそれぞれの職業に分かれて専門化していきました。その中で取り残されたのが農業であると私は考えます。

もし離れていった専門家たちが高度な専門知識を持って農業に戻ってきたら、すごいことになると思います。例えば、私たちだったら気象の専門知識を持っているわけですよね。そういった方々が、自分の得意なことで農業を支える。そういう時代が、そろそろ来るのではないかと思っています。かつてのような総合産業になったら、日本の農業は世界で冠たるものになると私は確信しています。

越智さんのお話は、自然への畏敬の念、農家への尊敬の念で溢れていました。農業に携わる方にとって、切っても切り離せない気象や環境のこと。気象の専門家がサポートしてくれるシステムがさらに構築されていけば、農業の未来はもっと明るくなっていくことでしょう。

株式会社ハレックス
住所:東京都品川区東五反田2-20-4 NMF高輪ビル3階
電話:03-5420-4311
http://www.halex.co.jp

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