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野菜の苗を手掛けるベルグアースに聞く「計画生産と苗づくりの最前線」

野菜の苗を手掛けるベルグアースに聞く「計画生産と苗づくりの最前線」

2017年07月26日

消費者やバイヤーが必要とする期日までに、要望される量を確実に納品するということが、農家に求められる場合もあります。そこで必要となるのが、苗選びです。安定的な収穫を実現するため、均一化されたサイズの苗を作るベルグアース株式会社に、苗業界の最新事情についてお聞きしました。

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農業は、天候不順や生育不良など様々な条件に左右されやすく、生産や収穫がなかなか読めません。「しかし、緻密に計画を立てて生産している農家は、上手くいっている印象があります。農家が売り上げを伸ばすためには“計画生産”をすることが大切だと思います」

こう語ってくれたのは、ベルグアース株式会社・総務課の宮本剛(みやもとつよし)さん。同社は愛媛県宇和島市に本社を構え、日本最大級の閉鎖型苗生産システムを導入するなど、苗業界を最前線で牽引しています。

これからの農業には「野菜ができたから買ってください」ではなく、「消費者やバイヤーが必要とする期日までに、安定した品質の青果物を作り、要望される納品数を確保する」といった、具体的な目標を設定することが求められるといいます。それを実現するのに欠かせないのが苗。今回は、苗業界の最新事情についてお話をうかがいました。

苗の段階で出来栄えの5割が決まる果菜類

写真提供:ベルグアース株式会社

計画生産の一端を担うのが苗業界です。「トマト・キュウリ等果菜類のでき栄えは、苗の段階で5割方決まると言われており、農家はより良い苗を求めます」と宮本さん。

良い苗とは、高品質であることはもちろん、サイズが均一でなければなりません。苗の大きさが異なると成長がバラバラになり、目標とする期日に収穫できない恐れがあるからです。

「当社では、苗は一度根っこを切ることで大きさをリセットし、サイズを揃えながら育てています。根と土がないことで輸送費の軽減ができ、価格を抑える事が可能になりました」

ベルグアースでは、基本的に受注で注文を受けています。「葉っぱが○枚展開しているものが欲しい」、「花芽の大きさは米粒くらいがいい」など農家によって依頼内容はさまざま。中には使う農薬が指定されることもあるそうです。そうした要望を汲み取り、一つ一つ確認を取ってから種まきをしています。

最新設備の導入で、高付加価値の苗を作る

写真提供:ベルグアース株式会社

ベルグアースでは、2006年に日本最大級となる閉鎖型育苗施設を本社農場に設置し、東日本大震災後の2016年には最新型の同設備を福島県に設置しました。天候や季節に左右されない閉鎖型苗生産システムの導入により、温度・光・CO2濃度・風・肥料・潅水などをコンピューターでコントロールしています。

「私たちは震災後の2014年に、いち早く福島に農場を作りました。原発事故の影響で、風評被害などの困難に直面している福島の農業を活性化したいという強い思いがあったからです」

ベルグアースも原発事故の風評被害を受けたそうです。しかし、外的条件に左右されない閉鎖型の苗生産システムの導入などにより、その困難を乗り越えようと現在も挑戦を続けています。

また、閉鎖型の最大のメリットは、病害虫の侵入を最小限に抑えることです。そのため、基本的には無農薬で育った安全な苗を作れるようになりました。さらにトマトの苗では、第1花房着生葉位(だいいちはなぶさちゃくせいようい)の低段化(※)、生育スピードの向上、アントシアニンの増加などが実現でき、高付加価値の苗の安定供給を実現しています。

閉鎖型育苗施設で作られた苗が「e苗シリーズ」です。e苗シリーズを導入した農家からは、「育苗期に無農薬で育てられているため使用可能な農薬の幅が広がり、定植後の防除面にもメリットがある」といった声が寄せられているそうです。

(※)第1花房着生葉位の低段化:トマトが最初につける花房に他の物が付着しないよう樹高を低く抑えること

農業のこれからは、技術革新と優秀な人材の育成にかかっている

写真提供:ベルグアース株式会社

農業全体の高齢化などに伴い、農業従事者の数が減っている今、「これからの農業は“機械化”が大きなキーワード」と宮本さんは言います。もちろん苗づくりも例外ではありません。「当社では、接ぎ木のロボットを導入し、生産力は従来の数倍になりました」とのこと。ただし、精度はまだ低く不安定なところがあるため、人の手のレベルまで上げることが当面の課題だといいます。

同時に、人材育成も重要です。「最新の機械を導入しても、最終的な判断をするのは人だということは、これからも変わらないでしょう。今後は技術者を育てることができる農場が生き残っていくはずです」

最新システムといえども、人が様子を見ながら温度管理をし、水や肥料の量を調整しています。苗はいわば「野菜の赤ちゃん」なので、人間による細かい判断が必要なのです。

「アドバンテージがないところで戦う姿勢というのも、これからの農業では大切になってくるかもしれません。恵まれた環境でなくても、ちゃんとした作物を作ろうとする農家の今後に注目したいですね」と宮本さん。

これからの時代を生き抜く強い農業を目指すためにも、そして、「計画的な生産は難しい」という常識を変えるためにも、最新技術で作られた苗が力になってくれることでしょう。

ベルグアース株式会社
住所:愛媛県宇和島市津島町北灘甲88-1
電話:0895-20-8231
http://www.bergearth.co.jp
※写真提供:ベルグアース株式会社

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