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新規就農前に知っておきたい農業の実態【数字で見る日本の農業vol.1】

連載企画:数字で見る日本の農業

新規就農前に知っておきたい農業の実態【数字で見る日本の農業vol.1】

日本の農業就業人口はどのくらいなのでしょうか? 就農に興味がある方にとってはもちろん、そうではない方にも農業の現実は気になるところ。新規就農者の年齢層は? 女性就農者の割合は? 農業をはじめるときの選択肢は「自営」か「就職」か? 農業に関するさまざまなデータから、農業について探ってみました。

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就農に興味がある方にとって、農業の現実は気になるところ。どんな人が働いているのか?男女の割合はどのくらいなのか? また、就農するとしたら資金も農地も自力で用意するしか方法はないのか?それとも農業関連企業へ就職しながら農家になるという選択肢があるのか。知っているようで知らないことがたくさんあります。

農業に関するさまざまなデータから、答えを探ってみました。

日本の農業就業人口はどのくらい?

181.6万人 66%が65歳以上

日本で農業に従事している人はどのくらいいると思いますか? 農林水産省の農業労働力に関する統計では、平成29年2月時点の概数値は181万6,000人です。この数年のデータを上記の統計から見てみると平成22年は260万6,000人、27年は209万7,000人、28年が192万2,000人となっており、農業従事者は減少傾向です。

農業従事者は高齢化も問題になっていますが、平成29年データで65歳以上の概数値は120万7,000人。66%が65歳以上です。(※1)

新規就農者の年齢層は?

35%は49歳以下

66%が65歳以上と聞くと高齢化が進んでいるように思われますが、新規就農者の年齢層はどのようになっているでしょうか。「定年帰農」という言葉があるように、リタイア後に農業に従事する人の話を耳にすることがありますが、実際はどうなのでしょう?

農林水産省の新規就農者調査を見てみましょう。最新のデータは平成27年のもので、新規就農者数は6万5,000人。うち49歳以下は2万3,000人となっていて、新規就農者全体に占める割合は35%です。さらに44歳以下で見てみると、1万9,800人で30%。

平成26年は新規就農者数5万7,700人のうち1万8,500人は44歳以下となっており、平成26年から平成27年の1年間で1,300人もの若年層の増加が見られます。(※2)

新規就農者全体の推移をこの数年で追ってみると、平成22年5万4,600人、平成23年5万8,100人、平成24年5万6,500人、平成25年5万800人、平成26年は5万7,700人となっており、平成27年でかなり数が増えたといえます。

平成21年は6万6,800人で、平成21から平成27年の間で最も新規就農者が増えていますが、これには理由があります。平成21年は農地法が改正され、農地を所有できる法人の要件が大きく緩和されました。農業ビジネスのハードルが低くなった年であり、就農人口が増加した要因の一つと考えられます。

また平成27年にはさらに農地所有法人の要件が見直される改正があったため、平成26年の新規雇用就農者は7,650人(新規就農者の13%)でしたが、平成27年は10,430人(16%)に増加。1度目の農地放改正があった平成21年同様、新規雇用就農者の増加へ導く結果となりました。

女性就農者の割合

農業就業人口の約半数は女性

注目したいのは女性の割合です。平成27年2月概数値によると、農業に就業する人口181.6万人のうち84.9万人は女性で、全体の47%にのぼります。

一般的に、農業を家業にする家庭の場合、当然ながら女性も仕事に加わっていると思われます。近年の農制度改正により、農業法人に就職する女性が増えていることも女性の就農者が増えている要因でしょう。

一方で農業経営者となって活躍する女性はまだ少ないのが現状です。ただ、農林水産省では農業で活躍する女性のネットワーク強化や就農者増加のために「農業女子PJ(プロジェクト)」も展開しています。今後、女性ならではの視点や気づきによって農業がさらに活性化されることが、今より重要になっていくでしょう。

農地法改正後の企業参入はどのくらい?

平成28年末時点で2,676法人。農地法改正前の平成21年末は427法人で6倍以上の増加です。(※3)

現在、新規就農者が増加傾向にある理由の一つが農地法の改正です。農地法は農地を所有できる個人や企業を規制していましたが、平成21年の改正で緩和され、一般の個人や企業も農地を借りられるようになりました。さらに平成27年の改正では、農業に従事していない企業や個人も農地を所有できるようになったため、企業や個人の参入が増加しました。

そのため、大手通信会社や交通、自動車、金融やアパレルなど、多種多様な企業が農業参入を果たしています。

農業をはじめるときの選択肢「自営」か「就職」か

農地を持たず、農家出身でない人が農業に参入するには、大きく分けて2つの方法があります。

1つ目は農家として起業する方法。2つ目は農業法人への就職、つまり、給料を得ながら、組織の一員として農業に従事する方法です。企業の農業参入が増加しているため、農地法改正以前よりも就職先は増えています。

企業が設立した農業法人には、アグリテックと呼ばれるAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの最新テクノロジーを取り入れたり、農産物の加工から販売まで手がける6次産業化にも着手するなど、企業の特長を活かして幅広く展開していることも多く、自分がどのような分野で農業に携わりたいかという将来像と照らし合わせて就職先を検討することも可能でしょう。企業でノウハウを習得し、ゆくゆくは独立という方法も考えられます。

近年、各都道府県の農業法人の採用担当者と直接話ができる農業イベントも増えていますので、興味があったら訪れてみて、いろいろと質問してみるとよいでしょう。

【関連記事はこちら!】数字で見る日本の農業シリーズ

なお、本記事では農林水産省等、調査データにもとづいて、以下の用語を次のように用いています。

・農業就業人口=15歳以上の農家世帯員のうち、農業のみに従事または農業と兼業の双方に従事したが農業の従事日数が多い者のこと。
・新規就農者=新規学卒就農者(新卒で農業に従事)と前職を退職し就農した者の合計
・新規自営農業就農者=新たに自営農業に従事した者
・新規雇用就農者=農業法人などに雇用された者
・新規参入者=土地や資金を独自に調達し、新たに農業経営を開始した責任者、共同経営者。非農家出身者や新しく家族経営で農業をはじめる者など。または、家族経営の農家で従事した後、経営者から引き継ぐ形もある。

参考
※1 農業労働力に関する統計(農林水産省)
※2 新規就農者調査(平成27年新規就農者調査)
※3 一般企業の農業への参入状況(平成28年12月末)

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