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税理士に聞く「新規就農者のお金の心構え」【ファーマーズマネートーク】

税理士に聞く「新規就農者のお金の心構え」【ファーマーズマネートーク】

2017年07月30日

農業の税金、保険、補助金のこと。法人化のメリットはあるのか? 気になる節税対策は? 税理士・中小企業診断士の資格を保有し、農業経営アドバイザーでもある吉川順子さんに気になる疑問について教えていただきました。

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税理士に聞く「新規就農者のお金の心構え」【ファーマーズマネートーク】

農業に関するお金と言えば、まずは資金調達を思い浮かべますが、意外と見逃しがちなのは、経理のこと。税金や社会保険はもちろん補助金や借入金の処理など、農業の経理はどうなっているのでしょうか。

税理士・中小企業診断士の資格を保有し、農業経営アドバイザーでもある吉川順子(よしかわじゅんこ)さんに、新規就農者がつまずきがちな農業の経理についてインタビューしました。法人化の是非や節税対策など、気になる疑問について教えていただきました。

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農業の税金、保険、補助金のこと

――新規就農される方が、お金の面で気を付けることはありますか?
よく税金や社会保険について質問されるのですが、農業も基本の考え方は他の分野と変わりません。個人事業主なら、所得税・住民税・国民健康保険・国民年金の4つに、事業が大きくなれば消費税が必要になります。

――農業だからと特別に考えなくていいんですね
新規に農業を始めるということは、業務内容がこれまでと大きく変わるということ。その上、経理のことも新しく覚えるとなると、大変ですよね。また、自分で学ぼうという意欲があっても、農業の経理に特化した書籍などは少ないのが現状です。

新規就農は、“脱サラして起業するケース”と同じだと考えたらよいと思います。もし書籍で調べようと思うのなら、そういった書籍を参考にするとよいでしょう。脱サラには当てはまらない、農業特有の対応が必要な場合は、やりながら知識を付けていけば、十分だと思います。まずは脱サラで起業するパターンを参考に、自分で税金や保険、年金の処理を行ってみて、必要な時に農業経営アドバイザーや農業分野に強い税理士・コンサルタントに相談すればよいのではないでしょうか。

農業だからと特別に考えなくていい

――初年度に、設備投資や生活費以外に見込んでおく必要のあるお金はありますか?
これも一般の起業と同じですが、住民税と国民健康保険は前年度の収入に応じて金額が変わります。そのためこれらの分は、予め経営計画に織り込んでおいた方がいいですね。就農初年度は、作物を収穫するまで収入がゼロになることも珍しくありませんが、住民税と国民健康保険は支払いを行わなければいけません。

――補助金や借入金についての相談も受け付けているのでしょうか?
もちろんお聞きしますが、基本的にはJA(農業協同組合)や資金を提供する金融機関、自治体へおつなぎすることになります。借入条件や補助金の要件は変わりますし、どの補助金や資金が自分に合うのかも、各窓口で相談に乗ってくれます。金融機関に出向く際に、我々税理士が同行することも可能ですよ。

本当によく聞かれる質問なので、お答えしておきますと、補助金は収益として法人税や所得税の課税対象になりますが、借入金はなりません。また、借入の返済金は経費にはなりません。

法人化のメリットはあるのか?

法人化のメリットはあるのか?

――就農に当たって個人事業主を選ぶか、法人化するか悩む方も多いと思いますが、法人化のメリットはありますか?
こちらも他の分野と同様、法人化によって借入の枠が大きくなったり、法人ということで対外的な信用力が高まったりします。また、細かい点で言えば、法人化すると社会保険への加入が義務付けられます。そうすると国民健康保険の保険料は、前年収入でなく設定された給料に応じて決められますので、人によっては保険料の負担が減るケースもあります。

税金面では、たとえば赤字を翌年以降に持ち越して、翌年以降黒字になった時に赤字と相殺できる制度があるのですが、個人の赤字の持ち越しは3年であるのに対し、法人は9年(平成29年7月現在)です。

個人事業の場合は、自分自身に給料や退職金を払うという概念はなく、自分の取り分はそのまま全額所得税の対象となります。一方、法人経営の場合は自分に払ったものでも給料や退職金として一旦法人の経費になるため、節税になります。法人経営で給料を受け取る側も、給料や退職金に対して丸々所得税の対象になるのではなく、一定の金額を差引いた残りに対して所得税がかかるため、節税となります。

農業ならではの法人化のメリットは、既に農地を持っている既存農家や、これから農地を取得して大規模な農地で農業経営を行っていこうとする新規就農者にあります。農地の取得は、農地法により農業委員会の許可が必要になるなど、一般の不動産売買と異なることは知られていますが、個人に農地が紐づいていると、承継や相続時に手続きが煩雑になりがちです。

たとえば、個人で農地を取得していても、相続によって土地が細かく分割され、農地としての利便性が下がるおそれもあります。安定した経営を考えるなら、法人化して農地を“法人の資産”にしておけば、万一経営者が亡くなった場合でも、所有権の移動は起こりません。

個人事業で農業を営んでいた親御さんから、農地を受け継いで農業を始める場合、または自分で農地を取得し大規模な農業経営を行っていきたいと考える方は、法人化することも1つの選択肢として検討してみてもよいのではないでしょうか。

――補助金申請で、個人事業主と法人ではどちらが有利でしょうか?
公募系の補助金は、要件に当てはまっていれば、法人・個人は関係ありません。

――法人にする場合、役員報酬を決定する必要があるかと思いますが、どうやって決めたらよいでしょうか?
新規就農される方は、社員がご本人とご家族、中小企業であることが多いと思います。その場合は、事業計画をもとに、会社と起業された方ご自身の税金がもっとも安くなるように設計することが多いです。これは、税理士の得意分野ですので、相談してみると良いと思います。

気になる節税対策は…?

気になる節税対策は…?

――農業の業界ならではの節税対策はありますか?
新規就農でいきなり利益を上げるのは至難の業ではありますが、交付金を受けた方に役立つ制度として「農業経営基盤強化準備金制度(*1)」があります。

交付金を「準備金」という名目で必要経費(法人の場合は損金)として計上ができるものです。交付金を受けた年の所得(売上-経費)が減額となるため、所得税・法人税が減額されます。

さらに、積み立てた準備金を利用して農地や機械などの固定資産を購入した年には、取り崩した準備金を必要経費(損金)に計上することができるため、同じように所得税・法人税が減税されます。農地など高額の固定資産を購入した年に、所得税・法人税を余分に支払うことがないため、キャッシュフローの面からも大変有効な方法です。

――個人でも法人でも利用ができるのでしょうか?
個人でも法人でも利用できますが、事前に申請が必要で、個人、法人問わず青色申告が必要です。また、取得する固定資産にも条件があるので、不安な方は税理士に相談するといいかもしれませんね。

――ありがとうございました!

農業は、個人で起業する場合でも、機械などの設備投資が大きく、経理処理も複雑と思われがちです。また、農業を特別視する傾向が、農業経理に対するハードルを高くしている面もあるでしょう。しかし、基本の部分は他の分野における起業と同です。お金の流れをきちんと把握することは、事業を続ける上で欠かせないこと。時には専門家の力を借りつつ、農業とお金への理解を深めてみてはいかがでしょうか。

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吉川順子

吉川順子
税理士・中小企業診断士。農業経営アドバイザー。静岡県沼津市出身。
静岡大学在学中、中国に1年間語学留学(湖南省岳陽市)。卒業後、英会話講師、税理士事務所を経て、2014年10月、吉川順子税理士事務所を開業。その後、2016年9月、中小企業診断士登録。2017年1月、農業経営アドバイザー登録。

吉川順子税理士事務所
http://77junko.com/

参照
(*1) 農林水産省 農業経営基盤強化準備金に係る手続について
http://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/n_seido/junbikin_tetuduki_shiryou.html

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