かぼすもすだちも日本料理には欠かせない素材です。
どちらも独特の香りと酸味を持ち合わせており、「香酸柑橘」と呼ばれます。
かぼすとすだち、それぞれの特徴や違いをご紹介します。
かぼすについて
ゆずの近縁の柑橘といわれ、すだちよりひとまわり大きく酸味が強めです。
1個の重さが140gほどで、テニスボールくらいの大きさです。
主に大分県で栽培されています。
漢字では臭橘という字が当てられており、昔から皮をいぶし、蚊やブヨを除ける薬として利用されてきました。
ここから「カイブシ→カブシ→カボス」になったと言われています。
市場には1年中出回っていますが、9、10月が最盛期で、2から5月は少なくなります。
地元大分県では、ふぐ料理に使われることで知られています。
すだちについて
すだちもゆずの近縁の柑橘で、かぼすと同じミカン科ミカン属です。
1個の重さは40グラムほどの小ぶりの柑橘です。
主に徳島県で生産されており、若い実のほうが、風味が良いことで知られています。
すだちは、昔からその果汁を食酢として利用していたことから「酢橘」と呼ばれるようになり、これが名前の由来になったとされています。
こちらも1年中出回っていますが、最盛期は9、10月です。
日本料理では、まつたけに合わせて利用されていることでおなじみです。
1974年には徳島県の花に指定されました。
それぞれの歴史
すだちは1709年に初めて書物「大和本草」にその名前が紹介されました。
徳島県内には樹齢200年ほどの古木もあり、栽培が始まったのは江戸時代からといわれています。
かぼすは枝にトゲがあり、原産はヒマラヤ地方とも言われます。
江戸時代に、この地方の医師が中国の僧から譲り受けて持ち帰り、300年ほど前から生産されていたとされます。
しかしこの時は主に、自家用や医療用(風邪予防、整腸、ヒビ・アカギレ等)としての利用でした。
経済栽培されるようになったのは1971年以降と言われています。
それぞれの使い方
食品成分表によると、全果に対するかぼすの果汁ぶんは35%、すだちは25%となっています。
どちらも果汁を絞ったり、皮を薄切りやすり下ろしにして使用します。
サンマの塩焼きやうどん、お吸い物などの料理に添えるのは定番の使い方ですね。
また、どちらも添え物としての利用だけではありません。
果汁や果皮をジュースやお菓子、お酒などに入れることもあります。
特にお酒は直接絞って果汁を入れるほかに、リキュールが販売されていることもあります。
このような使われ方で、その酸味と香りが楽しまれています。
すだちは種が多く、この種は苦いため、食べるときは種を取り除くとおいしくいただけます。
鮮度と選びかた
どちらも表面にツヤとハリがあり、皮に黄色味のないものを選びます。
それぞれに同じ大きさのものがあれば、より重みを感じられる方を選びます。
柚などは黄色く色づいているものを選びますが、かぼすやすだちは少し早めの緑色のときの方が風味のよい柑橘です。
皮が黄色味がかってきたものは熟してきた証拠で、酸味や香りが落ちますので避けたほうが良いでしょう。
黄色味がかった果実のまろやかな酸味や香りが好きな方もいるので、お好みしだいですね。
自宅で追熟させてみるなど、自分好みの風味を探してみるのも良いかもしれません。
保存方法
保存はどちらもポリ袋に入れ、空気を抜いて冷蔵します。
長期保存のときは搾汁して小瓶に入れたものを冷蔵庫で保管したり、製氷皿に搾って冷凍したりするとよいでしょう。
製氷皿で冷凍する方法だと、使いたいぶんだけ取り出すことができるのでおすすめです。
すだちとかぼすの効能
現在は薬味としての利用が主で一度にたくさん摂取できるわけではないので、生で大量に食べる柑橘類に比べると効果は小さいかもしれません。
ですが、使い方次第では、生食の柑橘類より簡単に取り入れることができ、さまざまな効果を持ち合わせています。
減塩効果
どちらも酸味や風味が強いため、塩分の多いしょうゆなどの調味料を減らしその分を代用しても満足することができます。
疲労回復効果
果汁には多くのクエン酸が含まれ、疲労回復の効果があるとされています。
さらにクエン酸には、食欲の増進やミネラルの吸収を促進する作用も期待できます。
夏の暑い日、たくさんの汗をかいて疲れた時などに、搾った果汁を入れた飲み物を飲んだりドレッシングに利用したりと、工夫して取り入れてみましょう。
美肌効果・抗酸化作用
かぼすもすだちも、ビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCはコラーゲンの生成を促したり、シワやシミの予防・美白効果など、肌をキレイに保つ効果があります。
風邪予防や免疫力を高めたりする作用も期待されます。
ただしお肌に栄養素が使われる優先順位は一番最後といわれていますので、普段の食生活を整えておくことも大切です。
アロマテラピー効果
香りの中に含まれる主成分のリモネンなどは、アロマテラピー効果に優れています。
リラックス効果やイライラを鎮めて、ストレスを和らげる効果が期待され、血行を促進します。
リモネンは、抗ウィルス作用や抗がん作用もあるという点で注目されている成分です。
食欲を増進する効果もありますので、食欲が落ちがちな暑さの厳しい時期、食事や飲み物に加えるにはぴったりです。
すだちは抗肥満効果も期待されている
すだちの果皮にはスダチチンという成分が含まれています。この成分には抗酸化作用があるといわれています。マウスへの投与実験の段階ではありますが、体重を抑制する効果や糖・脂質代謝の改善効果が確認されています。ヒトに対しても抗肥満・抗糖尿病作用がある可能性が示されており、実際に有効かどうかは研究の成果が待たれるところです。もし有効であれば、現在は加工段階で廃棄されている果皮が、サプリメントなどのかたちで利用できるため、期待が高まっています。
すだちとかぼすの違いは、その大きさと産地によって簡単に判別できることをご紹介しました。一般的には「すだちはかぼすより皮が薄く、香り高い」と言われます。一方で「かぼすのほうが強い酸味と香りがある」と言われることもあり、感じ方は人それぞれです。香りの違いも含めて、自分の好みがどちらなのか、食べ比べてみるのも楽しみのひとつですね。