薬膳の世界から見たミカン
薬膳の世界でミカンは、皮と果実を分けて考えます。実の五気は涼、五味は甘と酸、皮の五気は温、五味は苦です。この性だけを見ても、薬膳的には皮と果実では作用が全然違うということがわかります。ひとくちにミカンといっても、たくさんの品種が存在し、温州ミカンに、夏みかん、レモン、ダイダイ、オレンジ、ユズなどたくさんあります。ミカンの仲間の効用は大同小異で、どの品種にしてみても、主に皮にパワーがあるとされています。皮を干したものが橘皮(キッピ)、陳皮(チンピ)と呼ばれるものです。
ミカンの実は食欲増進や二日酔いにも効果的!
ミカンの仲間の働きは比較的皮の方に多いとはいっても、果実やタネ、根にもパワーがあります。ミカンの実を食べたり、汁を絞って飲むことで、体の水分を補って胃を和ませる働きをしてくれます。胸のあたりに何かつかえたような感じがして食欲が出ない時に食べたり、ミカンジュースを口にしたりすることで食欲を増進させます。
手が黄色くなっても大丈夫?
ミカンを食べすぎると、手が黄色くなるというのはよく言われる話ですが、これは乾皮症という症状です。確かにミカンをたくさん食べると手のひらなどが黄色くなることがありますが、食べるのをやめれば自然と元に戻るので何も心配することはありません。
ミカンを多食してはいけない人
最初に紹介したように、ミカンの実の性は「涼」です。そのため、ミカンを食べ過ぎると体が冷えて、トイレが近くなってしまったり、まだ小さい子どもの場合は寝る前に食べるとおねしょをしてしまうことがあります。
そのほかにも、冷え性の人、腎炎、膀胱炎を起こしやすい人はミカンの実を食べ過ぎないよう注意した方がいいでしょう。また、喘息の人も、実に含まれる酸味が原因で痰や咳が出やすくなってしまうので、多食しない方がいいとされています。
ミカンの薬膳的利用法
風邪や咳にはミカンの皮や陳皮を煎じて
風邪の時に効果的なのが、ミカンの皮や、古いミカンの皮(陳皮)を煎じて飲むことです。新鮮な皮の場合は30g、陳皮がある場合は15gをコップ3杯の水で煎じます。水の量が3分の1ほどになったら、適量のハチミツを入れて飲みましょう。咳にはミカンの実はお勧めできませんが、皮は大丈夫です。
冷え性にはミカン風呂
ミカンの皮を乾かしてネットなどに入れて、湯船に浮かべると体が温まるので、冷え性の方におすすめです。ミカンの爽やかな香りで心も体もリラックスできます。
冬の風物詩、身近な果物ミカンを薬膳の観点から紹介しました。ジューシーな果実がおいしいミカンですが、薬膳的に見ると皮にも使い道がたくさんありそうですね。いつもミカンの皮を捨てていた!という方は、ミカン風呂からでも薬膳生活をはじめてみてはいかがでしょうか。
参考書籍:『台所薬膳 身近な食べ物135種の薬効を活かす』(万来社)