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新たな家庭農園のスタイル「ポタジェ」とは オーガニック視点で考える農業のススメvol.1

新たな家庭農園のスタイル「ポタジェ」とは  オーガニック視点で考える農業のススメvol.1

生活の一部としてもらうためのオーガニック情報専門メディアGON(Global Organic Network)日本語サイト編集長の中村です。この連載ではオーガニックという視点から見た農業について紹介してまいります。今回のテーマは「ポタジェ」です。

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こんにちは。オーガニックの魅力を伝え、生活の一部としてもらうためのオーガニック情報専門メディアGON(Global Organic Network)日本語サイト編集長の中村です。この連載では、オーガニックという視点から見た農業について紹介してまいります。今回のテーマは「ポタジェ」です。

ポタジェとは、さまざまな野菜やハーブ、草花などを混植した菜園のことを意味します。中世、フランスの修道院から始まった植栽手法で、その語源は、フランス語の「ポタージュ(混ぜる)」だそう。新しい家庭菜園の形として注目され始めたポタジェについて、ポタジェ・アドバイザーの藤井純子さんにお話しをうかがいました。

ポタジェが静かなブームになっている

このところ、「ポタジェ」という言葉に触れる機会が多くありました。

最初は6月初旬、主催団体として名を連ねている展示会「オーガニックライフスタイルEXPO」(2017年7月29・30日 東京国際フォーラム)にご協力いただいている学研プラス「野菜だより」編集長の坂田さんに書籍『Green Finger ポタジェ~小さな庭が与えてくれる恵みと幸せ』を見せてもらった時。この書籍で「ポタジェ」とは何かを知ることができました。

次に耳にしたのは、東京都・港区お台場にある「都会の農園」のリニューアルオープン発表会に参加した時です。この農園は2012年から東京湾を望むビルの屋上で貸農園を運営しています。今回、森里川海の保全と都市部の人たちとをつなぐ環境省の『つなげよう、支えよう森里川海』プロジェクトとの連携によって、貸農園の一部をより環境に配慮したポタジェ形式に改装されたそうです。

ポタジェ

ポタジェの教科書の著者、藤井さんから詳しく話をうかがう

今回は、私がポタジェという言葉を知るきっかけとなった書籍『Green Finger ポタジェ~小さな庭が与えてくれる恵みと幸せ』の著者である藤井純子(ふじいじゅんこ)さんをご紹介いただき、直接お話しをうかがいました。

2001年から、原生林が周辺に残る札幌市郊外でポタジェをスタートさせた藤井さん。さっぽろ農学校で農業の専修コースを修了されているため、農学知識や栽培技法は確固としたものをお持ちです。2017年5月に上梓されたばかりの書籍が“ポタジェの教科書”と題されているのも納得です。

また、『Green Finger(みどりのゆび)』は、植物を上手に育てる人のことを「緑の指を持つ人」ということにちなんでいます。植物からのメッセージを心や指先で敏感に感じ取りながら育てることをコンセプトとされていることがわかります。

ポタジェ

藤井さんが大切にしているポタジェを始める前の6つのキーワード

ポタジェは、自分が育てたいと思う植物を自由に選び、組み合わせて植えることのできる自由な空間です。そのため、広さに条件はありません。しかし、藤井さんは植物を選んだり、庭あるいはプランターの植栽デザインを描いたりする前に6つのキーワードを大切にしているそうです。

少量多品種

野菜だけ、草花だけにするのではなく、さまざまな種類の植物をバランスよく植えることを重要視しています。たとえば、ジャムづくりやリース作りなど、目的に合わせたテーマで組んだり、自分の生活のリズムに合わせて育てやすいものを組んだりするなど、少しずつ複数の品種を組み合わせます。

混植

少量多品種での組み合わせができたら、いくつもの植物がともに育つ自然の野山をモデルに、多種多様な植物を混植します。特に、一緒に植えることでお互いに良い影響を与え合う「コンパニオンプランツ」や「バンカープランツ」の組み合わせを覚えておくことをお勧めします。

植物の生態

育てる植物の仲間や相性がわかる植物の科目や植物本来の生育環境を教えてくれる原産地を覚えておくととても便利です。植え付けや植え合わせ、栽培に適した時期を知ることで、ベストなタイミングで植物の手入れをすることができます。

エコロジカル

植物や虫、動物、微生物など、自然の生態系を壊さないよう、農薬は使わないようにしています。また、ビニール資材もなるべく使わずに自然環境にも気を配り、できれば、有機農業や自然農法でポタジェを作ることを理想としています。

月のリズム

自然に寄り添うポタジェは月のリズムが不思議と調和しているように感じられ、月の満ち欠けに合わせて、種まきや収穫をしています。ただし、月のリズムは最優先にするのではなく、天候や栽培適期、植物の生育具合を見ながら無理なく利用しています。

ホリスティック

土や植物に触れることは、心とからだのバランスを整える効果があると感じています。実際にポタジェを始めて、健康で豊かな暮らしや癒しがもたらされたように思えます。

ポタジェ

2015年7月中旬頃の藤井さんのポタジェ。この年は春から夏にかけて野菜46種、ハーブ46種、果樹5種を育てたという

ポタジェで育った植物たちを収穫する楽しみ

苗から植えることで、そんなに時を置かずに収穫できるものもあるそうです。多品種に挑戦すれば、収穫物の多い夏や秋にはポタジェで育った野菜や果樹ハーブを使って、いわゆる「ポタジェパーティー」を開くのも夢ではありません。食べきれないものは、冷凍したり、乾燥させたり、漬物にしたりとさまざまな加工をして保存をすることで、長く楽しむことができるそうです。

また、在来種や固定種で育てた野菜やハーブなどは、その種も大切な収穫物です。丹念に種を採って、来年用として備えたり、仲間と交換して品種を増やしたりすることもあるそう。これらの行動もポタジェを継続するための要素の一つとなっていくでしょう。

藤井さんからうかがった話から、ポタジェを通して、季節の移り変わりと自然の息吹を身近に感じられることがとても素敵なことだと思いました。

ポタジェはプランター1つから、気軽に始めることができます。季節の野菜や果物を味わい、美しい草花や虫たちに囲まれて一日一日をていねいに暮らす。そんな楽しみ方ができるポタジェをぜひ、始めてみませんか。

編集:ビール女子編集部

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