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花業界に新しい風 成長を続ける花屋「ex. flower shop & laboratory」の取り組み

花業界に新しい風 成長を続ける花屋「ex. flower shop & laboratory」の取り組み

花業界で働く人、花の生産者、消費者も「より幸せになれる花屋」を作りたいと、2013年に「ex. flower shop & laboratory」をオープンした田中さん。花の定期便サービスや、カフェを併設した花屋の展開など様々な取り組みについて迫ります。

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花の美しさや花屋の持つ世界観に憧れる人も多い花業界。しかし、労働環境が厳しいことなどから、働く人が定着しにくい側面もあるそうです。また、花屋経営の難しさや花の個人購入額の減少傾向など、花業界全体の課題は様々です。それを少しでも改善したいと、新しい仕組み作りを模索しているのが東京・中目黒と蔵前で花屋「ex. flower shop & laboratory(イクス フラワーショップ アンド ラボラトリー)」を運営する田中彰(たなかあきら)さんです。
花業界に身を置いて、10年。見えてきた課題に、どう立ち向かい、新しい挑戦をしているのでしょうか。

関連記事:花との新しい出会い方を提案する「ハレとケ定期便」に込められた思いとは

独立のきっかけ 花業界の「当たり前」に抱いた違和感

大学卒業後、大手ガラスメーカーに就職した田中さん。花とはかけ離れた暮らしでしたが、縁あって日本を代表するフラワーアーティストの創作活動に参加することになったそうです。週に1度の活動が1年ほど続き、それをきっかけに花に魅せられ、花業界に転身。花屋に就職しました。花の知識も技術もなく、ゼロからの出発だったと当時を振り返ります。

「水揚げから始まり、店舗での接客、ホテルなどの大会場の装花、ウエディングなど、さまざまな花の仕事を体験できたことに、とても感謝しています」と、田中さん。
2年弱の修行が、4、5年にも感じられたというほど過酷な日々だったようです。

「漠然と、いつかは独立して自分で会社を」と考えていた田中さんですが、背中を押してくれたのは、「これでいいのかな?」という問題意識でした。

早朝から深夜に及ぶ長時間労働、賃金水準や職業としての社会的評価など、花業界全体が抱える課題を当たり前のこととしてやり過ごしていいのか、と思ったのです。

「たとえば、早朝の仕入れでどんなに疲れていても、花に触れると癒されます。花を束ねていると時間が経つのも忘れてしまうほど没頭するし、幸せな時間です」。

そのような花の魅力に甘えてしまって、厳しい労働環境などの現実を省みなくてもいいのか。今の時代に合った働く人にとって、幸せになれる新しいスタイルの花屋を作りたいと、2013年、東京・中目黒に、自身の花屋「ex. flower shop & laboratory」1号店をオープンさせました。

チャレンジ精神が生み出した「ハレとケ定期便」

田中さんが、花業界に新しい風を取り込もうとする思いの強さは、店名にも表現されています。
店名の「ex.(イクス)」とは、店に立ち寄った人が、花や緑の魅力を体験(experience)できる場所であり、花屋である自分たちが、その価値を伝えるために試行(experiment)を繰り返す場所でもある、という意味。「laboratory(実験の場)」は、花業界に携わる人々が幸せになる手段を見つけるために、花と向き合う日々の中で、試行錯誤を繰り返す。そんな思いが込められているそうです。

その試行錯誤のひとつが、2017年4月から始まった、「ハレとケ定期便」です。毎月、旬の新鮮な花と、その花を育てる生産者の栽培の様子や花への思いなどを紹介する「花の新聞」が会員に送られるサービスです。実際に花屋に足を運べば、花に囲まれた空間の中で、自分の直感で花を選ぶことができます。しかし、花屋に行けなかったりネットショップで買い物を済ませたりする方は、花に直接触れることはできません。だからこそ、ひとつの花にスポットライトを当て、その花を深く丁寧に紹介していくことができるのではないかと、田中さんは考えたのです。

花の新聞を通して、花の構造や花の扱い方、生産者の思いなどをじっくり読み、1本の花に隠されたストーリーを深く知ることができる「ハレとケ定期便」。花屋での限られた滞在時間では聞けないことですし、インターネットで知ることも難しい。今までにない新しい花の体験になるはずだと田中さんは信じ、サービスを開始しました。
また、花の新聞の取材や記事の執筆、編集などの制作は、「ex.」のスタッフが行っています。花の新聞の制作を通じて、より専門的な花の知識が身につくので、店頭での接客にも役立っているそうです。また、「一般的な花屋では経験できないような業務に、スタッフも熱心に取り組んでいます」と田中さんは言います。
生産者と花屋と消費者、みんなが満足できる「ハレとケ定期便」は、まさに「ex.」という店名そのものの取り組みなのです。

異業種であるカフェとのコラボレーションなど、花屋の可能性は限りない

田中さんの新しい試みは、インターネット上に留まらず、リアルの場にも及びます。そのひとつが、2016年、東京都台東区蔵前に出店した「ex.」2号店。天井が高く、倉庫のような広い空間で、カフェと空間をシェアするスタイルの花屋です。

「カフェという異業種かつ、“暮らしの中にある”という花屋との共通テーマもあり、コラボレーションに価値を感じたんです」。また、カフェのオーナーは中目黒店の常連の方だったので、花屋の世界観も十分共有されています。「新しい化学反応が起きるに違いない」と田中さんは出店を決意しました。

花をもっと身近に。花の注文はLINE(ライン)でも可能

そしてもうひとつの「ex.」のサービスが、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のLINE(ライン)を活用した花のオーダーです。花束や花のアレンジメントなどがLINEで注文でき、決済までを行えます。

「店に来てもらえればいいのですが、花屋は敷居が高い、と感じる方もいらっしゃるようです。でも、大切な人への贈り物だからインターネットでワンクリックするだけで購入するのは味気ない、忙しくて来店できないなど、みなさんいろいろな事情があります。LINEを使えば、インターネットショップとも違って、店に置いてある花を画像ですぐに送れるし、会話形式で気軽に花のことや料金のことなどを何度でも相談できるので、利用しやすいみたいですね。ありがたいことに、毎日いくつもLINEで注文が入っています」。

花のオーダーにLINEを活用することで、生産性の向上につながっていると田中さんは言います。このような業務効率化の積み重ねが、労働環境の改善や消費者がより利用しやすいサービスを生み出す一歩になっているようです。

「多くの方に花に親しんでもらい、花について一人一人が正しい知識と深い関心を持つようになれば、花業界全体がよりよい方向に向かっていくのではないか」と信じ、田中さんは挑戦し続けています。

関連記事:花との新しい出会い方を提案する「ハレとケ定期便」に込められた思いとは

ex.flower shop & laboratory

http://www.ex-flower.com/

ハレとケ定期便

http://faretoqe.com/

BOATNIC Inc.

http://www.botanic.in/

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