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農家から食卓まで〜知ってるようで知らない卸売のヒミツ3

農家から食卓まで〜知ってるようで知らない卸売のヒミツ3

2017年09月17日

農産物の卸売業者にスポットを当てた「卸売のヒミツ」。第1弾では卸売の歴史について、第2弾は卸売業者の役割や必要とされる理由についてご紹介しました。
シリーズ第3弾となる今回は、生産者と小売業者とをつなぐ卸売業者を排除した場合、市場にはどのような影響が出るのかをテーマにお届けします。

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JAが掲げる流通改革案

第2弾の記事で、卸売業者は小売業者に対し、需給調整の役割を果たしていることをお伝えしました。小売業者がその時に必要とする各商品の数量を安定的に提供できる点は、卸売業者の存在意義として大きなポイントです。スーパーやコンビニなどで商品が在庫切れとなったまま何日も経過すれば、その被害は消費者に大きく影響していきます。そのような事態を防ぐ上で、卸売業者と卸売市場が機能していることは、私たちの生活に大きな意味を持っているといえます。

商品の流通においては、以前から卸売業者を通さないスタイルが模索され続けています。農産物に関しても同様で、直近では2016年に農協(JA)が掲げた改革案に注目が集まりました。要約すると、収穫された農産物の出荷団体として大きな勢力を持つ農協が、卸売業者に代わって直接小売業者や加工業者への提供を行うというものです。これにより中間マージンが削減されるため、小売業者ひいては消費者が、より安価で商品を購入できるメリットがあります。また、同じ理由で生産者は農産物の価格を高く設定できるのも利点です。政府が推進する農政改革の要請に応える形で農協が発表した流通改革案ですが、現状ではその効果は薄いです。それはなぜでしょうか。

直接販売事業に勝る、卸売業者の信頼性

農協の直接販売事業は昭和の時代からすでに行われてきました。その販売高のピークは1985年から1990年頃で、以降は下降線を辿っています。1990年頃といえば、バブル景気の終焉とその後に続く不況が訪れた時期。全国が不景気に巻き込まれる中、消費者の心境としては少しでも安く商品を購入したかったでしょう。それにもかかわらず農協の直接販売が低迷したのは、価格だけでは補えない理由が関係しているからです。

流通の世界で長い歴史を持つ卸売というシステムや、そこに介在する業者は、生産者と小売業者との間に位置する立場として、両者と信頼関係が構築されています。この信頼関係により、卸売業者に入った商品は厳しい品質管理が行われているのです。「食の安全」が問われる時代となって、結果的に卸売業者が担う品質管理機能や、そのノウハウが安価な取引というメリットよりも勝ったというわけです。

流通に関わる全てのファクターで重大なテーマ

卸売業者の品質管理能力は、マーケットにおける重要なフィルター役を果たしているというのが現状です。この事は、生鮮食品としての農産物を消費者に提供する小売業者にとって、非常に大きな意味を持ちます。卸売業者を通さずに商品を仕入れるということは、それらの品質管理について自己責任を果たさなければなりません。特にチェーン展開する大型スーパーやコンビニエンスストアなどは、大量仕入れが必要なため、品質の良い商品を揃えるには多大な手間や経費がかかってくることになります。

品質管理の徹底は生産者にとっても重大なテーマです。流通の過程で粗悪品が見つかったり、消費者が口にした後で事故などが発生したりするケースは現在でも起こり得ます。その中に、自身が生産した農産物が含まれていれば、例え品質管理の状況がわからなくても信用問題に発展しかねません。

もちろん、農協が再強化を図る直接販売事業においても品質管理への施策は講じていますが、安定した需給調整と商品調達そして品質管理といったそれぞれの役割において、長い歴史で培ってきた卸売業者の信頼性と、ノウハウが総合力で上回っていることは想像に難くありません。そのあたりをよく知っている農協側も過度なリスクは避け、直接販売事業では注目されるほどの目標値を設定しなかったようです。どちらかといえば輸入肥料の導入によるコスト削減に舵をきっています。

拡大が続く輸入農産品と卸売の関係

生鮮品の中でも国内産が強いとされてきた青果物ですが、近年では、外国からの輸入も目立ってきました。2016年における輸入野菜の数量は前年比で12%増という統計もあり、国内の生産者にとっては脅威となっています。

 

(引用:農業協同組合新聞)

http://www.jacom.or.jp/yasai/news/2017/05/170512-32638.php

一方で、価格の安い輸入野菜は小売業者や外食産業など、消費者を顧客とするマーケットからは高い支持を得ています。中国産のシイタケや長ネギなどは、その代表例といえるでしょう。

以前と比べて安全性や品質が向上したといわれる輸入野菜ですが、国内産に比べれば不透明な部分も否めません。それらを実際に口にする消費者としては、信頼できる輸入野菜を購入したいところです。

そういった観点からも、卸売業者の存在は大きな意味を持ちます。輸入野菜は「業務用卸」と呼ばれる卸売業者が介在していることが多く、輸入に関わる専門性が強みとなっています。現地とのコネクションを築いている業者も多く、商品の安定的な提供を可能にしてきました。

つまり「業務用卸」を通さずに安全で品質の良い輸入野菜を仕入れるなら、数量も含めて安定的な取引を可能にするだけのリレーションを築かなければなりません。それには多くの時間がかかり、品質のチェック機能も万全でなければなりません。さらには価格の設定という課題もあります。

生鮮品である野菜は、流通価格が毎年異なります。これを決定する機能を有する卸売業者には当然ノウハウがありますが、同じことを小売業者や外食産業が行うのは至難の業です。

今やスーパーなどでも海外の珍しい野菜や果物が並ぶようになりましたが、これらを消費者が適正な価格で購入し、安心して口にすることができるのも卸売業者があってこそといえるでしょう。

政府による農政改革の推進で、卸売業者への逆風が吹き始めている昨今ですが、長い歴史で培ってきた需給調整や品質管理、決済機能、そして信頼関係といった要素は流通の各セクションに影響しています。そして私たち消費者への恩恵にもつながっているのです。

 

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