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野生動物による被害を徹底分析 狩猟・捕獲とは違う獣害対策「集落環境診断」

野生動物による被害を徹底分析 狩猟・捕獲とは違う獣害対策「集落環境診断」

2017年09月17日

田畑を荒らすイノシシやサルなど、野生動物が出没する周辺環境を調査し、地域に合った対策を考え、地域を挙げて実行していくことで被害をより確実に抑える「集落環境診断」。狩猟や捕獲だけに頼らず、一定の成果を上げている新しい獣害対策方法です。
「集落環境診断」を行っているのが、地域で獣害対策を運営できるようフォローアップまで行っている「一般社団法人ふるさとけものネットワーク」です。今回は、「集落環境診断」の方法や効果について、会長の山本麻希(やまもとまき)さんにお話をうかがってきました。

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ふるさとけものネットワークの専門家と住民たちが一緒に集落を回り、点検している様子

獣の個体数を減らすだけでは根本的な解決にはならない

くくり罠にかかったイノシシ

狩猟や捕獲は獣の個体数管理に関わる対策の一つとして有効ですが、個体数だけ調節しても根本的な問題の解決にはならないそうです。獣害対策は「個体数管理」「被害防除」「生息地管理」のすべてを総合的に行うことで、初めて効果が表れるといいます。

「被害を加えるイノシシを捕獲しても、山にはまだ仲間がいます。捕獲だけで被害をゼロにするのは不可能です。また、生物多様性の観点から狩り尽くすこともできません。そうなると、イノシシと共存するためには、農作物を電気柵などで守る防除が欠かせなくなります」(山本さん)。

柵はただ設置するだけでは効果を十分に発揮できません。イノシシが学習し、柵の存在に慣れてしまわないように見張る必要があります。そのためには、集落に近い藪や耕作放棄地、集落付近の里山の下といった場所の草刈りや間伐をして見通しを良くするなど、緩衝帯を整備することが大切になってきます。

動物は、おいしそうなものがある、と人里にやってきます。おいしそうなものとは、動物によって嗜好性が違うので一概にはいえませんが、例えば、集落に植えてあるカキやクリなどの果樹や、農業の過程で出る作物残さ(茎や根などの食べられない部分)、お墓にあるお供え物などです。そして、田畑で育てている農作物がもっとも動物たちを誘発するといいます。

人里で良い餌を食べると動物の栄養状態が良くなり、個体数の増加にもつながります。そのため、まずは動物の餌になりそうなものを除去、防除し、その上で集落に簡単に入れない環境を作る必要があるといいます。

獣害対策の条件は集落ごとに異なる

ふるさとけものネットワークのメイン団体の代表たち。「鳥獣対策白書」の完成を記念して

動物の種類や生息密度、集落の環境、住民の年齢層や男女比率など、獣害対策の条件は集落によって異なります。例えば、動物の種類と被害状況だけ見ても、様々なケースがあります。新潟県はイノシシの分布が拡大してから、水田への被害が急増しました。一方で、隣の福島県は果樹の栽培が盛んなため、サルやカラスによる被害に悩まされています。

そこで、各地域に合った獣害対策を行うために実施されるのが「集落環境診断」です。

「本などに書いてある対策はあくまで一般論です。私たちはその集落に合った解決方法を、現地調査を通じて見立て、提案していきます。対策内容は地元住民が合意して決めるので、取り組みへの意欲も高まります。私たちも、できるだけスムーズに進められるよう何度も顔を出し、住民の方との信頼関係を大切にしています」。

「獣害対策診断」の進め方:3つのプロセス

集落環境調査で調べてきた内容を大きな地図に書き出し、ワークショップを行っている様子

狩猟とも捕獲とも違う獣害対策である「集落環境診断」。一体どのような流れで進められていくのでしょうか。その手順を詳しく教えてもらいました。

1:予備調査

最初は「予備調査」と呼ばれる事前調査を行います。現地の人から状況を聞き、実際に集落を歩いてみます。そして診断時に歩くルートを決め、集落で被害を出している動物の生態や対策のポイントを住民と共有します。

2:集落環境診断

予備調査が終わったら、いよいよ集落環境診断へ。ふるさとけものネットワークのメンバーだけでなく、住民と役所の職員にも参加してもらい、予備調査で決めたルートを一緒に歩いて環境調査をします。そして耕作放棄地や電気柵の位置、果樹の種類や本数などを綿密に調べ上げ、どこに何があるかを集落の地図に書き込んでいきます。すると「クマが多い地域には、カキの木が多い」など、今までの被害につながる原因が見えてきます。

3:対策の実施と検証

原因がわかったら課題を出し合い、優先して解決すべきものを決めていきます。役所の職員の方には利用できる補助金を探してもらったりなどして、1週間ほどで次に、「いつ」「誰が」「どこで」「何をする」など、具体的な対策内容や人員のスケジュールを決めていきます。

そこから本格的な対策を始めて、検証ワークショップを開きます。ここでは、計画が実行できたか、効果はあったのかなど、ふるさとけものネットワークと一緒に検証して、翌年に同じ失敗をしないように改善策を練り直します。

PDCAサイクルを回し、地域での獣害対策運用を目指す

現地の圃場で動物の足跡を住民と確認

このように、「集落環境診断」はPDCAサイクルを上手く回しながら、集落の環境改善と、住民が主体となった獣害対策を目指します。

ふるさとけものネットワークに頼らず、集落でサイクルを回せるまで、大体1年ほどかかるそうです。ただ、1年目の対策の結果をどう活かすのかもポイントとなるので、2年目もふるさとけものネットワークとともに検証ワークショップを実施します。

高齢化のため、人が少なかったり獣の学習能力が早かったりする集落は、効果が出にくい傾向にあり、地域によってはうまく回せるまで3年くらいかかる場合もあるそうです。

「基本的に1年目の診断後は、役所の職員が中心になってフォローを行うようにしています。ふるさとけものネットワークがいなくても、集落の住民が課題解決のためにすべきことを理解していれば、状況が変わってもしっかり対応できるようになります。

それから、役所の職員には知識や技術を伝えて、新しい獣類が出るなど、状況が変わった際にも現地で対応できるようにしておきます。もし対応できないようなことが起きたときは、私たちに連絡が入るようにしています」。

獣たちは、その年によって個体数が増減したり、学習によって罠を回避することもあるそうです。ただやみくもに獣たちを減らそうと考えるのではなく、「集落環境診断」のように、長い目で見ながらじっくりと対策や共存策を探してみるのも得策のようです。

ふるさとけものネットワーク

http://furusato-kemono.net/
写真提供:ふるさとけものネットワーク

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