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アグリツーリズムが熱い!専門家がみる「農泊」ビジネスの可能性

アグリツーリズムが熱い!専門家がみる「農泊」ビジネスの可能性

2017年09月23日

2020年に東京オリンピックを控え、政府はインバウンド(訪日外国人旅行者)の誘致を積極的に後押ししています。外国人観光客の関心が地方にも向けられてきている背景もあり、農山漁村での滞在型旅行「農泊」に注目が集まっています。東洋大学国際観光学部国際観光学科教授で、観光をベースとしたマーケティングを専門とする森下晶美(もりしたまさみ)さんに、農泊をとりまく現状と、将来的なビジネスの可能性についてお話をうかがいました。

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訪日外国人旅行客のニーズは「モノ」から「コト」へ

少子化やレジャーの多様化が影響し、国内における日本人の旅行消費動向は、ほぼ横ばいの状況が続いています。そこで、政府は2000年代に、インバウンドの誘致により、観光を国の成長戦略の柱に据えようと打ち出しました。それが、最近ようやく根付き始め、外国人観光客の数はこの10年で約3倍に増加し、2016年は2,400万人もの人が訪日しました。(※1)

しかし、最近彼らのニーズに変化が現れてきています。これまでは、“爆買い”という言葉が話題になるほど、日本で売られている「モノ」に需要がありましたが、それも頭打ちとなっています。今度は体験を重視する「コト」消費のニーズが高まっているといいます。しかも東京や京都などの主要都市、いわゆる“ゴールデンルート”ではなく、地方に訪れる人が増えています。

「初めて来日する方は、ゴールデンルートを回って観光し、買い物をして帰ります。しかし、何度も来日しているリピーターは、より深く日本を知れる観光がしたいと思うようになります。中には、北海道のニセコスキー場や、京都の伏見稲荷大社など、外国人観光客から人気に火がついた観光スポットもあります」(森下さん)。

「コト」消費や地方志向が高まる中、観光コンテンツの一つとして、「農泊」は大きなポテンシャルを秘めていると注目を集めています。

農泊の新しいスタイル「アグリツーリズム」

農林水産省と観光庁は体験観光のひとつとして、農村でのんびりと休暇を過ごす滞在型の体験「アグリツーリズム」を推進しています。

もともと農泊は存在していましたが、修学旅行の体験学習などの本格的な農業体験が目的でした。

アグリツーリズムは、採れたての野菜を使った料理を食べたり、できたての新酒のワインを飲んだりするなど、農村の豊かな自然に囲まれながらバカンス感覚で滞在を楽しむことが目的です。

「修学旅行で農泊を行う場合、大人数を一度に受け入れなければならず、複数の農家で協力しなければなりません。価格をはじめ、受け入れ条件なども地域で足並みを揃える必要があります。また、修学旅行シーズンに客が集中するなど需要に波もあります。

これに対して、アグリツーリズムは主に個人の旅行者をターゲットにします。そのため、価格設定や提供するサービス、規模を自分で自由に決められるというメリットがあります。ただし、お客さんに選ばれるようになるために、ホスピタリティを意識する必要が出てきます」。

これまで、農泊は修学旅行生など限られた人がターゲットでしたが、「アグリツーリズム」としてレジャーや観光の要素を取り入れることで、幅広い層の人に向けて裾野を広げようとしています。

旅行業法の規制緩和で農泊参入を促進

政府は、農泊の参入を増やすため、様々な規制緩和を進めているといいます。

農泊を行うためには、旅行業法に基づき、簡易宿泊営業の許可を取らなければなりませんが、規制緩和により客室面積の要件が撤廃されたり、誘導灯などの設置をしないことが可能になったりと、取得のハードルが下がっています。

さらには、2017年3月に民泊に関する法案も可決。「詳細は未定ですが、簡易宿泊業の許可を取らなくても、都道府県に登録することで、自宅で年間180日以内の宿泊業が可能になる予定です」と、森下さん。今後ますます、農泊に参入しやすい環境が整っていくことでしょう。

農泊成功のカギは地域の包括プロデュース

「農泊をビジネスとして成功させるためには、地域全体で取り組むことが大切」と森下さん。観光客に来てもらうには、宿泊場所だけでなく、周辺の観光地やグルメに魅力を感じてもらわなければなりません。地域といっても、都道府県や市区町村ごとではなく、その枠を超えた観光圏で取り組む必要があるといいます。

「例えば、観光地として人気の“伊豆・箱根”。伊豆は静岡県で箱根は神奈川県ですが、観光客からは、ひとくくりの魅力的な地域として捉えられています。観光客の誘致となると各行政の観光課が中心となって取り組むため、どうしても行政単位の動きになりがちですが、観光客には行政の管轄は関係ありません」。

「コト」消費の中で、最もニーズが高いのは「食」と「自然」だといいます。その二大要素を併せ持つ農泊に注目が集まり、官民と共に力を入れるのは当然の流れです。農泊は、農家の方にとっても、地域にとっても活性化の後押しとなる取り組みの一つです。追い風が吹く今、実際に農泊を体験し、その可能性に触れてみてはいかがでしょうか。

関連記事:年間売上350万円の農家も。大分県安心院町に学ぶ農泊ビジネス

取材協力:森下晶美(東洋大学国際地域学部国際観光学科・教授)
観光をベースとしたマーケティングと商品企画が専門。旅行代理店でのパッケージツアーの企画・販売促進担当、ツアーオペレーター、旅行業界専門誌記者などを経て、東洋大学国際地域学部国際観光学科・教授に就任。2016年4月から1年間、観光庁へも出向している。
https://www.toyo.ac.jp/index.html

※1 年別 訪日外客数, 出国日本人数の推移(日本政府観光局)
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/marketingdata_outbound.pdf

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