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地域と企業とJAが一丸に 体験型農業テーマパーク「なめがたファーマーズヴィレッジ」

地域と企業とJAが一丸に 体験型農業テーマパーク「なめがたファーマーズヴィレッジ」

茨城県行方(なめがた)市にある「なめがたファーマーズヴィレッジ」は、サツマイモスイーツのお店「らぽっぽファーム」の白ハト食品工業が、行方市とJAなめがたの協力を得てオープンした体験型農業テーマパークです。焼きいもについて学べる知的体験型ミュージアム「やきいもファクトリーミュージアム」をはじめ、収穫体験ができるサツマイモ畑、地元の野菜が楽しめるレストランなどがあり、体験を通して農業を肌で感じることができます。

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「過疎化の象徴だった小学校跡地を使って建設した、なめがたファーマーズヴィレッジで、新しい人口を増やしていきたい。これからの時代における地方創生のモデルケースになればいいなと思います」と、白ハト食品工業株式会社の広報担当者は話しています。白ハト食品工業のなめがた工場に併設するなめがたファーマーズヴィレッジ誕生までの軌跡と、未来への取り組みについてお話をうかがいました。

「なめがたファーマーズヴィレッジ」の原点は東京スカイツリータウンのサツマイモ畑

茨城県の南東部、北浦と霞ケ浦に挟まれた行方市は、火山灰の赤土と水はけの良い土壌を持つ日本有数のサツマイモの産地です。白ハト食品工業が、らぽっぽファームなどで使うサツマイモを、JAなめがたから仕入れ始めたのは2005年のことでした。

「当社は、行方のサツマイモのおいしさにほれ込んだんです。また、農業生産者が持っている畑の面積がとても広く、安定的に大量のサツマイモを出荷していただけるというのもポイントでした」。

地域にとっても、白ハト食品工業との取引は嬉しいことでした。当時JAなめがたでは、サツマイモの耕地が増え、それに伴い販売が難しい規格外品も増えていたといいます。規格外品は、畑に捨てていました。白ハト食品工業では、こうしたB品も買い取り、サツマイモの加工食品として使いました。それが、農家方の所得アップにもつながったといいます。

ところが、取引量が順調に増えてきた矢先に東日本大震災が発生。茨城県にも大きな被害が出ました。地震や津波による被害も去ることながら、放射能汚染による風評被害が地域の産業に深刻なダメージを与えました。

「風評被害を払拭するために、行方の方々と協力して、東京スカイツリータウンに行方の土を運んで都市型農園『ソラマチファーム らぽっぽおいも畑』を作りました。ここでサツマイモを栽培して、行方の土が安全であることを世界中にアピールしたのです。おいも畑は今も継続しており、毎年秋にはおいしいサツマイモが収穫できます。

この取り組みで、当社と行方の方々の間でお互いに絆が深まり、“夢のある農業”を共に目指す運命共同体のような思いが芽生えたように思います」。

これを機に、JAなめがたや周辺農家と農業生産法人「なめがたしろはとファーム」を設立。
のちの、なめがたファーマーズヴィレッジの礎を築きました。

輸送コストを削減するためサツマイモの産地に工場を建設

白ハト食品工業では、行方をはじめ各地で収穫したサツマイモを宮崎や神戸の工場に送り、加工していました。2013年度には1,200トンものサツマイモを行方から宮崎に出荷していたそうです。

そこで、行方で収穫したサツマイモを地元で加工すれば輸送コストの削減になり、また地域で生産から販売まで一貫することで食の安心、安全の面で、より良いものが作れるのではないかと考えるようになりました。

茨城県は鹿児島県に次ぐ、シェア第2位を誇るサツマイモの一大生産地。加工技術を持つ白ハト食品工業とのパートナーシップは願ってもないことです。

「サツマイモの生産量は全国2位ですが、味は日本一だと思っています。JAなめがたの農協本部はもちろん生産者農家、生産者組合も『日本一の焼きいもを』という私たちの思いを共有してくれて、『ここでしかできない』と思い、加工工場の建設を決意しました。そして、地域に貢献したいという思いから、多くの方に農業を体験し、食を楽しんでもらえる体験型農業テーマパーク、なめがたファーマーズヴィレッジを併設することにしたのです」。

体験型テーマパークを併設することで地域の活性化と農業の復興に貢献

「日本一のシェアを誇っていても、どれだけ良い工場や良いお店を作っても、高品質で安全、安心な原料が安定して入らなかったら食品メーカーは成り立ちません」。

日本の農業は危うい状態にあります。特に少子高齢化による影響は大きく、その最たる例が地方の農業です。JAなめがたでも、生産者の高齢化と後継者不足は深刻な問題で、現在第一線で働いている農家は50代以上、中には80代の人もいます。20代から40代の働き手は都会へ流出したままです。

「なめがたファーマーズヴィレッジを作ることで、20代から40代の方が当社や地域の関連会社に就業したり就農したりして、地域復興につなげたいという思いがありました。行方をはじめ、日本の農業を活性化させることも私たちの目標です」。

2015年にオープン 2017年にはグランピングや水陸両用バスの導入でますます便利に楽しいテーマパークへ

2015年10月、なめがた工場とともに、なめがたファーマーズヴィレッジがオープンしました。ファミリー層を始め、多くの来場者で賑わい、オープンから1年間の入場者数はおよそ21万5千人になりました。

2017年8月からは、畑のそばで楽しめる「ファームグランピング」で、テントで宿泊もできるようになりました。さらに、高速バスで東京駅から約80分で着く「水郷潮来(すいごういたこ)バスターミナル」からなめがたファーマーズヴィレッジまでをつなぐ、水陸両用バスの運行も2017年9月下旬よりスタートします。

「宿泊設備やアクセスも充実し、ますます利用しやすくなりました。これまで以上にワクワクするイベントを企画していきたいですね。子どもたちの笑顔がもっとあふれるステキなテーマパークにしていきたいです」。

開園からわずか2年ですが、地域にも少しずつ変化が見られるようになってきました。なめがたファーマーズヴィレッジに、地元出身のスタッフが増えてきているというのです。中には、Uターンで帰ってきて就職した方や、ファーマーズヴィレッジの地に元々あった旧大和第三小学校の卒業生も多数活躍しているそうです。

都会では少なくなった農業にふれる機会を提供することで、自然の中で食べて、遊んで、学べる、楽しいテーマパークという形を維持しつつ、地方農業の活性化を支え続けている、なめがたファーマーズヴィレッジ。この成果は、行方のみならず日本の農業の未来に光を差し込んでくれるのではないでしょうか。

なめがたファーマーズヴィレッジ
住所:茨城県行方市宇崎1561
電話:0299-87-1130

写真提供:なめがたファーマーズヴィレッジ

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