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生産者の試み

「あまおう」と「とちおとめ」の違い品種・商標登録のブランド戦略

「あまおう」と「とちおとめ」の違い品種・商標登録のブランド戦略

2017年10月20日

「あまおう」は商標で「とちおとめ」は品種名だとご存じでしょうか。農業分野で商標登録する場合は、品種登録についても理解しておく必要があります。品種登録した名称は商標登録できないという思わぬ落とし穴があり 、品種登録と商標登録の仕方で、ブランド展開の方向性も変わってくるようです。品種登録と商標登録の関係について、吉永国際特許事務所の弁理士、吉永貴大(よしながたかひろ)さんに詳しく教えていただきました。

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品種名と商標名は同じではいけない

農業分野には、品種登録という特有の制度があります。新品種を開発した場合は「種苗法」に基づいて品種名をつけて、農林水産大臣宛に品種登録出願を行う必要があります。

種苗法とは、農産物や草花など、植物の新品種の保護について定められた法律です。新品種の開発者は農林水産省に品種登録を行うことで、果樹等の永年植物は30年間、花や野菜など永年植物以外の植物は、25年間の育成者権を取得することができます。

商標登録する場合は、品種とは別に「商標名」を考え、登録の手続きをしなければなりません。 また、品種で用いた名称は商標登録することはできません。

そこで、品種登録及び商標登録をする場合は、その農産物を今後どう展開したいかという戦略を考える必要があります。

品種登録と商標登録のブランド戦略 「とちおとめ」と「あまおう」の事例

福岡県で栽培されているイチゴ「あまおう」は商標であり、品種名は「福岡S6号」といいます。一方、栃木県の「とちおとめ」は品種名として登録されており、商標を示すものではありません。

「あまおう」は商標なので、コンセプトに合う品種が開発されれば、「福岡S6号」以外の品種にも「あまおう」という商標を使うことができます。そのため、継続的にブランド力の向上が目指せます。

しかし、「とちおとめ」は品種名のため、品種改良によりできた次世代の品種は「とちおとめ」という名前で世に出すことができません。ただし「とちおとめ」の場合は、生産者の間で品種を広く伝え、種苗の販売数を上げたいという狙いがあったため、「とちおとめ」という種苗名を前面に押し出したといった経緯があるそうです。平成8年に品種登録されてから8年足らずで生産量日本一にまで登りつめた実績は、大いに称賛されるべきです。

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「あまおう」と同じ戦略で商標登録 栃木の新しいブランド「スカイベリー」

「栃木県の農業試験場は『とちおとめ』よりも果実が大きく、見た目と食味に優れたイチゴ『栃木i27号』を開発し、今度は『とちおとめ』のやり方ではなく、『あまおう』と同じ商標登録でブランド名を拡大させる方法で売り出しました。

平成23年11月、農林水産省に『栃木i27号』として品種登録の出願をし、3年後の平成26年11月に無事登録されています。同時に商標登録も行っており、平成24年9月に『スカイベリー』と登録されました」。

商標名「スカイベリー」は、全国から応募のあった4,388点の中から選ばれた名称です。果実としてだけでなく、加工品や菓子、飲料などの名称としても商標登録されています。

「私は通常、クライアントには、品種登録よりも 商標登録の方でブランド戦略を打ち出すようにおすすめしています。品種改良しながらブランドを育てて行けるなど、 柔軟性があるからです」。

「デコポン」の事例から見る海外戦略のポイント

ブランド化した農産物は国内の販売戦略がメーンとなっていますが、「これからは海外も視野に入れていく必要がある」と吉永さんは警鐘を鳴らします。

ヘタの出っ張りが特徴的な柑橘系の果実「デコポン」は、「不知火」という品種の商標名で、熊本県果実農業協同組合連合会が商標権を持っています。しかし、アメリカ・カリフォルニア州では、「不知火」が「Sumo」という名前で販売されており、1個3ドルから4ドルという高価格にも関わらず、売り切れになるほど人気があるといいます。

販売を行っているのは、熊本県果実農業協同組合連合会とは関係がないと思われる会社であり、熊本県には利益還元がないそうです。

「これは、『不知火』という品種が、無防備に海外に流出した結果です。開発した人たちの権利が守られないことが、非常に惜しいです。
『不知火』を勝手に栽培できないよう、米国で品種登録していればベストだったと思います。 仮に『不知火』を品種登録していなくても、熊本県や農協が『不知火』の苗木を提供する代わりに、収穫物を販売する際は『デコポン』の商標を使用し、売り上げの数%は熊本県に還元するという約束をすれば、商標でライセンスビジネスが展開できたはずです」。

日本の商標権は国内でのみ有効です。そのため、外国で商標権を得るためには、原則として各国ごとに商標登録する必要があります。また、品種登録を海外で行う場合も、各国ごとに登録を行う必要があります。

「ライセンスビジネスという面では、世界との意識の差は大きいと言わざるを得ません。日本の農業はもっと商標を活用すべきだと考えます。海外を視野に入れている場合は特にそうです」。

農産物の品種や商標をどう登録するかで、ブランド展開の方法も大きく変わってきます。また、世界と戦っていくためには、海外での品種及び商標出願についても検討する必要がありそうです。大切に育ててきた農産物だからこそ、ブランドとしても大切に守り育てていきたいものです。

吉永国際特許事務所
http://www.yoshinagapat.com

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