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生産者の試み

埼玉県川越地方コエドブルワリー 農業×ローカルのビール造り

埼玉県川越地方コエドブルワリー 農業×ローカルのビール造り

2017年11月12日

埼玉県の川越地方は、サツマイモの名産地です。その地に所在するコエドブルワリーは、世界で初めてサツマイモのビール「紅赤-Beniaka-」を醸造しています。地元産を焼き芋に加工して使用した、芳香で味わい深いビールは、定番商品として現在も日本全国、そして世界に向けて販売されています。今回は、紅赤の誕生と有機農業を専門とする運営会社の6次産業化との関係、地元出身ミュージシャンや農家とコラボレーションする醸造展開について株式会社協同商事 コエドブルワリー代表取締役兼CEOの朝霧重治(あさぎりしげはる)さんにお話をお聞きしました。

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6次産業化としてのクラフトビール造り

コエドブルワリーは、有機農業を専門とする株式会社協同商事のビール醸造部門です。協同商事は、産地直送の有機野菜販売から始まった会社で、まだビール醸造部門がない頃から6次産業化を目指していました。6次産業とは、第1次産業(農業や水産業など)が食品加工や流通販売まで業務展開することをいいます。ヨーロッパの先進国型農業では、この6次産業化が進んでおり、例えばブドウを畑で育てるだけではなく、そこからワインに加工して付加価値を生み出しています。

同じ畑で同じ農作物を植えていると、土地がやせてしまい、害虫が発生しやすくなる連作障害が起こります。そこで昔から川越地方では、麦をはじめとした様々な植物を植える事によって土地を回復させてきました。これがいわゆる輪作です。その後、1980年代後半になってくると輪作の緑肥のために植えている大麦を有効活用しようと、協同商事は大麦が主原料となるビールの醸造立ち上げに向けて動きだしました。

ところが、海外には持ち込んだ麦を麦芽にする工場があったものの、日本にはまだ存在していませんでした。自社で用意するにはあまりにも時間とお金がかかり過ぎるため、検討を重ねた結果、地元の連作障害対策の大麦の有効活用に関しては一旦あきらめることになりました。

その後、1994年の酒税法改正によって日本のビール醸造における規制が緩和されました。年間最低製造量が2,000klから60klに引き下げられたのです。この改正でハードルが一気に下がり、ビール醸造に着手する企業が増加しました。これにより、この地域でも自分達がビール醸造に着手せずとも、他の企業が参入するのではないかと考え、ビール醸造部門をつくる事自体を中止しようと思ったそうです。そこへ新たに活用したい地元産の農作物が現れました。

 コエドブルワリーの定番ビール紅赤-Beniaka-の誕生

契約農家を日々訪れる中で、地元農家が規格外のサツマイモについて頭を悩ませていることを知りました。そのとき三芳町では、サツマイモ栽培が300年の伝統を誇り、30件ほどの農家が育てていました。当時は味に関係なく、サイズや形が規格外であれば売り物にならず、およそ4割のサツマイモが廃棄される運命にありました。ビールの魅力に魅せられ始めていったこともあり、地元のサツマイモを使ったビールを造ることで、大量廃棄されてしまう規格外のものをなんとか有効活用したいと思ったのです。

そこで、一度は手を引こうと思っていたビール醸造部門設立を続行し、醸造免許(紅赤は副原料を使用するため発泡酒免許)を無事に取得しました。そして、コエドブルワリーの原点となる世界初のサツマイモを使ったビール「紅赤-Beniaka-」を誕生させたのです。

副原料として使用されるサツマイモは規格外とはいえ、すべて栽培農家から買い取り、農家にとっても大事な収益源となっています。

このビールの醸造方法は、サツマイモを焼いて一次処理をした後、ペースト状にし、冷凍保存をします。足が早い農作物のため、そのまま保存することが難しいのですが、焼く事によって豊かなカラメル香と甘みをつくることを実現し、冷凍技術で長期保存を可能にしました。元々農業を専門としていたために、持っていたこの技術が「紅赤-Beniaka-」を誕生させるために大きく貢献しました。

こうしてできた「紅赤-Beniaka-」は、食事とのペアリングも楽しめ、焼き鳥やうなぎの蒲焼き、照り焼き、シンプルに塩や胡椒で味付けをしたソテー、そしてデザートとの相性も良いビールです。その人気は日本国内だけでなく、世界にも広がっています。

今後の展開、地域、農業をテーマにした埼玉県産のビール造り

現在、コエドブルワリーが醸造している定番ビールは「瑠璃」「伽羅」「白」「漆黒」「紅赤」「毬花(2017年10月新定番)」の6種類です。これらは日本以外にも、世界15ヶ国に向けて販売されています。そして6種類以外にもシーズナルビールを限定醸造しています。最近では埼玉県産のお米を使用し、埼玉県産の檜をつけこんだビール「ガッツポーズ」が期間限定で販売されました。

今後の展開としてどのようなテーマで醸造していくのか朝霧社長にうかがいました。

「地域、農業がテーマです。ビールを造る考え方として大事にしていけるようになりました。地域の農業やサスティナビリティに対して支援していく事に共感してくれる人達が増えて、いよいよやる意味が出てきました」と、朝霧社長。

満を持して専門分野である「農業」を主軸としたビールに本腰を入れるそうです。

昨年、コエドブルワリーは醸造所を東松山に移転しました。この地域は昔から麦の栽培が盛んということもあり、理念が近い農家の方達と協力して大麦を作り、埼玉県産の麦芽作りに挑戦していくそうです。

定番商品の瑠璃の価格は298円で販売していますが、埼玉県産麦芽に限定すると原材料費が通常の10倍ほどの価格になるそうで、企業努力をしてもビールの最終価格は500円以上になってしまいます。

「大麦は11月に植えて6月の梅雨の前に収穫されます。6~7ヶ月の間、畑を占有している。収穫による収入は栽培農家さんの半年分の努力です。それが満足いくような買い付けでないと継続していけないです」。と、持続可能なビール造りができる環境を整えていきます。

新プロジェクト 地元出身ミュージシャンとコラボレーションする新クラフトビール

コエドビールのさらなる新規プロジェクトとして、地元出身のミュージシャンACIDMAN(アシッドマン)と一緒につくり上げていく新しいクラフトビールを誕生させました。

2017年に結成20周年となる人気ロックバンドACIDMANは、過去5度の日本武道館公演を成功させ、若者から絶大な支持を得ています。ACIDMANのボーカル・ギターをつとめるフロントマン、大木伸夫(おおきのぶお)氏は川越出身です。20周年イヤーの締め括りとして、故郷でみんなが楽しめる上質な音楽に触れられるようなロックフェスティバルを、さいたまスーパーアリーナで開催するそうです。

イベント名は「ACIDMAN presents SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」、 “SAI”は「埼玉の “さい”」、彼らの楽曲名でもある「彩-SAI-の “さい”」、「祭の “さい”」からつけられたそう。「地元(ローカル」」を想い、焦点を当てるという意識にコエドブルワリーもこれに共感しました。

こうしてイベント開催日の11月23日の会場での提供を目的とし、10月14日全国一斉販売を目指して、ロックミュージシャンとブルワリーのコラボレーションビールの醸造がスタートしました。埼玉産の麦芽と米を使い、発酵中にACIDMANの音楽を聞かせているそうです。また、最初に造られるビール名は「#0(=ALL)」これはACIDMANの楽曲に合わせた名称とのことです。

尚、このプロジェクトは一度で終わるのではなく「埼玉ビアシリーズ」と称して継続されます。「“埼玉”という“地域”を解釈し、ビールで表現していきます。ベースは埼玉産の麦芽と米(彩のかがやき)を使用。日本人にとってどちらも身近な穀物なので、それを使ったビールを造っていきます。」と朝霧社長。

今後は第一弾のビール「#0(=ALL)」をベースに副原料や新たなホップを足し、リリースを続けるのだそうです。

自社だけに留まらず、地元の様々な人たちと関わり、つくり上げ、盛り上げていくコエドブルワリー。次は何が始まるのか、埼玉県内だけでなく、他の地域からも今後の展開に期待が高まり、ますます注目されていくのではないでしょうか。

コエドブルワリー

http://www.coedobrewery.com/

 

編集:ビール女子編集部

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