海水でミカン・サツマイモの甘みがアップ!有明海の「海水農業」技術とは – マイナビ農業

マイナビ農業TOP > アグリテック > 海水でミカン・サツマイモの甘みがアップ!有明海の「海水農業」技術とは

アグリテック

海水でミカン・サツマイモの甘みがアップ!有明海の「海水農業」技術とは

海水でミカン・サツマイモの甘みがアップ!有明海の「海水農業」技術とは

2017年11月20日

「農作物に海水を与える」という一風変わった方法で、ミカンやサツマイモを栽培している佐賀県の社会福祉法人佐賀西部コロニー。有明海のミネラル成分豊富な海水で育った農作物は、旨みや甘みが増すのだそうです。今回は、佐賀西部コロニーの理事である塚本修(つかもとおさむ)さんに、海水を使った農作物の栽培についてお話をうかがいました。

  • LINE
  • twitter
  • facebook
  • Google+
  • Hatena
  • Pocket

昔から伝わる技術を応用「海水ミカン」栽培への挑戦

佐賀西部コロニーのある佐賀県太良町(たらちょう)では、地域活性化のため、地域特性を活かした作物を栽培して売り出していきたいと考えていました。太良町は、広大な干潟ができる有明海に面しており、この地域には、昔から干潟の土を活用した農法があります。干潟は、満ち潮によって砂や泥が沿岸部に運ばれて堆積し形成されていきますが、堆積した土で地元では「干潟のガタ」と呼ばれるものを乾燥させて肥料に使うという方法です。この伝統的な技術を応用し、海水を栽培に直接使用できないかと考えたのです。

「太良町はもともとミカンの栽培が盛んな地域でした。そこで、先代の理事長は2006年に特産品のミカンを海水で育ててみようと考えたのです。海水に含まれる豊富なミネラル成分をミカンに吸収させ、より味わいを深くする研究を始めました」(塚本さん)。

しかし、「塩害」という言葉があるように、海水は植物の生育を妨げたり枯らしてしまったりします。そのため、樹木に散布するのに丁度良い塩分濃度を探すのに苦労したそうです。

「塩分濃度が高いと、葉のツヤが失われるなど、植物に変化がみられます。わずかな変化を見逃さないよう観察して、塩分が強いと判断したら真水で薄めたりと調整を繰り返し、適度な濃度を導き出しました」。

満月期の大潮の海水を使用 海水ミカンの栽培方法と特長

ミカンは5月頃に白い花を咲かせ、その後徐々に果実が膨らみはじめます。果実が3センチほどに成長したタイミングで、海水ミネラルが吸収されやすい塩分濃度に希釈した海水をミカンの樹木1本あたり約20リットル散布し、その後も果実の成長に合わせながら、収穫時期まで4回~5回にわたり海水を与えます。

「栽培には満月期の大潮の海水を使っています。太良町が面する有明海は潮の干満の差が大きく、大潮時に干潟の生物の活動が活発になる特徴があるのです。そのため、大潮時の海水にはミネラルがたっぷりと含まれています」。

佐賀西部コロニーが行った成分分析では、「海水ミカン」はミネラル成分の1つであるナトリウムが豊富だというデータが出ました。そのため、甘みや深みが増したように感じられます。

 糖度50度前後の焼き芋が完成 海水でサツマイモを栽培

佐賀西部コロニーでは、サツマイモも海水で栽培しています。ミカンの収穫時期は10月中旬から最盛期を迎えますが、その時期は台風が頻繁に発生するため、収穫量が激減する可能性があります。そのため、天候に左右されにくく、安定して収穫ができるサツマイモを栽培することにしたのです。

サツマイモは花を咲かせにくいといわれていますが、佐賀コロニーでは海水栽培に適した新品種のサツマイモを作り出すため、花を咲かせて交配を行い、新品種の種子を作るなど独自の栽培方法に取り組んでいます。また改良を重ねるうちに、海水で育てたサツマイモを貯蔵することで、サツマイモのデンプン質が糖質に変化することを発見しました。そこで、収穫後のサツマイモを地下の貯蔵施設で管理することにしたのです。「貯蔵していたサツマイモを焼き芋にしたら、糖度が50度前後にまでなりました。あまりの甘さに注目が集まり、テレビ等のメディアでも『奇跡のさつま芋』として取り上げられたんです」。

ミネラル成分を効果的に吸収した植物は元気に生長し、旨みが凝縮された作物を実らせるといいます。そのため、ミネラル成分が豊富な海水を散布することで、おいしい作物ができるというのは理にかなっています。しかし、ただ散布するのではなく、どうしたら海水の効果を充分に発揮できるか考えることが重要なのだそうです。

「例えば、サツマイモの場合は作物を植え付ける前に、薄めていない海水を2回ほど元肥として土壌へ散布しています。その後は成長に合わせて海水を20~30倍に薄め、根の部分に散布し、つるが伸びてきたら葉面散布を2回行います」。

海水で育てた飼料で鶏を育む リコピン豊富な佐賀西部コロニーの鶏卵

海水を使った栽培技術は、なんと鶏卵にも応用されていました。

佐賀西部コロニーでは、障がい者の就労の場として養鶏施設を運営していました。当初は食肉用の地鶏を飼育していましたが、より安定した収益を得るために、生産を肉から卵へシフトチェンジ。海水で育てた飼料を与えた鶏から生まれた「リコピン卵」誕生のきっかけとなりました。

「健康な鶏から健康な卵を産ませるため、より安全で栄養価の高い飼料を使おうと考えたのです。そこで、ミネラルが濃縮された海水でリコピン色素を多く含んだ野菜を栽培し、乾燥させて飼料にしました。すると、鶏はリコピンを豊富に含んだ卵を産んでくれたのです」。

卵は「リコピン卵」として販売され、味の良さから順調にリピーターが増えていったそうです(※現在、養鶏事業は作業者の高齢化などにより中止になっています)。

太良町は第1次産業が主流で、リコピン卵が生産中止になったように、高齢化が著しく進んでいる地域です。そんな中、高齢農家が培ってきた経験と佐賀西部コロニーの技術が結びつき、質の良い農作物の栽培を実現しています。

甘くておいしいミカンやサツマイモを実現した海水農業は、地域の農業だけでなく、高齢化などの問題を抱える地域の人々も元気にしています。

社会福祉法人佐賀西部コロニー

http://www.hagakure.ne.jp/seibu-co/start.htm

写真提供:社会福祉法人佐賀西部コロニー

  • LINE
  • twitter
  • facebook
  • Google+
  • Hatena
  • Pocket

関連記事

カテゴリー一覧