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官学連携で新種のリンゴ 弘前大学が生んだ赤い果肉の軌跡

官学連携で新種のリンゴ 弘前大学が生んだ赤い果肉の軌跡

最終更新日:2018年10月16日

「紅の夢(くれないのゆめ)」というリンゴを知っていますか。皮だけでなく、果肉まで赤い、ちょっと珍しいリンゴです。このリンゴは青森県の弘前大学がつくったもの。大学の研究と聞くと、ちょっと難しくて、とっつきづらいと思う方もいるかもしれません。けれども、実はとても身近で、私たちの生活にも密接なんです。紅の夢という、弘前大学の藤崎農場で生まれた新種のリンゴについて紹介していきます。

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 紅の夢は果肉まで赤いリンゴ

リンゴと言えば何色を思い浮かべますか?赤と答える方はきっと多いはず。次には青?緑?

皮の色のイメージはきっと答えが分かれますが、中身の果肉と聞かれれば、たいていは白、もしくは黄色に二分されると思います。ですが、紅の夢を切ってみると、そのイメージは裏切られ、赤い果肉が現れます。

これは、弘前大学農学生命科学部附属藤崎農場で行われた、リンゴの育種プロジェクトによって生まれた、新しい品種のリンゴです。2010年に農林水産省に品種登録されています。それまで、果肉が赤いリンゴは少数ですが他にもありました。ですが、それらと紅の夢とが違う点は、生食ができるという点。赤い果肉のリンゴは渋くて生では食べられないという問題が多かったようですが、紅のリンゴは生でも甘酸っぱい味を楽しめます。

1981年からリンゴの研究を続ける弘前大学

皆さんが馴染みのあるリンゴの品種と言うと「ふじ」が思い浮かぶかもしれません。日本では収穫量の半分以上を誇る代表的な品種です。この、ふじが生まれたのが青森県の藤崎町にあった農林省の園芸試験場東北支場。その跡地に弘前大学の農学生命科学部附属藤崎農場はあります。紅の夢は、そんな歴史的な土地で生まれました。

新しい品種を生み育てるには、広い畑と長い年月が必要です。弘前大学では、藤崎農場で1981年からリンゴの新品種を生み出すために研究を重ねていました。大学では職員が減っており、農場では空き地も目立つようになっていました。そこで弘前大学の塩崎雄之輔名誉教授が、その空き地を利用したリンゴの新しい品種の研究をスタートさせたのです。

親は誰?DNA鑑定・アメリカへの問合せ 紅の夢のミステリー

1994年、塩崎教授によって交配された新種の赤い果肉のリンゴが生まれました。大学でも、これは不思議なことと受け止められました。なぜなら、交配させたのは、どちらも果肉が白いリンゴだったから。白と白から、赤が生まれた事例が無い。よくよくDNAを調べると、交配させたと思っていた「紅玉」と「スターキングデリシャス」のうち、スターデリシャスはその親ではありませんでした。

親はいったい誰なのか?より細かく調べ、その親が藤崎農場にあった「エターズゴールド」というラベルの付いていたリンゴだと解明します。そこで疑問がうまれます。

ゴールドという名のとおり、エターズゴールドというリンゴは皮も果肉も黄色のはずだったからです。しかし、その木に は確かに赤い果肉のリンゴがなっている。生まれ故郷のアメリカに問い合わせます。

「本物の『エターズゴールド』は果皮も果肉も黄色だ」エターズゴールドでもなかったことが分かります。では、その木は何だったのでしょう。結局、その木の種類は今も分からないままです。スターキングデリシャスでもなく、エターズゴールドでもない。名前の無い木が、どこかで紛れ、気まぐれに研究に手を貸して、紅の夢は生まれました。

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「とにかく調理用としてもおいしい」との声

不思議な偶然により生まれた紅の夢は、近隣の藤崎町、板柳町、平川市、そして企業との産学官連携によりブランド化が推進されて市販されており、育成や販売も広がっています。

紅の夢を使って調理をする方にも話を聞いてみました。⾃⾝で⾷イベントを開き、お菓⼦などを作る菊池和貴さんは「とにかく調理⽤としてもおいしい。紅の夢は酸味があり、加熱してコクや⾹り、⽢さが出るので焼き菓⼦にも向いていますね」と話してくれました。

新しい品種の研究も

弘前大学の藤崎農場では、紅の夢のほかにも、「こうこう」「弘大みさき」といった新種のリンゴが作られ、品種登録されています。また、現在でもリンゴの生産技術を高めるための研究などを続け、平川市で公開講座「リンゴを科学する」を開くなど精力的に活動を続けています。

皆さんが外食先で口にしたり、食卓に並ぶリンゴ。馴染みある食材にも、新しさは常に生まれています。

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