木登り上手なかわいい悪魔 知られていないハクビシンの生態
ハクビシンは日本に生息する唯一のジャコウネコの仲間で、白鼻芯という名の通り、額から鼻にかけての白い線が特徴的です。クリッとした目、アライグマにも似たかわいらしいルックス。ペットとして飼われることもありますが、攻撃性のある野生の動物です。
夜行性で行動し、昼はねぐらとなる暗い場所に潜み、夜に餌を求めて移動します。器用な手足を使った木登りを得意とし、高いところにある木の実を食べることから、森林や山間部の樹木の上を棲家としています。
ハクビシンはかなり頭が良く、環境への適応能力や学習能力が高いため、山間部の郊外区域だけでなく、都市部での生息数も日本全国で増えてきました。(※2)
住宅の屋根裏から農作物まで ハクビシンの被害は多岐におよぶ
ハクビシンは棲家を転々と変えるため、住宅への被害が多く見られます。屋根や壁に穴があいていれば、そこから侵入して屋根裏をねぐらとして使用し、倉庫や空き家などは恰好の棲家となります。屋内で糞尿をして異臭や害虫を発生させる原因となり、家の柱などを破壊することもあります。
特に農家にとってのハクビシンの被害は深刻です。ミカン、モモ、ブドウなどの果実類を特に好み、人気のない田畑を見つけては農作物を食い荒らすのです。近年、足跡や食べ跡の痕跡からハクビシンによる被害と特定されるようになり、日本全国(沖縄県を除く)で被害が確認されています。
ビニールハウスのほんの小さな穴からも侵入して、見た目のかわいらしさとは裏腹にかなり凶暴なハクビシン。噛みつかれたり、引っかかれたりしたら、感染症を起こすという二次的被害の危険性もあります。
※1 鳥獣被害の状況:農林水産省
※2 都内におけるアライグマ・ハクビシンに係る状況:東京都環境局
確認、侵入防止、捕獲 3段階でシャットアウト!
撃退するための第一段階は、ハクビシンによる被害なのかを確認するところから。タヌキやアライグマによる被害と酷似しているため、足跡や食べ跡などから判断します。例えば、トウモロコシは茎を斜めに倒して実を食べる。ミカンは樹上から頭を下にして実を食べる。ブドウは袋を口で下に引き破り、その穴から顔を突っ込んで実を食べる。ハクビシンによる被害は特徴的です。
第二段階は、ハクビシンを寄せつけない環境を作り、田畑への侵入を防止します。収穫しない作物や落下した果実をそのままにしておくと、ハクビシンの恰好の餌場になるので適切に処分します。侵入防止策としては金網やワイヤーメッシュなどの柵の設置がありますが、電気柵が最も有効。小柄なハクビシンが柵の電流線に触れるよう、下段をできるだけ低く設置するのがポイントです。
第三段階として、有害鳥獣捕獲の申請をしてハクビシンを捕獲することができます。捕獲わな(箱型のカゴわなが効果的)を被害の多い場所に設置し、臭気の強い果実を餌にしておびき寄せます。ハクビシンは野生の動物なので捕獲の際には十分な注意が必要です。また猟銃所持の免許を取得して、銃器による撃退・駆除も行われています。(※3)
珍しくてかわいい動物と思われがちなハクビシンと、悪戦苦闘を繰り広げている農家はたくさんいます。ここに挙げた撃退方法での効果は日本各地で確認され、その後も侵入防止策を持続していることをしっかりと覚えておきましょう。
次回もかわいらしいのに憎らしい、農家にとっての意外な害獣を紹介します。
※1 鳥獣被害の状況:農林水産省
※2 都内におけるアライグマ・ハクビシンに係る状況:東京都環境局
※3 野生鳥獣被害防止マニュアル:農林水産省生産局農産振興課環境保全型農業対策室
上記の情報は2017年12月1日現在のものです。