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アブなすぎる害獣図鑑!農家の敵とその撃退方法 ~スズメ編~

連載企画:アブなすぎる害獣図鑑

アブなすぎる害獣図鑑!農家の敵とその撃退方法 ~スズメ編~

農家にとって、害獣による農作物への被害は、大雨や台風などの悪天候による被害とともに深刻です。2017年度の農林水産省の調べでは、野生鳥獣による農作物への被害状況はおよそ200億円で、その6割が獣類、4割が鳥類(※1)となっています。代表的なのは、イノシシ、シカ、サル、クマ、カラス。その他、意外と思える生物も農作物に大きな被害をもたらしているのです。

「アブなすぎる害獣図鑑」第一回は、私たちの身近に生息するスズメの生態と農作物への被害、その撃退方法に迫ります。

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脳化指数はネコと同等!? 意外と頭の良いスズメの生態

農家

憎まれ役のカラスと比べて、スズメはかわいらしいイメージ。実はスズメとカラスは親戚同士のような関係です。スズメ目カラス科に属すカラスは頭が良く、カラスの脳化指数は1.25、スズメの方も1.0くらいあります。イヌが1.2で、ネコは1.0くらいなので、スズメとネコの賢さは同等ともいえます。

スズメは飛ぶのも上手で、方向転換や加速、着地もお手の物。しかし、体力がないので行動範囲が限られ、高く飛べないところがカラスとは違います。そのため、餌となる穀類が多い人家とその周辺の樹林、草地、河原、農耕地に生息しているのです。

繁殖期には田畑で害虫を食べたり、冬季に雑草の種を食べて雑草防除の効果があるなど益鳥の役割も果たしますが、カラス同様に農作物への多大な被害をもたらしています。

古くから穀類を食べる害獣 かかしはスズメ対策から誕生した!

農家

スズメは、イネ科、タデ科、キク科などの小粒の乾いた種子を特に好み、稲や麦などの穀類の未熟な種子の胚乳を食べます。5月~9月の播種期~収穫期が主な被害の時期となりますが、ホウレンソウや小松菜、ダイコンなど、穀類以外の種子も食べるので被害は一年中におよびます。やわらかなブドウの果実も収穫期に狙われます。

古くから穀類を食べる害獣として知られ、田んぼや畑のかかしなどはスズメを追い払うために考案されたと言われています。また、砂浴びをするために作物の苗を荒らしたり、巣の材料にするため花の若葉をむしったり、鶏舎などに入って餌を盗むといった被害もあります。

スズメは狩猟鳥に指定され、有害鳥獣駆除でも捕獲されています。1980 年代前半に年間300 万羽を超していた捕獲数は、1990 年代に入ると大きく減少し100 万羽を切り、その後も徐々に減っています。被害面積は1980年代から、被害量は1996年から減少傾向をたどっていますが(※2)、スズメによる被害はなくなることはありません。

※1 鳥獣被害の状況:農林水産省
※2 鳥種別生態と防除の概要 スズメ:中央農業総合研究センター

基本的にはカラスと一緒 農家が苦心するスズメの撃退方法!

農家

田んぼや畑の穀類を荒らすスズメの撃退方法は、基本的にはカラスと一緒です。小面積でコストより利益が勝るなら、防鳥ネットを張るのが一番効果的。ただし、スズメはカラスより小さいので、網の目の大きさや網と地面のわずかなすき間にも注意しなければなりません。

古くからスズメの被害対策として考案されたかかしは、形や衣服などが本物の人間に似ている方が効果的で、近年はマネキンも活用されています。また、吹き流しや防鳥テープ、爆音器、さらに音と視覚の刺激を加えた複合型爆音器など、様々な威嚇装置があります。スズメに慣れさせないよう、防除期間のみ使用し、位置や器具を頻繁に変える必要があります。

その他、スズメ用の麦畑を用意する(沖縄の大東諸島)、お酒を染み込ませた穀類を食べさせてスズメを酔わせて捕獲する(鳥取市)など、ユニークな撃退方法もあるようです。

自分たちが育てた大切な農作物を守り、多くの人々に豊かな食物を届けるため、農家とスズメのあくなき戦いは続きます。田畑に張り巡らされた防鳥ネットや、工夫を凝らしたかかしを見かけたら、カラスとともにスズメも害獣であることを再認識してください。

次回もかわいらしいのに憎らしい、農家にとっての意外な害獣を紹介します。

 
上記の情報は2017年12月1日現在のものです。

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