臆病なのに図々しい 農家の天敵シカの驚異のジャンプ力
童謡「子鹿のバンビ」や奈良公園のシカなど、キュートで可愛らしいイメージを持たれるシカ。実は山林や田畑などを荒らし、国内で最も被害の大きい困った動物です。日本で生息するシカは、エゾシカ、ホンシュウジカ、キュウシュウジカ、ヤクジカなど、全国各地に広く分布しています。
シカは臆病で警戒心が強い動物ですが、危険がないとわかると大胆に田畑に近づく図々しい面を持っています。成獣の胴長は90~190センチメートルとかなり大きく、何といっても1.5メートル以上の高さまで飛ぶことのできるジャンプ力が特徴です。
昼と夜、時間帯を問わず活動と休息を繰り返し、雄と雌、別々に群れを作って行動するため、被害を受けている農家にとっては、実に厄介な害獣と言えます。
あらゆる植物を食べつくす 山林や田畑のシカ被害の実情
狩猟が減った近年、個体数の増加や分布の拡大が一層強まり、シカによる生態系や農林業に及ぼす被害がさらに深刻化しています。シカによる食害や剥皮被害などの森林被害は全体の約8割を占め、山林の生態系の維持、再造林や適切な森林整備の実施に支障を及ぼすとともに、土壌流出などによる森林の有する公益的機能にも影響を与えます(※2)。
また草食動物であるシカは、あらゆる種類の植物を食べ漁るので、人里に現れては、穀物、野菜、果物など、田畑の農作物を幅広く食害します。琵琶湖疏水沿いのケースのように、花畑の苗や花も無残に食べられます。樹皮を剥ぎ取って食べたり、 雄ジカが角をこすりつけたりして、大切に育てた果実の木を枯らしてしまうことすらあります。
高めの防御柵や音・光 トドメは罠でシカを撃退!
現在の日本では、シカの被害だけが生じる地域というのはむしろ稀ですが、シカ用の防御柵で田畑を囲い侵入を防ぐことができます。シカはジャンプ力があるので、通電しないものであれば1.5~2メートル以上の高めの柵が必要です。電気柵であれば、もう少し低くても構いませんが、ポールやワイヤーの間隔を通電しやすいようにし、子ジカでもくぐれないように調節します。
日本庭園にある「ししおどし」は、本来「鹿威し」と書き、もともとは音でシカを追い払う農具でした。現在では、音の出る機械でシカの天敵のオオカミなどの鳴き声を流し、その音でシカを追い払う方法に進化しました。青色LEDの光にも威嚇効果があります。
また冬季の狩猟期間内であれば、狩猟免許がなくても一定の場合に限りシカ用の罠を使って捕獲できます。シカにはくくり罠が有効で、本体を地面に埋め込むだけなので設置は簡単です。さらに環境省では、シカの食害対策のために若手ハンターの育成にも力を入れています(※3)。
日本にはシカの天敵が少なく、ハンターが高齢化し、減少したことでシカの個体数が増えているようです。また温暖化などの影響で積雪が少なく、シカの行動範囲が広くなったことで農作物への被害が拡大しています。
このように、農家は日夜シカと格闘を続けているのです。
次回も農家にとっての憎らしい天敵、アブなすぎる害獣をご紹介します。
※1 鳥獣被害の状況:農林水産省
※2 野生鳥獣による森林被害:林野庁
※3 シカ被害の様々な取組と鳥獣捕獲管理:環境省
上記の情報は2017年12月20日現在のものです。