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ヒストリー・オブ・ニッポンの米

ヒストリー・オブ・ニッポンの米

日本で農業といえば、米作り(稲作)というイメージがありますが、米の歴史について考える機会はなかなかありません。そこで、弥生時代・江戸時代・現代という稲作に大きな発展のあった時代を中心に、技術的な視点から見ていきましょう。

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弥生時代に基礎が形づくられた

米

登呂遺跡(とろいせき)などの調査から、長い間、稲作は弥生時代に始まったと考えられてきました。しかし、検出されたプラントオパールなどから、約4,000~5,000年前の縄文中期頃には農耕が開始されていたことがわかりました。背景となるのは旧石器時代末期からの定住の開始です。その後、縄文時代にはドングリなど木の実の食用が可能となり、土器をはじめとした道具の発達で煮炊きや食物の保存が容易になったことで農耕が発生しました。

弥生時代にはかなり技術も進化し、苗代で育てた苗を田植えで本田に移す移植栽培も行われていたようです。基本的に農具は木製で、干し草などの肥料は田下駄や大足によって田んぼに踏み込んでいました。収穫の時には、イネの穂先を石包丁で刈り取ります。脱穀の時には竪杵や竪臼を使い、穀物は貯蔵穴や高床式倉庫に保管します。

福岡県板付遺跡(いたづけいせき)の水田跡からは、田の水位を調整するための井堰(いせき)があったことがわかります。用水路と排水路を備えた乾田も、弥生時代中期には出現しました。日本史における稲作のダイナミズムは弥生時代に起こったといえます。

技術が飛躍的に向上した江戸時代

米
稲作の技術が大きな進化を遂げたのが江戸時代です。初期には各地の新田開発ブームで平野が広がり、幕府も利根川の大改修などを行いました。稲の品種改良も進み、米の収穫量が増大しました。

農機具も、これまでとは違うものが積極的に開発されました。千歯こきはその代表的なもので、作業効率を10倍以上も高めました。他にも備中鍬(びっちゅうぐわ)、唐箕(とうみ)、千石通しなどが発明されました。肥料は尿に加えて油かす、汚水、緑肥、堆肥、泥肥などが使用されました。なかでも干し鰯(か)は抜群の効果を上げています。

当時は米の相場が経済の中心にあり、米の収穫高が社会全体を左右していたともいえます。

近現代のテクノロジーで大規模経営が実現

米
明治時代以降は、稲作においても近代化が進みます。

明治政府は農業発展のために技術者らを欧米に派遣し、欧米の技術者を日本に招きました。また、国立農事試験場を開設し、新品種の開発にも取り組みました。化学薬品を使った除草や、稲を等間隔でまっすぐ平行に植えられる「正条植え」が始まり、各地に広がっています。

明治時代に米の収穫量は急激に増加し、水田面積も約2倍に増加しました。さらに第一次世界大戦後には、農業機械電気は石油を使った動力で動かされるようになりました。揚水と排水をはじめとして、脱穀作業、精米作業などが次々と機械化されていきました。

戦後は、工業化の進展や農業水利の改良により、ますます規模が拡大します。除草剤の使用が一般的となり、田植え機が登場するなど、とくに高度成長期の昭和40年代の初めごろには様々な分野で目をみはる進歩があり、乾燥や貯蔵のための施設・カントリーエレベーターなどが生産の拡大に貢献しました。

現在は農業人口が減少して、田んぼ10アールあたりの労働時間は1980年の64.6時間から2016年は22.61時間まで激減しています。
今後、日本の米作りはどうなっていくのか、これまでの技術の進化を享受しながらも、自分たちにできることから考えてみてはいかがでしょうか。

 
わが国の水田農業をめぐる諸問題:日本農業研究所
くらべてみよう昔といまのコメ作り:農林水産省
お米の文化と歴史:公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構
日本食の歴史:農林水産省
特集1 食の未来を拓く 品種開発(1):農林水産省
平成28年産 米生産費:農林水産省
水稲直播栽培の現状について:農林水産省

上記の情報は2017年12月20日現在のものです。

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