ネギの初登場は『日本書紀』!
私たちの食卓にもなじみの深いネギ。その原産地は、中国西部、中央アジアという説が有力です。中国では紀元前からネギに関する記述が見られ、「葱」と記されています。中国の五経のひとつ『礼記』にはネギの調理法も載っています。
日本へは8世紀以前に、朝鮮半島を経て伝わったとされています。奈良時代に編纂された『日本書紀』(720)に、仁賢天皇の六年(493年)に「秋葱(あきぎ)」という記載があることから、より早く入ってきた可能性もあります。
このように古い歴史がある「ネギ」は、葉鞘(茎の部分)を根と考えて、白い根を食べることから、根岐(ねぎ)といわれました。今のように「根葱」と書かれるようになったのは、元禄時代(1688~1703)前後からのようです。
まずは、ネギに含まれる栄養や成分に着目!
ネギを首に巻くと風邪が治るというのは根拠を伴うものなのでしょうか。それを探るために、まずはネギに含まれる栄養や成分に着目してみました。
ネギの栄養素として挙げられるのが、カリウムやカルシウム、ビタミンC、β-カロテンなどです。これらは緑色の葉っぱの方に多く含まれます。
一方、ネギの白い部分に含まれるネギオールと呼ばれる香り成分には抗菌作用があります。ウイルスの殺菌に一役買うこの成分は、風邪のウイルスにも対抗してくれそうです。
さらに注目したいのが、ネギを切った時に香るツンとした臭い。これは「硫化アリル(アリシン)」という成分で、ビタミンB1の吸収を高めて疲労回復に導きます。さらに、体を温めて発汗を促し、血行を良くするなどの効果が期待できます。
つまり、風邪に効きそうな成分がネギにたっぷり含まれていることは概ね事実と言えます。
〝首巻き″にする意味は果たしてあるの?
ネギを首に巻くという方法は、言ってみれば民間療法です。現代医療という枠からは外れますが、昔から人々の間で信じられ、伝えられてきた治療法と言えます。
それが効くか効かないかは別にして想像を働かせるならば、ネギをそのまま巻くなら下仁田ネギは太くて巻きづらい、白い部分に含まれるネギオールに効果があるから青々しい九条ネギより関東の根深ネギの方が向いているなど、いろいろと考えられます。また、ネギを切った時に発生する「アリシン」の効果を最大限に活用するなら、ネギに切り込みを入れ、刻んだネギをタオルにくるんで首に巻くのが効率的でしょう。
ネギの首巻きと同様に、ネギ湯を飲むという民間療法もありますが、こちらは栄養分や成分を直接体に取り込むので、より効果がありそうですね。ただ、ネギを首に巻く方が見た目もシュールなので、「ネギを首に巻くと風邪が治るらしいよ」という噂の方が広まりやすいのは確実でしょう。
次回も、ちょっと気になる野菜の迷信や伝説を取り上げます。
食材健康大辞典(時事通信社)
上記の情報は2018年1月現在のものです。