伝統野菜を販売
伝統大蔵ダイコン、FB経由で限定特売
小城プロデュースの代表・福島秀史(ふくしまひでふみ)さんの自宅前に置かれた大根は、江戸東京野菜の伝統大蔵ダイコン。畑から抜くときに割れたり、傷が付いたりしたB級品なので「受け取りに来てくれる人限定で特売します」とフェイスブックで呼びかけたところ、あっという間に30人余りが応募予約して買いに来たと言います。
「普通、生産者は自分が納得できていない品物を売るのは抵抗があるんです。でも僕はもともと消費者側にいた人間なのであまり気にしないんですよ」と福島さん。
独自流通とネット直販
もちろんこれは臨時直売で、現在(2017年11月下旬の取材)の販路の主軸は毎朝引き取りに来る卸商。他の生産者とのネットワークを活かして集荷出荷する独自の流通システムを実現しています。出荷された品物は、おもに都内の飲食店へ送られています。
その他には、同社であつらえた「固定種(伝統野菜)お任せセット」を全国にインターネット直販。また随時、近隣地域で開かれるマルシェなどで販売しています。
直販店出店も計画
けれども最近は一流料理店・高級料亭などを中心に江戸東京野菜のニーズが高まっており、需要に供給が追い付かない状況も生じています。
一般の人が口にできる機会がまだ少なく「どこに行けば買えるのか?」という問い合わせも激増。福島さんは「簡素なものでも、なるべく早い時期に店舗を出せれば」と語ります。
食と農を見直す若い世代に期待
多摩・八王子江戸東京野菜研究会
福島さんは自宅敷地内に集荷出荷作業とミーテングルームを兼ねたスペースと、広告制作用オフィスを設置。スタッフも生産者と広告デザイナー、双方の専門家を雇用しています。
また、社内に近隣の江戸東京野菜生産者や、支援者が参加する「多摩・八王子江戸東京野菜研究会」という組織を設置。5~6人のコアメンバーがその運営に当たっています。
中心となる福島さんは50代ですが、その他のスタッフ、同研究会のメンバーもまだ30代の青年がほとんど。ここでもSNSを有効に使って情報交換をし、定例会を開いています。
生命の一サイクルを完結させるための特売
「食と農に関心を持ち、関わりたいと願う若い世代に期待している」
そう語る福島さんは、経済発展と飽食の時代を経て、いま世の中のすべての価値基準がリセットの時代を迎えている。だからこそ年齢に関係なく多くの人が、食と農を見直したいと思っているのでないかと分析しています。
B級品を特売するのも単にもったいないからというだけでなく、これは生命体なので、できれば人間が食べることでその一つのサイクルをきれいに完結させたいという思いが強いから。
「パートナーもサポーターも、そうした考え方に共感できる人に関わってほしい」と言います。